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人の身にして精霊王  作者: 山外大河
七章 白と黒の追跡者
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ex 量産型霊装・試作機

 意味が分からなかった。

 この研究所の末端研究員である白衣の男は、追って来た精霊に向けて精霊術による散弾を打ち込みながら混乱した思考を整えようとする。

 だけど本当に意味が分からない。

 あらゆる事に理解が及ばない。


 確かにあの青髪の精霊が他の精霊とは違う事は聞いていた。

 武器に姿を変える。そして……今目の前でそうなっているように、通常の精霊ではありえない反応を示す謎の能力を持ち合わせている。


 だけどそれを枷で押さえ込めないなんて聞いていない。

 そして一瞬で二人を殺す程強いなんて聞いてない。

 理解出来ない。出来る筈が無い。


 謎の反応を示していたとしても、精霊は精霊の筈で。たった一人の精霊にそれだけの力があるなんて事は信じられなくて。


 例え量産型の試作機で、幹部達が持っていた霊装と比較すればスペックが落ちているとはいえ、通常のsランク精霊を上回る力を有している霊装を持った自分達三人の同時攻撃を全てかわし、一瞬で二人を殺すだけの力なんてあまりに無茶苦茶で。


 次はそれが自分に向けられている。


(クソ……クソォッ! なんで! なんでこうなった!)


 自分達は比較的安全圏に居た筈だ。

 今、シオン・クロウリーと最悪なテロリストがこの研究所を襲撃していて、多くの研究員が試作機のテストも兼ねて迎撃に当たっている。

 自分達三人はその担当から外れた訳だ。

 これが終われば自分達もそこに向かう予定で、だけど試作機を十機も投入している迎撃サイドはそれで鎮圧できる筈で。実質的に自分達は精霊をルミアの元へと届けてそれで終わりだった筈なのだ。


 だけど結果こうなった。

 ありえない事態が立て続けに起きて、結果的に貧乏クジを引いたのは自分達だった。

 今、通路に誘い込んでかわしようが無い攻撃を放った筈だが焦りは消えない。


 目の前の禍々しい雰囲気を纏った精霊に、勝てる気がしない。


 そして目の前の精霊は正面に結界を展開させ……そこに重ねるように風を纏わせたのが分かった。

 例えるならそれは風の盾。

 ……風の防壁。


 薄い結界を媒体とするように分厚く張られたその防壁は、量産型霊装で強化されている筈の散弾を全て防ぎきってしまう。

 そして次の瞬間には防壁が消滅。


 目の前に、禍々しい雰囲気を纏わせた精霊がいた。

 そして精霊は風を拳に纏わせる。

 その次の瞬間、鳩尾を貫かれるような感覚が。

 叩きつけられた拳のインパクトと同時に、纏わせた風で肉体を貫く。そんな一撃の衝撃が、激痛と共に訪れた。


 男の意識があったのはそこまで。

 もう戻る事はない。

 

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