(閑話)心配性がいっぱい
騒動も収まって、厨房の片づけもあらかたすんだとき。
食堂の入り口から、厨房をうかがう視線がいくつか。覗き込んでいる面々に、かなたは思わず苦笑を浮かべた。エプロンを畳ながら食堂へ出ると、彼らはそれぞれ上目にかなたを見つめた。
「どうしました?」
帰り支度も整ったケット、護衛としてそのまま残っていたオーウィンとウェールズ。彼らも不思議そうに入り口を見ている。
「……なあ、お嬢ぉ。やっぱりよう、危ないから帰ってこいよ」
なにを言い出すのかと思えば。
入り口を固めた三人、そして階段のところにふたり、今晩小鳩亭に泊まっている魔族たちだ。夕食のときには、あんなに楽しそうに、料理を食べて冒険の話をしていたのに。
ひとりがしおらしく口を開けば、俺も俺もとあとに続いた。
「お嬢はここじゃ非力なんだからさ」
「そうだぞ。おれたち、お嬢になにかあったら嫌だ」
雁首そろえて、そんなことを言いに来たのか。まったく、お人よしのお調子者なんだからなあ、みんなして。
危険はあると知りつつ、なんだかんだと森から出て過ごしていたけれど、かなたに危険が及ぶところを目の当たりにしてしまった。だから、ちょっと怖くなったんだろう。
思わず笑みを浮かべたかなたは、彼らが口を開く前に大きなため息をこぼしてみせた。
「大の大人がなに言っているんですか。こんなことが起きちゃうのはどうしようもないから、起きても危なくないように、みんなに協力してもらっているんでしょう。閉じ込めたところで、わたしがじっとしていると思うんですか?」
うっとみんながみんな、言葉を詰まらせる。
おいおい、そんなに無茶すると思っているのかよ。大人しくしていることだってあるのに。
内心で唇をとがらせつつ、かなたはしょんぼり肩をおとしている男たちを見上げる。
「だから、危ないときは助けて。頼りにしてますから」
にっこり、いい笑顔。押し切るときの基本だ。
ね、と念を押すとわかったよぅと不承不承、けれども心なしか決意を新たにしたような顔でうなずく。頼りになるなあ。かなたは声を上げて笑った。




