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人の身にして精霊王  作者: 山外大河
七章 白と黒の追跡者
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76 遠隔操縦

 戦闘が始まってから十秒程経過した時点で、半ば勝利を確信できはじめた。

 数は負けている。レベッカ以外は出力も負けている。だけど俺達は誰一人として、向こうの連中に技量で劣っている事はなかった。

 俺ですら確信を持って向こうの連中よりは戦えると思うことができた。

 それくらいには、向こうは技量も連携の質も低い。

 故に十秒で一気に崩れた。


「……ッ! あ、相手は二人と精霊一人だぞ!」


 敵の一人が目の前の惨状に叫ぶ。

 レベッカが全ての敵の動きを重力変動で鈍らせながら、六人を同時に相手にしていた。

 そして残り四人は俺とシオン。

 初撃。最初の十秒に満たない内に、俺の出力を利用したシオンの精霊術が炸裂して一気に二人を昏倒に追い込んだ。

 結果、十秒で数を半分程まで削った事になる。

 そして戦闘慣れしていないであろう向こうの連中は。そしてきっと手にした武器である程度保っていたであろうに、それでも10秒で半壊した現実に動きが止まる。

 だがその間もレベッカは止まらずに次の一人を撃破する。

 残り……四人。


 そしてその現状を見て、俺はシオンに言う。


「シオン! とりあえずお前は下がって温存しとけ!」


 そして勇気を振り絞るようにこちらに向かってハンマーの霊装を振り下ろして来た白衣の男の攻撃を、体を捻って回避する。


「こいつらは俺とレベッカだけで事足りる!」


 そして体の捻りで生まれた回転を利用して、男の側頭部に蹴りを叩き込んで弾き飛ばした。

 動きが拙い。出力は高いものの俺が辛うじて相手にできていたタイミングのエルと同じ程度。そこに重力変動による補助が加わる。

 ……楽勝だ。

 これを二人同時に相手にできないのなら、誠一や五番隊の人達に申し訳が立たない。


「分かった助かる! なら僕は可能な限りのサポートに回る!」


 可能な限り。魔術や力を自ら生成しなければならないような運用方法をした精霊術を使わない戦い方。

 シオンが魔術の使用や、出力を一定以上増強させた精霊術を使うのに身を削る必要がある上にここから先治療に当てる時間を確保できない以上、少しでも早く進む必要があるとしても多分これが最適解。

 これでこいつらを、可能な限り最速で突破するッ!


「……ッ」


 蹴り飛ばした男ともう一人がほぼ同時に接近してきてその手の武器。ハンマーとロングソードで攻撃を振るってくるが、それを回避しハンマーの男の鳩尾にエルボーを叩き込む。

 そしてそのまま横凪ぎに払われたロングソードを屈んで交わし、足元に手を付き足払いを掛け、すっ転んだ所にボールを蹴るように蹴りを叩き込んだ。

 そしてそこに追撃するようにシオンの『身を削らなくても打てる攻撃』が光の弾丸として振りかかり、その攻撃で僅かに動きが鈍った所にすかさず俺が前に出て顔面に拳を叩き込む。

 その一撃だけでは昏倒させるには至らない。だけどこれでより動きの精度も士気も削ぎ落とせる筈だ。

 このまま一気に……と、そう思った時だった。


「……ッ!?」


 突然、視界の先に映っていたレベッカが相手をしていた男の動きが変わった。

 正確に言えば……突然別人のように動きが良くなった。


「エイジ君!」


 シオンが前に出てくる。

 一瞬でこの戦いに自分という戦力が必要になると察したように。

 そして俺が相手にしていた二人も、改めて動き出す。


「な、ん……体が……勝手に……ッ」


 自らの意思と反して、今までとは違い洗練された操り人形のような動きで。

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