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引き抜いてください!

スキンヘッドの男が乗った車が物凄い勢いで向かってくる。その車を背にして僕は走り出そうとするが和也が動かない。僕は思わず立ち止まってしまう。


「知り合いは傷つけさせないぞ」


格好良い!もし僕が女だったら惚れてまうやろ!でも知り合いってとこがつっかかる。


和也はさっきまで地面に置いていた盾を持ち、体の重心を下げて車に対して真っ正面からぶつかるきだ。


スキンヘッドは携帯をいじり、なにかをタッチすると頬をつり上げた。僕は悪い予感がした。


バキッ。


グサッ。


悪い予感が当たった。さっきまでスキンヘッドの乗っていた車の先端には一本のユニコーンのような捻られている銀色の角ができていた、長さは二メートルで太さは根本のところで直径三十センチはある。無情にもその角は盾を貫き、和也の胸を突き刺した。和也は力が抜けて天をあおぐように体をのけぞらせた。しかし、スキンヘッドの乗った車は滑って壁にぶつかっている。


「うわあぁぁぁあぁっっ!」


僕は目を覆い、地面に座り込みながら叫んだ。


「奏太様、まだ終わってません。早く和也さんを連れて逃げますよ!」


僕はすぐさま立ち上がり和也の近くにいくが近くにいけば行くほど死んでるのではないかと考えてしまう。


「ど、どうすれば」


僕がどうしようか考えている間にもスキンヘッドは車からでようとしている。


「奏太様!早くしてください!」

「だから、どうすれば良いのか…」

「引き抜いてください!」


そうだ。まずはここから逃げないと、早く助けないと。


スキンヘッドの男がドアを蹴ってドアを開けようとしているが開かないらしい。


あれ、この状況どっかで…。


思い出した。ジョブを決めるときに出された質問に似ているのがあった。目の前には死にそうな人がいるが、自分の手で助けることができる。でも、僕が危なくなる。


僕が書いた答えは、助けない。だ。


しかしカンナは今、僕のパートナーなのに和也を助けようとしている。カンナの事を機械だからとか言ってたけど、違うかもしれない。カンナは人間の感情を持っている。僕も人間だ助けたいに決まってる。


僕は和也を前から腹を掴みながら、角から抜き出す。


驚いたことにさっきまで胸の辺りに角が刺さっていたところには刺さったあとはなにもなかった。


僕は携帯をポッケに入れてから和也を抱き上げ、走り出そうとするがやはり僕には力が足りなくて歩いていかないと無理だ。


「奏太様!パッシブを押してください」


戦闘コマンドをタッチしたときに出てきた三つの選択肢の中の一つだったっけ。とりあえず和也を壁に寄りかからせて座らせた。携帯をポッケからとりだし電源を点けて戦闘コマンドをタッチして、パッシブをタッチすると能力と必要メモリが一つの長方形に書かれていた。その長方形がたくさんあった。


「忍者のジョブですからスピードをアップさせるパッシブを押してください!」

「えー、んじゃあこれで」


僕がタッチしたのは【ランナウェイ】だ。


押したら画面がモビフォンのホーム画面に移る。やはり、ゲージの一番下の灰色が左はじから黄色く染められていく。たぶんこれはダウンロードされるまでの時間なの

っ!」


スキンヘッドの男がドアをぶち破る。その時ゲージが黄色に染まりきる。


僕はすぐさま和也を抱き上げるがやはり僕には重い。僕が歩きだした瞬間変な気分になった。歩いてる、確かに歩いてる、なのに周りの背景が走ってる時と同じ様に後ろへと流れていく。


できるだけスキンヘッドから遠くに行かないと。


十分間は移動した。周りはたまにしか見ない景色になっていた。スキンヘッドの男は追ってきてはいない。


僕は和也を壁に寄りかからせて座らせると、和也が目を開ける。


「あれ?俺って刺さんなかったっけ?」


和也が胸の辺りをさすりながら聞いてくる。僕は「分からない」と目を見ずに答えた。


「でもさ、あのスキンヘッドを倒さないとここから出れないんだろ?」

「そうですよ!和也さんがあのスキンヘッドを倒すんですか?」


カンナの声がする。


「俺が倒すから奏太は逃げてろ」


なんでそんな格好良いこと言えるんでしょうね、君は!


「そうします」


僕は和也の言葉に甘えることにした。ここで死んだら現実でも死ぬということは信じたくないが、安全策をとるべきだ。


「うわぁ~、本当に馬鹿なんだねぇ。でもそういうとこ、嫌いじゃないよぉ」


トクが笑いながら言う。その声を聞いて和也は携帯を手に取る。


「そういうことだ。何故かは分からんが胸の辺りの痛みはないし、倒してやるよ。安心して待ってな」


イケメンか!だが腐二っぽいぞ!


和也は立ち上がり、僕に笑顔を見せて「ありがとう。行ってくる」と言って走りながらスキンヘッドがいた方向に走っていく。


和也の背中はどんどん遠ざかっていった。


「奏太様、和也さん本当に大丈夫ですか?」


僕もポッケから携帯を取り出す。


「きっと大丈夫だと思う」

「ふーんそうなんですか。体力がもう無いみたいですけど」

「…体力?ピンピンしてたけど」

「違います。こっちでは痛みは体感できず、傷はつかないんです」


つまり、和也はもうすでに瀕死ということか?


「赤いゲージってありますよね?それって残りの体力を表しているんですよ。そして私には他の人の体力だけを見ることができます」

「それじゃあ千寿さんは…」

「もうほとんどありませんよ。んー、具体的に言えば残りの体力は三パーセントです」

「嘘だろ…」


僕はすぐにトクのあとを追いかけた。【ランナウェイ】の能力はすでに切れて普通のスピードだった。僕は携帯でもう一回【ランナウェイ】を選択した。


普通に走ってるだけなのに明らかに早いのが分かる。


「間に合ってくれ…」

「奏太様、なにいっちょまえに格好良いセリフを言ってんですか。笑えますよ」


僕は無視をした。

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