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伊織栞奈を知らないか?

【忍者魂】とは全ての神経を研ぎ澄ませ、半径一メートル以内の範囲は目を閉じていても手に取るように分かるようになるパッシブだ。


「武器【致死の短剣】」



【残容量:2500MB】-【致死の短剣:2500MB】=【残容量:0MB】



左手に少しずつ【致死の短剣】がダウンロードされていく。


「奏太様、もうありませんよ!」

「分かってる。和也、お前を残り一分ぐらいで倒さないといけない」

「やれるもんならやってみろよ」


少し苦笑いをしながら和也は僕の方を見る。和也はダウンロードが完了するまで待ってくれるらしい。


「武器【業炎のランス】」



【残容量:6000MB】-【業炎のランス:3000MB】=【残容量:3000MB】



和也が持っていた【烈風のランス】は消えていき、その代わりに【烈風のランス】を赤色にしたランスを持つ。


それと同時に【致死の短剣】もダウンロードが完了して左手に持つ。


「奏太様、残り四十五秒です」

「分かった」


時間が無いので、僕の方から攻撃を仕掛けていく。


道にある電柱から壁、車、木など全てを足場として使い、和也の全方向から斬撃をくらわす。


和也は全てとはいかないが、致命傷になるところは【業炎のランス】の盾で防いでる。


何度も何度も繰り返し斬る。


ついに【業炎のランス】の盾が壊れる。


和也は防ぐものがなくなると、意を決したかのように防ぐ体勢をやめて、ランスを構える。


和也は何度も僕に向けて正確な突きをするが、僕は【忍者魂】のおかげで全て紙一重で避けていく。



和也

【体力:1250/10000】



僕は和也の死角である背後から最後の斬撃をくらわそうとした瞬間、【オーバーヒートライフ】の時間がきてしまった。


和也は後ろを振り向いてくるがこっから行動をキャンセルするのは無理なので、両手にある【致死の短剣】を握り直し、そのまま和也に向かって突っ込む。


「見えてればこっちのもんだ。パッシブ【龍の加護】」



【残容量:3000MB】-【龍の加護:3000MB】=【残容量0MB】



和也は【業炎のランス】を僕の頭を正確にとらえ、物凄いスピードで突いてくる。


刹那、これは避けれないと思った。


残り体力6400で致命傷である頭に、合計6000MBの攻撃を耐えられることができるのだろうか。


少しでもダメージを減らすために後ろに跳ぼうとするが、無情にもランスは僕の頭の中心を突き刺した。


その後に、両手に持った【致死の短剣】でランスを破壊して後ろへと跳んだ。



奏太

【体力:50/10000】



和也

【体力:50/10000】



「まさか、ブレーキをするのを途中でやめて、攻撃するとは思わなかった」


和也が汗を拭いながら言った。


「でも、どっちも残容量はないはずだ」


僕がそう言うと、和也は笑いながら「そうだな」と言った。


「んじゃあよ、最後は殴り合いだな」


と、和也は軽く言うが、そうすると僕の方が圧倒的に不利になる。


「わりぃな、勝たせてもらうぜ」


和也が僕の方へと走ってくる。僕は逃げようとする足を無理矢理前へと進ませる。


「俺の勝ちだ」


そう言って和也は僕の顔面に拳を当てた。


しかし、その拳は僕に当たらず僕の顔面をすり抜けた。


倒れていく和也を僕は抱える。


和也の首には僕が落としてしまった【蒼の短剣】が刺さっていた。


「やはりクズだな」


コツコツ、と足音をたてながら道の奥から女の声が聞こえてくる。


女は和也の首もとに【蒼の短剣】を投げて、殺したのだ。


まずい、一旦エリアを解除しなければ残容量は回復しない。しかも残り体力は少ししかない。


近づいてくる女はどこかで会ったことがあるような女だった。


腰まである金髪と冷たい表情。


「奏太様!どうかしましたか!?」


動きがない僕を心配して、カンナが言ってくれる。


「新しい敵がきた」

「嘘でしょ…」


カンナは半ば諦めているようだった。


「もう僕の負けは確定だ。やるならやってくれ」


僕は両手を上げながら、目をつぶる。前だったらこんな潔くなかったと思う。すぐに懇願して助けてもらおうと思っていたかもしれないし、助からないのを分かっていてもにげてたかもしれない。でも、このゲームはそんなんで逃げられるとは思わない。


というか、遅くないか異常に。


手を上げながら降参のポーズをしていて、なにかされる前にすぐに殺すべきだろ。


僕はそっと目を開けてみると、目の前に女の顔があった。


「ひぃぎゃああぁぁぁ」


僕は勢いよく座ったままなのに後ろに跳んだ。


「愚問だな。何故殺される覚悟があるのに、目の前に女性がいるとそんな風になるのだ」

「く、くそ、僕に勝てると思って余裕ぶってるな」

「まぁそうかもしれないが、殺す前に聞きたい事がある」

「なんだよ…」

「伊織栞奈を知らないか?」


僕はカンナがしてくれた昔話が頭に思い浮かぶ。たしかカンナの本名は伊織栞奈だったはずだ。


「おい、カンナ」


僕は小さな声でカンナに話しかける。


「どうしましたか?」

「お前の本名って伊織栞奈だよな」

「そうですけど、いったい何故ですか?」

「今僕の前にお前を探してる人がいる」

「…へ?それはおかしいと思います。この体になってから、周りの人の記憶から抜けているはずです」

「お前がその状態になるまえからモビフォンをやってたら?」

「私ができてからモビフォンは出来上がりました」


質問をすればするほど疑問が浮かび上がってくる。


「奏太様、その人の顔を見せてくれませんか?」

「分かった」


僕はポッケから携帯を取り出そうとする。


「お前は今から何をするきだ」


女は威圧感がある鋭い視線を向けながら言ってくる。


「ちょっと携帯を…」

「油断をしているときに殺す、それが目的か」


そう言いながら女はどんどん僕に近づいてくる。


僕の目の前で立ち止まると、僕が手を入れていたポッケに女が手を入れてくる。そして携帯を取られ、イヤホンも取られた。


女は携帯に電源を入れて、画面を覗きこむ。


画面が点くと、最初に聞こえたのはカンナの声だった。


「久し振り!紗綾!」

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