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銀色と月  作者: 藍乃*
Ⅲ Crescent moon
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第二十八話 犯罪

――12月22日 18時頃 鈴谷宅前


未来は全体が真っ黒に染められ、後部座席には黒いフィルムの貼られた車の助手席に乗った。

数日前、スタンガンで気絶させられる直前、公園の影に真っ黒な車が見えたのは気のせいではないらしい。

ナンバープレートを毎回乗るごとに偽装し誤魔化していると蒼真は教えてくれた。

これで二人で目的を果たすまで、ばれずに済むと少し安心している自分が他人のように思える。

すごく真面目で硬い性格とまではいかないが、校則を破るような性格ではない自分は今、法に背くようなことをなんの罪悪感もなくしている…その上「父を殺したような人殺しのやることよりまし」とも思っている。

自分が誰なのか、わからなくなりそう。


運転中に会話は一度も交わされることなく、「目隠しは可哀想だから」と蒼真は未来を拘束することはしないで家の前に着いたのだが、やはり正確な位置は知られたくないようですごく遠回りでわかりにくい道筋でここまで来た。きっと帰りもそうだろう。


「生活用品は一式そろってるから、衣類だけ持ってくればいいよ」

「はい、」

「あ、言い忘れてたけど、未来ちゃんの携帯は、GPSとか厄介なものに引っかからないように壊しちゃったからないよ」

「え?」

「はい、もう時間ないからいってらっしゃい」


未来の鞄から没収していた自宅の鍵を無理やり握らせて車から追い出すような形で取りに行かせた。

急いでいるというのもあるが、この人通りの少ないタイミングを無駄にはしたくない。

蒼真はそこで周りの様子をうかがった。

犯人とは疑われないように、そして人通りの少ないタイミングをまた見計らって、窓に向かって合図を出さなくてはならないのだ。



――数分後 未来の部屋


久しぶりに来る部屋。

あのコンクリート部屋とは違う木の暖かみと懐かしさと…いつもの香りを感じた。

これからはあの冷たい部屋が“いつもの香り”になってしまうと思うと名残惜しい感じがして、もう少しここにいたいけれど、母に見つかっては面倒だ。


ポケットに入れていた小型にできるバックを開き、手当たり次第に詰め込む。

お気に入りの服も、どうでもいい服も全部…ありったけ。

そして自分も犯罪者である気持ちをかき消すように…

袋がいっぱいになってきたので少しだけ服は残ってしまったが、もう部屋を離れなくてはいけない。

部屋に入ってから5分。

それが未来に与えられた時間。


部屋を出ようとしたとき、目があった。

黒い瞳がかわいいクマのぬいぐるみ。

誕生日に父からもらった、最後の誕生日プレゼント。

「僕も連れて行って」

そう言われているような気がして、ぬいぐるみもバッグに入れ部屋を出た。



――同時刻 黒塗りの車


蒼真は遠くに人影がみえ、その一点に集中する。

どうやら高校生のようで髪は金髪に染め、制服の雰囲気がどことなく未来のものと似ていた。

未来の同級生だろうかと観察し続けていると未来の家の方向に向かっていることに気づき、危機感を感じた。

いや、それと同時に彼は“楽しさ”も感じていたかもしれない。


その男子高校生はだんだんと家に近づき、車のそばを通り過ぎる。

怪しまれぬよう、横目で確認すると彼の予想を大きく上回る行動に出る。



――同時刻 未来の部屋


階段を急いで降りる。といっても周りの家に足音を聞かれてしまっては計画は失敗。足音を殺しながら歩く。

もちろん部屋の電気は消したままで、薄暗い。

最後の段を降りて、玄関のドアに立ったところで、ピンポーンとインターホンが鳴り響く。

ちょうどドアノブに手をかけた時。

鍵はしまっているけれど、外の人物との距離はドア一枚。

冷や汗が背中を伝い、思わずつばをごくりと飲み込む。

本当は離れるべきなのだろうけれど、緊張で足が震えて動かない。


インターホンをおしたわけだから、母親である確立はかなり低い。

しかしゼロとも言い切れない…そうしたら蒼真に殺される可能性もでてくる。

なんの関係もない人であるように、玄関から離れることをただただ祈るだけ。

帰っていく足音を聞くために耳をすませると、未来はどんどん自分が犯罪に手を染めていることに気づいた。

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