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人の身にして精霊王  作者: 山外大河
七章 白と黒の追跡者
414/426

ex 何も変わらない。変えられない

 助けに入った時、自分に向けられたエイジの表情を見て、色々と察する事ができた。

 強大な敵と戦う為の増援が来た事を喜ぶような、そんな表情ではなく。

 ただ犠牲者が増える事に絶望しているような、そんな表情。

 そんな表情を、自身の実力を把握しているエイジが浮かべていた。


 ……部屋の中には激しい戦闘の跡が残っている。


 つまりはそれを残すような戦いのなかで、それだけの実力差を肌で感じ取ったのだろう。


「うわ、その禍々しい雰囲気……エルちゃんと同じだね。いやー怖いなー」


「……」


 どうやらエルはバーストモードを会得したらしい。

 した上であの状況にまで追い込まれたらしい。

 相手に傷一つ付けられずに。

 おそらくルミア・マルティネスであろう人間に完敗した。


「でも良かった。研究材料は一人より二人の方が良いよね」


 ……そして自分も負ける。

 バーストモードを会得したエルが傷一つ付けられなかったのだとすれば、おそらく実力差が無い自分では勝てない。

 事前に聞いていた情報も重ねて考えれば、万全な状態でエルを剣化したエイジかバーストモードのエルと自分に、後方支援でシオンが居たとしても、まともな勝負になるかすら分からない。

 それだけの実力差が自分と目の前の人間の間に存在する。


 だけど何も自分の勝利条件は、目の前のサイコパスを殺す事ではない。

 時間を稼ぐ。

 その間にエイジはエルを。シオンは自身の契約精霊を連れ出す。

 それができれば勝ちだ。


 例えそこに自分がいなくとも。


「……それにしてもさ、泣けてくるよね。仲間の為に自分を犠牲にするなんて。それも精霊が人間を助けようとしているんだから。感動して涙が出ちゃうよ」


 そんな心にも無い事を言うルミア。

 そしてそれを言った後、思い出したように言う。


「あ、そういえばなんだけどさ……キミ達が出し抜いたウチの霊装持ちの研究者なんだけどさ……そろそろ戻ってくる頃じゃない? 今頃逃がしたテロリスト君の前に立ち塞がっていたりして」


「……ッ!?」


 確かに戻ってきてもおかしくないような時間が経過していて。

 目の前の相手がそう言うのなら、実際にそれが起きている気がして。

 だとすれば……事態は何も好転していなくて。


「じゃあ始めよっか。でもごめんだけど今はちょっと急いでるから……泣いて喚くのは実験でって事で」


「……ッ」


「よし。じゃあ、いっくよー!」


 そして開幕する。

 勝利条件も何もない。

 何をしたってどうにもならない。

 なんの意味ももたらさない。


 ただの敗戦が。

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