ex やはり彼女は知りえない。
どうしてエイジが自分を助けてくれたのか。
エルにはイマイチそれが理解できていなかったが、星を見ながら何気なく語られたエイジの言葉で、それを知ることができた。
ただそれが正しいと思ったから。文字通り本当にそれだけだったのだ。
例えどうしようもない状況でも。助ける対象が自分を半殺しにした様な相手でも。それが正しいと思う事ができたのならば、それだけで彼は動き出す。
その話を、動機を聞いて。彼がこれまで取ってきた行動を知って。それらが紛れも無く本当の事だと認識したと仮定して、果たしてその思考にどういう反応を示すだろうか。
例えばエルはそうした行動を取るエイジをヒーローみたいだと評した。その言葉に嘘は無く、実際彼女の目にはそういう風に写っている。自分なんかを救い上げてくれたヒーローなんだと、そういう感情を抱いている。
それ以外に何も無い。ただそれは誇るべき事と受けとめる。
では、第三者が同じ話を聞かされた場合、一体どう思うのだろうか?
誇り云々の話は知らないにしても、行動理念を見聞きしている彼の親友と、彼と共闘した少年は、その話を聞いた時、一体何を思っただろうか。
何を思い、その先に何を見ただろうか。
少し考えれば得られる解。その答えをやはり彼女は知り得ない。
「エイジさん、これ凄く美味しいですよ!」
「確かに。これはすげえな……買っといてよかった! マジで良かった!」
視線の先に見えるのは、自分にとって一番大切な人の笑顔。
そんな笑顔だけを見て。ただ、目の前の幸せを噛みしめる。