奏太様ひどいです!
「エリアが指定されたらどっちかが死ぬまで戦わないと駄目なんだよぉ」
「え…まじかよ」
和也が驚いてるが、すぐに意を決したように僕の方を見る。
「悪い、奏太。そういうことだ」
嘘だよね、殺さないよね。
「はいはーい。トクさんでしたよね、嘘は大概にしときましょう」
カンナが笑いながら話す。
「ちぇ、分かってるのかよぉ。つまんねぇ」
トクがため息を漏らしながらつまんなそうな顔をする。
「別に殺さなくても終わらせる方法はありますよ!だから奏太様、半泣き状態はやめてください。格好悪いですよ」
「な、泣いてない!」
「奏太様、今袖で目元拭きませんでした?」
「拭いてない!」
するといきなり和也がクククと笑い始めた。
「な、なんですか千寿さん」
「いやー、お前楽しそうだなと思って。つーか同い年なのにさんづけで敬語はやめてくれよ」
「千寿さんにはつけます」
「なんで私には敬語じゃないんですか!?あ、あれですね人種差別ですね!」
「お前は人種とかないだろ」
「奏太様ひどいです!」
こんな話をしてる場合じゃない。よくわからないことがたくさんあるんだ。
「トクさん、いくつか質問していいですか?」
トクはめんどくさそうに「いいよぉ」と言ってくれた。
「本当に命を賭けたゲームなんですか?」
一番知りたいことはこの事についてだ。
「うん、そうだよぉ」
そっけなくトクは答えた。
「次にモビフォンのする理由は?」
モビフォンは公式のアプリではなく勝手にダウンロードされ、アンインストールができない。しかも、まだ断定はできていないが命を賭けてゲームをするアプリだ。つまり、大人数で運営しようとするとボロが出るかもしれないから個人かあるいは少数の団体で運営しているように思える。
「ん~、それは俺にも分かんないことなんだよねぇ」
ということは、このサポート役はゲームのことについてだけプログラミングされているのか。
「命を賭けたゲームだという証拠は?」
「証拠か…。ここでは物を壊しても直るんだよぉ」
「ここでは?」
「あれぇ?エリア指定のことについて聞いてないのぉ?」
たしか初期画面にでてくる三つの選択肢のうちの一つだったな。
「エリア指定は携帯から半径一キロ以内にいるモビフォンをダウンロードした携帯があるときに使える選択肢だよぉ。選択するとその携帯から半径一キロ以内からは抜け出すことがてきなくなって、物を壊しても戦いが終了すれば元通りになるんだよぉ」
原理は分からないが恐らくエリア指定された範囲ではその中であったことは無くなるのか。
「あぁ、そうだ。エリア指定されたら携帯の持ち主以外の人間はいなくなるよぉ。しかもエリア指定された中で死んだらモビフォンのアプリの持ち主以外は記憶から無くなるから思いなく殺せるよぉ」
ふざけてるな、このゲーム。
「あぁ長く喋ったぁ~、疲れた~」
すると急に画面が暗くなった。
「ちょっ、聞きたいことはまだあるんですけど」
画面が点く。良かった話をしてくれるのか。
「めんどいしぃ、つーかお前にもパートナーいんじゃん。半泣きだよぉ」
僕は地面に置いた自分の携帯を見てみると、目に涙を浮かべながら僕の事をじっと見ていた。
「そんなに私のことが嫌いになっちゃいましたか?奏太様~」
涙声で話をしてくる。一応僕のパートナーだからな。僕は携帯を地面から取り、土をはらう。
「全然嫌いじゃない。信じなくて悪かったな」
とは言ってみたものの今だ信じられるはずがない。そりゃあそうだろ、いきなり変なアプリがダウンロードされたと思ったら殺し合いをしろって言われてるんだ。
急に僕の携帯はピーと鳴り出し、和也の携帯からは今流行りと噂されている甘酸っぱい恋をロックで表したという歌が流れた。それにしても、僕にはそれほどいい曲とは思えない。
「乱入してくるとは、奏太様は本当に運が悪いですね!」
カンナが笑いながら僕に話しかけてくる。このテンションはテンションでうざいと思う。
「もしかしたら次も知り合いかもしれないぜ」
和也が無邪気に笑いながら僕の事を見る。うん、やめてください。そんな眩しい表情を見せないでください固まってしまう。
「あれが奏太様の友達だったらパートナーやめたいです」
「………え?」
そう、三十メートルぐらい先にいる車に乗ってる男がいる。ちょうど街灯の下だったので顔が見える。よくアニメとかにある顔に傷がついてて怖いスキンヘッドのおっちゃんだ。
こっちを見てスキンヘッドの男は車のアクセルを思いっきり踏んだようだ。
逃げる。
これが頭のなかに最初に浮かんだ事だった。