戦闘コマンドを押してください!
携帯の音は十秒ぐらい鳴り続けた。カンナが「ここから早く逃げましょう」とうるさいのだが僕は気にしない。僕はゲームの仕方が分からないとすぐにやめちゃうタイプだからこのアプリは消そう。
モビフォンの詳細画面でアンインストールをタッチする。
エラーが発生しました。
は?まぁ、もう一回。
エラーが発生しました。
どういうことだ。消そうとするとすぐにこのメッセージが届く。
「あー、奏太様。モビフォンは消すことができませんよ。だって、この携帯には元々なかったアプリですから、というか早く逃げますよ」
「さっきから本当に意味が分から―――」
ドンッ。
携帯から聞こえたのではない外から聞こえた。車同士の衝突音じゃない。テレビで何度か見たときがある戦争の映像でよく聞く爆発音だ。
「だから言ったでしょう?リアルの世界で行われるゲームだと」
でたらめに決まってる。たまたま外で爆発音のような音が聞こえる衝突事故かもしれないし、本当に爆発の事件が起きてるかもしれない。変な予想かもしれないが、この世界で行われるゲームというのを信じるよりは僕の予想の方が信じられる。
ドンッ。
まただ。しかもさっきの音より大きくなっている。
「あらら~近づいてきてますよ?どうするんですか奏太様」
どうする、カンナを信じた方がいいのか?
「このままだったら貴方はは死んじゃいますよ」
ドンッ。
三十、いや二十メートル、もしかしたらもっと近いかもしれない。そうだ、確認すればいいだけの話だ。爆発音のした方向には窓がないので外に出ることにした。
周りは暗いので暑い時期なのに、すこし涼しい。たしかもう少しで七夕だったっけ。空を見てみると、ここら辺は都会に近いので星が綺麗に見えない。
というか、そんなことはどうでもいい。早く確認しないと。
僕は家の裏にいくための角を曲がると、そこには人がいた。暗いせいで顔がよく見えず性別すらも分からない。そいつは僕を見ると、不気味に笑った。笑った?なぜだ?
「見てください、あの人の後ろの電柱」
手に持っていた携帯からカンナの声が聞こえる。カンナに言われた通り電柱を見てみると、支柱から折れていた。電柱の周りには衝突した車などはない。
「奏太様、逃げてください!」
僕は電柱から電柱の隣に立っている人に視線を戻す。その人が僕に向かって走ってきた。僕はすぐに走り出した。
間違いかもしれない、もしかしたら道を聞くためかもしれない。でもあの人はこっちを見て笑い、電柱を折り、こっちに向かって走ってくる。モビフォンのことはおいといても、逃げないといけないのは確かだ。
「武器【鉄のランス】」
声からにして男だが、頭大丈夫か!?いきなり鉄のランスとか言ったぞ!
「奏太様も早く武器をダウンロードしてください!」
「何を言ってるのか説明してください」
「いいから携帯に電源をいれてください」
携帯に電源を入れると、ホーム画面はでずにモビフォンのアプリが開いてあった。
「戦闘コマンドを押してください」
僕はカンナに言われるがまま戦闘コマンドと書いてる所をタッチする。すると鉄の板が下に落ち、次は三つの選択肢がでてきた。
「その中の武器という選択肢を押してください」
すぐに武器と書かれてる所をタッチすると、左に短剣の絵とその絵の横に必要メモリと書かれているのがたくさん出てくる。
「一番上の【鉄の短剣】を押してください」
知らない人に追いかけられてる時にゲームのアプリをするなんて馬鹿らしいけどこのときの僕は頭がいっぱいいっぱいで考えてる暇がなかった。
【鉄の短剣】を押してみるとこのモビフォンのホーム画面である僕の名前とジョブが書かれてるところに戻った。三つ目のゲージである濃いめの灰色のゲージが少しずつ黄色く左端から溜まっていく。
灰色のゲージが黄色くなったとき、携帯の持ってる右手の逆の左手が重さを感じた。見てみると、絵にかかれていた【鉄の短剣】を持っていたのだ。