今回だけは、認めます
「カンナの力?」
「そうですよ。ただ駄弁るだけのオペレーターじゃないです」
今までずっとそう思ってた。
まぁ、この状況を打開できる力なら喜んで貸してもらおう。
「分かった。やってくれ」
「決意は決まったようですね、それでは始めます!スペシャルスキル【オーバーヒートライフ】!」
視界が眩み、少しだけ吐き気がしてきた。僕は持っていた【瀕死の短剣】を落とし片手を地面につき、倒れないようにする。身体の中心から熱い血液が流れてるような感覚がする、気持ちよくは無い。
「成功か?」
僕は自分の身体が心配になり、この状況はいいのかカンナに聞いてみる。
「もっちろん成功ですよ。私が失敗するわけないじゃないですか」
「前にも言ってたな」
それだけ聞ければ大丈夫だ。
【瀕死の短剣】を手に取り、身体に力を入れて立ち上がる。
何も変わってないような気がするが、今はカンナを信じるしかない。しかもさっきよりは大分ましになって視界も良好で吐き気も一時的なものだった。
「それではスキル【オーバーヒートライフ】の説明をします」
「発動した後説明するっておかしくないか?」
カンナは「それもそうだ!」と言いたげそうな顔をするが、僕と視線が合った瞬間失敗した事を指摘されたのが気に喰わなかったようで、頬を膨らませてそっぽを向いてしまった。
「僕、なにも悪い事はしてないはずなんだが…」
カンナは「うっ…」と言って、ため息を漏らした。
「今回だけは、認めます」
いまだ頬を膨らませながらカンナは言った。
「はいはい、説明をしてくれ」
「分かりました。そのスキルは発動してる間は全ての身体能力が飛躍的に上昇しますが、代償として毎分500MBと体力が500ずつ失われます。あ、あと、途中でやめることはできません。以上です」
えーと、つまり。
「ゆったりと説明を聞いてる暇じゃない!」
「あ、もうすぐで発動してから一分たちますよ」
奏太
【残容量:6400MB】【オーバーヒートライフ:500MB/毎分】【残容量:5900MB】
奏太
【体力:8000/10000】-(銃弾:1000)(オーバーヒートライフ:500)
「うわああああぁぁ!」
「なんで発狂してるんですか?キモいです」
「お前のせいだ!」
畜生、いまは考えたりカンナにつっこんでる暇は無い。
僕は一つ深呼吸をした後、一気に銃を撃ってきた方向に走り出す。
「んなっ」
驚いた事に【ランナウェイ】の比じゃないほどに早い。
自分でも慌てながら両足でブレーキをする。
パァン!
何故かは知らないが発砲音がどこからするのかが分かり、そして銃弾を感覚的に認識できたのだ。すぐさま後ろを振り向き、銃弾の軌道を目測で計算して、下から上に【瀕死の短剣】を斬り上げて銃弾を真っ二つにする。
近くのビルから「なっ」というツインテールの声が聞こえる。それも逃さず僕の耳は聞き取り、一瞬にしてツインテールの背後に移動する。ツインテールには消えたかのように見えていて、後ろに僕がいる事は気づいてないようだ。
「ごめんな。スキル【首狩】」
奏太
【残容量:6400MB】-【首狩:1500MB】=【残容量:4900MB】
僕がそう言うとツインテールが振り向き、僕の事に気がつくがもうすでに遅く僕の【瀕死の短剣】ツインテールの首筋を綺麗に横に斬った。
威力が高い【瀕死の短剣】とそれに全部の短剣に使える上等のスキル【首狩】に【オーバーヒートライフ】が重なった攻撃はなんのパッシブ、スキルを使っていない相手の体力を無くすのは簡単だった。
「運命の選択を間違わないでね」
と言い残してツインテールは静かに消えていった。
パァン!
僕の後頭部に向かって銃弾が飛んでくる。僕は後ろを見ずに【瀕死の短剣】を持ってない手で掴む。
「ビルの中でも正確だな」
手を開き、地面にカランと音をたてながら銃弾が落ちて消えていく。
奏太
【残容量:4900MB】-【オーバーヒートライフ:500MB】=【残容量:4400MB】
奏太
【体力7500/10000】-(オーバーヒートライフ:500)