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地平線と彼方  作者:
本編
41/68

(閑話)心配性がいっぱい

 騒動も収まって、厨房の片づけもあらかたすんだとき。

 食堂の入り口から、厨房をうかがう視線がいくつか。覗き込んでいる面々に、かなたは思わず苦笑を浮かべた。エプロンを畳ながら食堂へ出ると、彼らはそれぞれ上目にかなたを見つめた。


「どうしました?」


 帰り支度も整ったケット、護衛としてそのまま残っていたオーウィンとウェールズ。彼らも不思議そうに入り口を見ている。


「……なあ、お嬢ぉ。やっぱりよう、危ないから帰ってこいよ」


 なにを言い出すのかと思えば。

 入り口を固めた三人、そして階段のところにふたり、今晩小鳩亭に泊まっている魔族たちだ。夕食のときには、あんなに楽しそうに、料理を食べて冒険の話をしていたのに。

 ひとりがしおらしく口を開けば、俺も俺もとあとに続いた。


「お嬢はここじゃ非力なんだからさ」

「そうだぞ。おれたち、お嬢になにかあったら嫌だ」


 雁首そろえて、そんなことを言いに来たのか。まったく、お人よしのお調子者なんだからなあ、みんなして。

 危険はあると知りつつ、なんだかんだと森から出て過ごしていたけれど、かなたに危険が及ぶところを目の当たりにしてしまった。だから、ちょっと怖くなったんだろう。

 思わず笑みを浮かべたかなたは、彼らが口を開く前に大きなため息をこぼしてみせた。


「大の大人がなに言っているんですか。こんなことが起きちゃうのはどうしようもないから、起きても危なくないように、みんなに協力してもらっているんでしょう。閉じ込めたところで、わたしがじっとしていると思うんですか?」


 うっとみんながみんな、言葉を詰まらせる。

 おいおい、そんなに無茶すると思っているのかよ。大人しくしていることだってあるのに。

 内心で唇をとがらせつつ、かなたはしょんぼり肩をおとしている男たちを見上げる。


「だから、危ないときは助けて。頼りにしてますから」


 にっこり、いい笑顔。押し切るときの基本だ。

 ね、と念を押すとわかったよぅと不承不承、けれども心なしか決意を新たにしたような顔でうなずく。頼りになるなあ。かなたは声を上げて笑った。


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