表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人の身にして精霊王  作者: 山外大河
二章 隻腕の精霊使い
40/426

ex 故に彼は微笑んだ。

 エルを見送った後、シオンは一人になった。

 命を削って力を供給させる裏技も、これ以上やれば死に至る。故にシオンはその術を解いた。


「……あと、どれだけ動ける?」


 自ら精霊術を行使する為の力を生み出していた期間、シオンの体には徐々に、契約した精霊から供給される力が溜まっていっていた。

 だけどそれも微量な物で、肉体強化をいつまで意地できるかも分からない。当然そんな状態なのだから、応急処置でもそれなりの力を消費する回復術などは論外だ。

 こんな状態で脱出しようというのだから、絶望的にも程がある。


 だがしかし……彼は笑っていた。


 ああして精霊を助けても、ちっとも精霊の信用を得られない。

 そして思わず手を止めてしまった事は、エルを傷つけたくないという思いもあっての事なのに、それを苦しめているとまで言われてしまった。

 ……それは彼にとって精神的に辛い事の連続。例えそれらが自業自得の話であっても、命を削ってまで助けようとしているのにそれなのだから尚更だ。

 だけど……それでも、彼は笑っていたのだ。


 だって手を止められた。


 精霊を傷付けてしまったが故に、その先に進む事に抵抗を覚えた。それがたまらなく嬉しかった。

 ……そういう些細な事が自分が変われた証となってくれるから。故に彼は笑みを浮かべた。

 決して笑っていられる状況では無いのに。


「……とにかく、進むんだ」


 彼はゆっくりと前へ進んで行く。

 その先にどれだけ敵が残っているかも分からない。誰もいなかったとしても、そこまで辿りつけるかも分からない。

 そもそも此処を出た所で、待っているのは治安の悪い裏の世界。此処を出れば助かるという訳でも無いのだ。

 だけど、死ぬわけにはいかない。

 絶対に死ねない。


 彼は彼で、藁をも掴む思いで助けたい相手がいるのだから。




 そして最終的に……彼の血に濡れた足跡は、地下施設を出たすぐの所で止まっていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ