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人の身にして精霊王  作者: 山外大河
七章 白と黒の追跡者
423/426

ex 攻略する者される者

(……単調な攻撃じゃ当たらない、か。さてさてどうした物かな)


 衝撃波を回避されたルミアは、思考を回し策を練る。


 ……今こちらは大きく行動を制限されている。

 ほぼ確定事項として、シオンはこちらの精霊術のコントロールを奪う事ができる。

 その原理の解明は現在進行形で進めているが、それが分かるまでは発動段階でこちらのコントロールを放棄した攻撃手段で攻めなければならない。


 ……とにかく、今のシオン・クロウリー相手に慢心はできない。


(……近接戦闘は極力無しかな。あまりにリスクが大きいし)


 現状、自身のコントロールで出力を大幅強化している肉体強化の精霊術は、シオンのコントロール下に置かれていない。

 肉体強化は最も強く手綱を握れる精霊術だ。同一条件下において他の精霊術よりもコントロールを奪うのは難しい筈。

 だけど触れていないどころか自身の周囲とも言えないような距離感でコントロールを奪うという所業をしてきた時点で、既に向うに手綱を半分握られていると考えた方が良い。

 まだ引かれていないだけ。

 此処に頼るのは釣られる事と同義。


 故に複雑なコントロールは解除して、世間一般通りの無知で無能で乱雑な、ただ蛇口を捻っただけというようなシンプルな力の使い方に切り替える。

 そしてこの程度の出力では近接戦闘で優位を取れない。


 それは今の衝撃波の一撃で理解した。


 現状、何も手を加えていない状態のシオンの出力は、例え精霊を霊装へと変えたとしても低い筈だ。

 エルの通常時の出力と彼女を霊装へと変えたエイジの出力差。

 そしてこれまで失敗作を含め多くの霊装の出力を考えると、出力の上昇率はおおよそ一定の範囲内に収まっている。

 故に現在のシオンの基礎的な出力は精々DランクやCランクの精霊と同等だと考えられる。


 それでもそこから今のシオンがどこまで出力を上げられるのかは現時点では分からず、そして少なくとも今の一撃を躱す動きで、その最低値が今のこちらの出力を考慮すれば決して侮れない物だという事が分かる。

 そして出力だけではない。


(……というか何だろ、さっきのシオン君の動き)


 肉体強化の出力の上昇と共に動体視力や反応速度が引き上げられているのは分かる。

 だけどそれにしたって反応が早く、そして余裕に満ち溢れすぎている。


(……多分以前されたみたいに精霊術でこっちの攻撃解析して……解析?)


 そこでふとピースが埋まったような感覚がした。

 そしてその感覚を元に、答えがそうである事を前提に。それ相応の手段を瞬時に取って答えを出す。


(成程、理解した。無茶苦茶やってくれるねシオン君)


 シオンがこちらの精霊術のコントロールを遠距離から奪えるのも。

 こちらの攻撃に対する反応が異常に早い事も。


(……今この部屋とその周辺は、文字通りシオン君の掌の上か)


 この部屋を中心に精霊術ではない何かが。

 前の戦いで自身が破った精霊術ではない結界に似た形式の何かが。

 この空間をシオン・クロウリーという人間の都合の良い空間として塗り替えている。


 その何かを介してこちらの精霊術に触れてコントロールを奪うか、威力速度弾道性質を分析、もしくは分析の補助を行っている。


 無茶苦茶だ。

 本当に無茶苦茶。

 先程まで何度も死にかけていた立場であるにも関わらず、余裕が滲み出ている表情をしているのも頷ける。







 それを理解したから打開策を考えた。

 思いついた。


(さ、多分自覚無しの慢心家なシオン君はどこまで余裕を浮かべていられるかな)


 この空間は既にシオンの掌の上。

 常に触れられているのと同義。

 だがしかし……触れられているのもまた、触れているのと同義だ。


 そこから始める事は、かつて彼から契約精霊を奪った時の戦いと変わらない。


 上げて落とした時と、何も変わらない。

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