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最後の戦いだ

更新が遅くなりましたが、これからは早めに更新できると思います。

体の中のなにかの留め具が、外されたような感覚がした。


まるで噛み合わない歯車を、無理矢理合わせて回してるような感覚。


しかしその感覚は順応していき、呼吸をしてるようにいつもの感覚に戻る。


白と黒のみを使った、忍者の服を身に纏う。


いつもカンナが着ていた服のデザインが頭に浮かぶが、そんなことを考えてる暇はない。


僕は紗綾に向かって走ってるミントの服を掴み、後ろに引っ張ると勢いよく、後ろの塀にミントがぶつかる。


土煙から出てきたミントは、ゆっくりとこちらを見る。標的を変えたようだ。


紗綾の【勇者の剣】を逆手で持つ。


ミントは四つん這いになり、足に力を込める。


ミントが一気に足に溜めた力を放ち、僕の方へと跳んでくる。



ミント

【1/10000】



「「スキル【斬】」」


自分の口から僕とカンナの声が出て、重なる。



奏太、カンナ

【残容量:???】-【斬:???】=【残容量:???】



跳んでくるミントの首に一太刀。それだけだった。


「ウガアァ…」


苦しそうにミントが呻く。


ミントは自らの胸に向けて手を刺し込む。



ミント

【0/10000】



最後の最後に自分の意識を持って、行動ができたんだろう。


僕は紗綾に駆け寄り、紗綾の体力を見てみると既に0だった。ポツポツと光の粒子になって空へと溶けていく。


「栞奈、おかえり」


僕の頬を撫でながら紗綾は言った。


言いたかったのに言えなかった言葉のように聞こえた。


「「またね」」


自分の意思とは関係せず、僕の口から自分の声とカンナの声がする。


最後に儚く紗綾は笑って、消えていった。


一つの足音が聞こえた。


考えなくても誰なのかは分かる。そう、釛だ。


「「やっぱり、お前とも戦わないといけないのか」」


体の向きを変えて、釛と相対し、僕は携帯を操作してある画面にする。


これを見せれば、もしかしたら釛と戦わなくてすむかもしれない。


右手から【勇者の剣】が消えていき、左手で携帯を強く握りしめる。


「死刑【石打】」


地面からいくつもの包帯が伸びてくる。今の僕なら全てを避けれるかもしれないが、あえて避けずに、自分の持っていた携帯を釛に向けて投げる。


携帯は弧を描きながら釛の方へと飛んでいく。


釛は目の前にきた携帯を弾こうとするが、携帯の画面を見た瞬間、手が震えだした。


その画面とは、僕と釛が一緒に写っている卒業写真だ。


前にカンナが写真を見たのをきっかけに、記憶が戻った。ならば、釛だって思い出してくれるはずだ。あえて包帯を避けなかったのは、釛は思い出してくれると信じているからだ。


僕の体に一気に包帯が巻き付いていき、身動きがとれなくなる。


暗闇の中、釛が呻いているのが聞こえる。僕は静かに、反抗もせず、ただ待っていた。


僕に巻き付いていた包帯は消えていき、暗闇から光のある世界に戻ると、釛は僕の事を見ながら涙を流していた。


僕は昔の自分のように、まるで子供のように屈託のない笑顔で釛を見つめる。


釛は未だに状況が理解できないのか、呆然としている。


「「釛」」


僕はそう口から一言発した。


釛は口をぱくぱくさせて、動きを止めて、一度唾を飲み込んで、震えてる口をゆっくりと開いた。


「奏太―――」


パンッ


釛のこめかみに一つの銃弾がめりこんだ。


釛は僕に笑顔を向けながら、声は届いてこなかったが「ありがとう」と口を動かした。


僕はすぐさま釛を支えて、ゆっくりと地面に寝かせる。


モビルフォンウォーズはたった四日で、妹を、友達を、支えてくれた人を、親友を、殺した。


そして、たった四日で終焉に向かう。


溢れそうになる涙を袖で拭き取り、既に消えてしまった釛の温もりを確かめたあと、ゆっくりと立ち上がる。


一つ深呼吸をして、この世界の空気を吸い、吐く。


たった四日なのに、この世界の空気の方が楽になったような気がする。


体の痛みは少しあるが、我慢できないほどではない。


視線を落とし、拳を強く握り、力を緩める。動くことを確認したあと、目を瞑る。


今まで合ったことが、鮮明に思い浮かぶ。


笑い。


泣き。


感動。


驚愕。


憤怒。


恐怖。


喜び。


哀しみ。


たった四日なのに、生きてきた人生の中で最も濃い内容で、本当に四日で起きた事なんて驚きだ。


これからの人生で、四日でこんなに濃い四日は来ないだろう。


次からは僕が濃い日を待つのではなく、描いていこう。


少し笑みが溢れてしまう。


四日でこんなに人間とは変えれるものだということに。


「「よし、いこうか」」


僕は最初の頃のように逃げ腰ではなく、泳いだ目線ではない。自分はここに存在するということを強調するように、立ち。しっかりと見据えた瞳で物事を見ている。


僕とカンナは言う―――










「「最後の戦いだ」」









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