さぁ、貴方のジョブは!
僕はこの白髪の女を映し出しているアプリを探してみる。画面をタッチしてみても白髪の女にはなんのアクションもしない。まぁそれはいいとして、さっきまではなかったはずのアプリがあった。
「…モビフォン?」
すると、白髪の女が目を輝かせて僕に指を突き立てる。
「そうです!貴方はモビルフォンウォーズ略してモビフォンの参加資格を得たのです!」
「………?」
僕が口を開けて唖然としていると、この白髪の女は得意気に話し出す。
「モビフォンとは!この現実世界で行われる戦争なのだ!」
よく説明になっていないが、こいつはモビフォンとかいうアプリのおまけと言ってもいい感じなのか。まぁ暇潰しにぐらいにはなるかもな。
「どうすればゲームをできるんですか?えーと…」
「名前ですか?私の名前はカンナです!」
今気づいたのだがこっちの会話に合わせて話してくれる。このごろの技術はすごいな。
それじゃあ、アプリでも起動してみるか。モビフォンとかいうアプリは黒の四角のなかに白くモビフォンとシンプルに書かれてるだけのアイコンだった。
タッチしてみると画面が黒くなり、カンナの白い髪と白をモチーフとした服が目立つ。次に薄い灰色の鉄の様なものが画面全体に広がり、四隅にネジのようなものがある。中心にゲームスタートという文字が黒く書かれている。タッチをするとネジが外れ薄い灰色の鉄が下に落ちて、新しく同じ画面が出てくる。しかし、ゲームスタートとは書いておらず戦闘コマンドとコミュニュケーションコマンドの二つが書かれている。
「戦闘コマンドはですね、主にゲームで戦う時に使います」
画面の下から顔だけをひょっこりだして話した。というか、説明になっていない。
カンナは全てのレイヤーの上に出現するようだ。まぁいいか、戦闘コマンドを押してみれば分かることだ。
押してみるとまた鉄が下に落ちていく。
「さぁ、貴方のジョブを決めます!質問に答えてください!」
カンナがそう言うと鉄の板に質問と入力するためのボックスがあった。
質問*君の目の前にはボタンと死刑囚がいます。そのボタンを押すと、目の前の死刑囚は死にます。しかし、君は一千万手に入れられます。さて、押しますか?押しませんか?理由も書いてください。
「なんだこの質問」
いや、ネットをしているとたまに見かける。日本人だとボタンを押すらしい日本人は人の不幸は蜜の味と思ってる人が多いらしいのだ。なんか気分を害する質問だな。
答え*押す。僕もできた人間ではないので普通に一千万が欲しいから。
「悪ですね~」と画面の下でクククと笑っているカンナを見る限り、真剣に答えなくてもいいのが分かる。
鉄の板が下に落ちて、次の質問に変わる。
質問*目の前に死にそうな人がいます。
「それだっら、助けるに決まって…」
その人は爆弾を体に巻き付けています。その人ははずそうと試みているが外れる気配はありません。君の片手にはハサミがあります。そのハサミを使い爆弾の線を切ればその人は助かります。しかし、爆弾は残り数秒で爆発します。さて、どうしますか?
答え*助けない。爆発に巻き込まれて死にたくないから。
「びびりですね~」
「別にいいじゃないですか。カンナさん」
「そうなんですけどね~」
次の質問にいく。
質問*前の質問で立場が逆だった場合どうしますか?
な…。この質問、少しずつ自分の死に関わってきてる。
答え*ハサミを投げてもらう。そして、逃がす。
鉄の板が下に落ちていくと、いきなりカンナが下から画面全体を覆うようにてでくる。
「さぁ、貴方のジョブは!」
ニコニコしながらカンナは横に飛ぶ。鉄の板の中心に書かれていたのは『聖忍者』だった。
まったくゲームでは聞いたことがないジョブだ。
「モビフォンでは数千種類のジョブがあります。お馴染みのジョブからモビフォンオリジナルのジョブまであるのでダブることがほとんどありません!」
結構内容は凝っているゲームと思っていいのか?まぁいいや。してみないと分からないからな。
「それで、ゲームを始めるためにはどうすればいいんですか?」
「その事でしたら、もう既にゲームは始まってますよ」
「………?」
「このゲームはこのリアルの世界で行うゲームです」
えーと、どうすればいいんだ。これはつまりあれか、おちょくってるということでいいのか?会話ができる様な技術があればその内容についてシャレをいれることが可能だと思ってもいいはずだ。
「おちょくってるんですか?」
カンナは首を傾げて目を丸くする。
なんのことか分からないようだ。
「えっと…ちょっと待ってくださいね」
そう言った瞬間画面が戦闘コマンドとコミュニュケーションコマンドがあるところに戻っていた。しかし前とは違い、二つの選択肢は下にあり、もうひとつエリア指定という選択肢が追加されていた。中心にはゲームによくある体力ゲージのようなものが三つあった。上の二つは赤と青で、三つ目は濃いめの灰色のゲージだった。ゲージの上には僕の名前である才藤奏太とさっき決めたジョブである聖忍者が書かれていた。
格好良いなと思ったのたが、やはりゲームを始めるための選択肢がない。
その時、携帯からピーという警告音の様な音が流れた。
「まさかチュートリアルをする前に来てしまうとは驚きですね」
「今どんな状況か分からないんですけど…」