第十一話 青年
☆翔side☆
ピンポーン
インターホンを押す。
近くの表札には"鈴谷"の文字。
最近好きかもしれない人の家。
「でてこないしー・・・」
沢村は少し不機嫌そう。
親友のお見舞いじゃないのかっ?!
「寝てるんじゃねーの?」
「そっかー・・・おばさんレストラン続けてて忙しそうだし・・・未来一人で寝てるのかもね」
家の窓を見てるのかと一瞬思えるが、
その視線の先は窓の向こうの青空だ。
本当にお前はお見舞いする気があるのか?
「んー・・・あ、そうだー」
「・・・なんだよ」
「私、用事があったんだったー。」
「分かった、まず棒読みをやめろ」
「はいはい、ってことで、お見舞いよろしくー♪」
ピンポーン
「あっ! おい!?」
沢村はみかんゼリーの袋を俺に無理やり持たせ、
しかも、インターホンを押し、一瞬にして逃げられない状況を作り上げた!!
運動部なだけあって逃げ足は早く、気づけば住宅街から消えていた。
「早っ・・・」
「・・・あの・・・」
細いけれど可愛いらしい声、振り返ると
「・・・お見舞いに来た」
「ありがとう」
俺の好きな人。
「さっきまで寝てたから部屋着だし散らかってるんだけど・・・」
苦笑いしながら部屋へと招き入れてくれた。
俺の部屋に比べたらめちゃくちゃ綺麗だし、
いかにも女の子らしい部屋って感じ。
「・・あ、そうだ、これ」
ゼリーの入ったコンビニのレジ袋を手渡す。
「・・・みかんぜりー!! ありがとう!!」
嬉しそうにニコニコ微笑む。
反則だっ、可愛すぎる・・・
服装が部屋着というだけで充分可愛いが。
「・・・あれ? 結ちゃんは?」
「用事あるって言って先帰った」
「そっか・・・」
受け取ったレジ袋を机の上に乗せた瞬間、
「あっ!」
隣に積み上げられた書類が、どさぁっと崩れる。
その中の一枚が、ひらひらと飛んで、
俺のつま先のあたりに落ちる。
真っ白。
裏返すと・・・
「・・・誰?」
染めていない真っ黒で艶のある髪に、背も高く、顔立ちも良くて・・・
目元の泣きボクロが特徴的な男の人。
その笑顔からは優しい雰囲気が感じられる。
年齢は20前後だろうか?
「あ・・・」
・・・見たらまずいものだった?
「私のお父さんを殺した犯人・・・かもしれない人・・・」
「え?」
優しそうな、モデル雰囲気のこの男の人が?
「本当にこの人が?・・・って思うでしょ? 私も本当にこの人が殺したのかわからない・・・だから調べてるの、この書類は全部事件に関することばかり」
「そうか・・・」
どう声をかけてあげればいいのだろう、
ここで迷っている時点で、鈴谷を好きでいる資格なんて・・・
「実際に集めてみたところで、結局どうしたらいいのかわからないんだけどね」
苦笑いしてみせる。
「・・・何か困ったこととかあったら俺に言えよ、」
「うん、」
黙って二人で床に散らばったプリントを集める。
何度か手が触れたけれど、その度に心拍数が少し上がるのがわかる。
でもそれを必死に隠しながら拾った。
数時間、今日あった出来事などを話した。
微笑みながら頷いてくれる。
二人きりにしてくれた沢村に感謝・・・!
「・・・じゃ、そろそろ帰るか、」
「うん、」
・・・。
・・・・・・。
「あのさ、」
「ん? なぁに?」
――好き。
そう言いたかった。
「なんでもない、明日は元気に来いよ」




