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人の身にして精霊王  作者: 山外大河
六章 君ガ為のカタストロフィ
258/426

ex せめて悔いが残らぬように

 可能性は見えた。希望だって確かに持てている。

 だけどそれがどれだけ微かなものかは嫌でも理解していて、もう自分は長く持たないんじゃないかと。もしかすると次の瞬間には自分が自分では無くなっているのではないかと。嫌でもそんな考えは付き纏ってくる。


 だからこそ、後悔だけはしたくなかった。


 本当は体がだるくてしかたがないけれど。立っているのも辛い位だけれど。

 それでも少しでも明るくいつもの様に。自分が好きだった時間と同じ様に、大切な人の隣りに居たかった。

 だから無理をしてでも。その無理を気付かれても。いつも通り明るく振舞ってやろうと思った。


 そして……自分が自分のうちに、知っておきたい事もあって。

 ずっと一緒に居て。ずっと一緒に居ると言ってくれて。だからもう今更かもしれないけれど。

 大切な人が自分にどういう感情を向けているのか知りたかった。

 そして自分がどういう感情を向けているのかも、伝えておきたかった。


 本当はもっと時と場所を選んで、もっとそれらしい言葉も考えて伝えたかった事だけれど、それでもそうした適切な時も場所も訪れるか分からなくて、言葉を考える時間もあるかどうか分からなくて。

 一秒先に自分が居るのかも分からなくて。

 だから気が付けばエイジに問いかけていた。

 きっとそれはエイジにとっては酷く唐突で、突然の事で驚くかもしれないけれど。ムードも何もない告白だったけれど。


 思いを伝える事はできた。

 答えを貰う事だってできた。


 これでいつからか抱いていた自分の恋は成就した。

 伝えられなかったら。答えを聞けなかったら後悔していただろう自分の願望が一つ消えた。

 だけどそれで悔いが無くなったかと言われればそれは違っていて、そうした後悔を擦り潰していけばいくほど、その先の未来が輝いたものに見えてきて。


 もっと生きていたいという願望が強くなって。

 エイジの隣で生きていたいという思いがよりまして強くなって。


 そしてそれが圧倒的に叶わない確率の方が高い願いだと知っているから、胸の苦しさもより強くなっていく。


 それでも、笑っていられた。


(……恋人か)


 この先、恋人らしい事ができるかどうかはわからないけれど……少なくとも今この瞬間は幸せだったから。


(恋人かぁ……)


 だから笑っていられた。


 そして祈る。

 願わくば、これから先も幸せであってほしいと。

 それが楽観的な希望だとしても。

 それでもそうであってほしいと願った。


 そんな思いの中で、彼女の知らない何かは迫ってくる。

 約束された幸せのタイムリミットは容赦なく迫ってくる。


 残り約二日の安全マージン。そこを越えた先に。そこを越えた最後の一日に何が待っているのか。

 希望か。それとも絶望か。


 それは誰にも分からない。

あとex回数話やったら6章中盤戦終了で、後半に突入です。

長かったですが6章クライマックス間近です。

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