大丈夫です。私の力を貸しますから
「そういや、お前のパートナーはどんなやつなんだよ」
僕がそう言うと、ツインテールは手を顎にあて目線を右上にして考えるが、すぐに答えが出たようでこっちを見てくる。
「そんなのいないと思うよ」
「…はい?」
「話が噛み合ってないのかな」
こいつにはカンナみたいなパートナーはいないのか?
「アプリが勝手にダウンロードされたときにでてくるやつのことだよ」
「…勝手に?私は自らダウンロードしたんだよ。本当になに言ってんのかな」
なんなんだ。意味が分からん。こいつにはパートナーがいない、でも僕と和也にはパートナーがいたはずだ。スキンヘッドの男は知らないが。
「まぁ、話してたって君か私達が死ぬんだから意味は無いと思うよ」
このツインテールはモビフォンのゲームについては知っていそうだが、モビフォン自体は分からなさそうだ。
「それもそうだ」
僕が好戦的な目をツインテールに向けると、ツインテールも待ってましたと言わんばかりに無邪気に笑う。
「武器【致死の短剣】」
奏太
【残容量:9100MB】-【致死の短剣:2500MB】=【残容量:6600MB】
【致死の短剣】は特有のスキルは持たないが一つ一つの斬撃の威力は他の短剣より高い。まぁ、その分ダウンロードが遅いし容量もくうんだよな。
「これまたおっきい容量の短剣をダウンロードしたね」
僕の手に短剣が生成していく遅さを見て、ツインテールが言った。
「それじゃあ私も準備するね。武器【大蛇鞭金】スキル【天帝蛇】パッシブ【サーチアイ】」
ツインテール
【残容量:9550】-(【大蛇鞭金:650MB】+【天帝蛇:800MB】+【サーチアイ:300MB】)=【残容量:7800MB】
ツインテールの右手に少しずつ長い鞭が出てきたが金属光沢の様なものが見え、見た感じ明らかに固そうなのが分かる。そしてツインテールの隣には映画によくありそうな異常に大きくなったアナコンダ、全長七メートルあるかもしれ白い蛇がとぐろをまいている。
「【致死の短剣】か~。結構えげつないね」
まるで僕が今ダウンロードしている武器の特徴が分かっているようだ。これが【サーチアイ】ってやつか。
僕の右手に重さを感じる。その事を認識すると、僕は携帯を取りだし、体力を見る。
奏太
【体力:9500/10000】
僕は携帯をしまい、今から戦う相手を見る。
「それじゃあ、いこっか」
無邪気に笑いながらツインテールが言うと、走りだす。僕も地面を蹴って走りだす。あの巨大な白い蛇は余裕ぶりながら動いてない。
間の距離が五メートルになったところで、ツインテールが鞭を僕めがけて振る。僕は上から頭めがけて向かってくる鞭を振り払おうと【致死の短剣】で頭上で横に斬ろうとするが、一つの銃声音と共に【致死の短剣】を持っている右手が弾かれた。かろうじて左手で顔面に当たるのを防げた。まるで鉄の棒で殴られた様な痛みだ。
忘れていた。こいつには仲間がいたんだ。
しかし、僕はその勢いで後ろに体重が偏り体勢が崩れてしまう。
「【天帝蛇】!今だよ!」
ツインテールが叫んだ瞬間、大きな白い蛇がとぐろをバネのように伸ばし、勢いをつけて僕の腹めがけて頭突きをくらわそうとしてくる。
「スキル【ランナウェイ】」
奏太
【残容量:6600MB】-【ランナウェイ:100MB】=【残容量:6500MB】
僕がそう言い、足に力を入れて地面を蹴り飛ばし後ろに飛ぶ。地面に手をつけながら両足でブレーキをして、前屈みで蛇のことを睨む。
僕は両手で【致死の短剣】を持ち、頭上に振り上げる。白い蛇が近くに来た瞬間降り下ろす。見事に白い蛇の頭に【致死の短剣】が突き刺さる。白い蛇が体をピクッと少しだけ動かしたあと、頭から消えていった。
「倒されちゃったか~、残念」
そう言った後、ツインテールは携帯を取り出して誰かに電話をし始める。
数十秒話した後ツインテールは笑って、こっちをみながら電話を切った。
「それじゃあね」
ツインテールは僕にそれだけを言い、僕のいる方向と反対に走り出した。すぐに角で曲がってしまい視界からツインテールが消える。
「なにがしたいんだよ」
僕は後を追いかけるために走りだす。
パァン!
またどっからか、銃で頭に撃たれた。
パァン!
僕はすぐさましゃがみ、銃弾を避ける。弾痕からどこから撃ってるのかはだいたい分かるが、細かいところまでは分からない。
「カンナ、敵を見つけるスキルとか無いのかよ」
「んー、ありませんね。もともと忍者系の職業は細かくねちねちダメージを与えたり、すごく容量がでかくて一撃必殺てきなやつですから。でも、隠密をつかえばある程度は見つからなくなりますよ」
「んじゃあ、それ頼む」
「りょーかい」
すると少しだけだが、自分が薄くなったような気がする。
奏太
【残容量:6500MB】-【隠密:100MB】=【残容量:6400MB】
「周りからは結構、薄く見えてますよ」
「分かった」
見えられないなら行ける。
僕は弾痕から推理して、銃を持ってる相手の方向を探す。その方向はツインテールが逃げた方だ。僕は角を曲がり走りだす。
パァン!
僕の額に銃弾が当たった。今までの銃弾との威力が桁違いで、僕はなすすべなく後頭部から地面に激突する。
僕はすぐさま戻り、銃を持ってる相手が見えない壁に背中をつけてため息をもらす。ポッケから携帯を取りだし、カンナに言う。
「いったいどういうことだ」
「単純明快です。相手側が私達の使っているパッシブより高度なものを使ってるんです」
なるぼど、つまりどうすることも出来ないじゃないか。
「ごめん、いきなりだが負けるかもしんない」
「何で諦めるんですか?」
「そりゃあ、うつてなしじゃん」
「こっちの答えの方が単純明快ですよ」
妙に自信ありげにカンナが話す。僕がなにも話さないのでカンナが説明をしだす。
「答えは、全部の弾を避ければいいんです」
無理です。僕にそんな動体視力はありません。でも、もしかしたら動体視力を上げるパッシブがあるのか?
「動体視力を上げるパッシブでもあるのか?」
「ありませんよ」
「言っとくが、僕はそんなことできないよ」
「大丈夫です。私の力を貸しますから」