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おっと、おでましのようだ

釛は無言でこっちを見てるだけだ。目を合わせても全然緊張しないし、むしろ落ち着く。


「でも、お前、死んだはずじゃ」


釛は無言を貫いていた。しかしすぐにその口が開いた。


「死刑【鉄の処女】」


釛がそう言った瞬間、僕は縦半分の円錐形に頭から下が覆われて、頭は固定されてるようにぴったりの大きさの縦半分こ円錐形の鉄の中に入っていた。ギギィと錆びた鉄の扉が閉まる音が聞こえた時、扉が少しだけ何かに光が反射して眩しくなる。僕は直感的にここから出ないといけないと思った。僕は前に転がりながら鉄の中から脱け出し、釛から離れるために走った。さっきまで僕が立っていた所にはいくつもの針がついてる扉が閉まっていた。


【鉄の処女】別名アイアン・メイデンは中世ヨーロッパで刑罰や拷問に用いられたとされる拷問具。ただし、「空想上の拷問具の再現」とする説も強い。


【鉄の処女】の伝説。

ある伯爵夫人が作らせたとの話がある。一説によると、メイドの少女が夫人の髪を櫛でとかしていた所、運悪く髪が櫛に絡まってしまった。激怒した夫人は、髪留めでメイドの心臓部を刺した。返り血がかかった手を拭うと肌が金色に輝いたように見えたため、処女の血を浴びると肌が綺麗になると信じた夫人が、村中の美しい処女を集め、血を絞り取るために作らせたとも言われている。


そんなことが脳内で繰返し再生される。そう、今さっき僕が入っていた鉄はネットでも見たときがあるやつだ。人一人の入れるスペースがあり、閉じられると頭の所には女性の顔がある。


「いったいどうなってんだ」


僕はそう言いながらあてもなく走る。


「奏太様は本当に運が悪いですね、でもあの男の人のジョブは分かりますよ。名前をエグズキューショナーと言います」

「エグズ…え?」

「えーとですね、死刑執行人と言えば良いですか?」


なんだそのジョブは。普通に格好良いと思ってしまったじゃないか。


「しかし、気をつけた方がいいですよ。エグズキューショナーはスキル特化した厄介なジョブです」


そんなことより、知りたいのは他にある。


「あいつ、釛は、死んだはずだ!」


カンナは少しの間黙ったあと「知りません」と一言だけ言った。


「戦わないといけないのは確かですよ」


残酷にも現実に目を向けさせる。


「本当に戦うのか?」

「当たり前です」


僕は溜め息をしたあと、足を止めて後ろを振り向く。


「はーいはい、ちょっと待って。俺も混ぜてくれよ、友達だろ?」


そう言いながら、後ろから肩を組んできたのは和也だった。僕は反射的に身を引いて、肩から手を外す。


「なんだよ、連れねーな」


と笑いながら言ってくる。


「いいからさぁ、早く終わらせよぉ」


いつものようにめんどくさそうなトクの声が聞こえる。


「奏太様、イヤホンやめてもらって良いですか?トクさん達に敵について説明します」


僕はイヤホンを僕の耳と携帯から取り、ポッケに入れる。


「トクさん、相手はエグズキューショナーです」


トクはその事を聞いて、少し驚いたのかそれともめんどくさかったのか「嘘ぉ」と言った。


「どうでもいいよ、倒せば良いんだろ?」


頭の後ろで手を組ながら和也は気楽に言った。


「いいですね、トクさん。そんな人がパートナーだと戦いがスムーズじゃないですか?」

「まぁ、適当に説明しても納得してくれるから楽だよぉ」


いやいや、ちょっと待ってくれ。もう少し緊張感てきなものはないのか、一応僕の死んだはずの親友が生きてるという物凄く不可思議なことが起きてるのに、なんでそんな気楽なんだよ。


「あの…緊張感は持ってないんですか?」


僕が手を控えめにあげながら言った。


「いまだに敬語かよ…。つうか俺だけじゃね敬語つかわれてるの」

「携帯にぐらいなら敬語は使わないけど、本物の人だと…ね」


頬を膨らませながら和也はそっぽを向く。


「おっと、おでましのようだ」


和也は膨らませていた頬を元に戻し、真剣な表情になった。和也は部活中だといつもこの表情になる。


そして、和也の視線の先には釛がいた。無表情で。


「うわ、同い年ぐらいじゃん。やりにくー」


和也はそう言いながらも、真剣な表情は変えなかった。


「死刑【石打ち】」


釛がそう言った瞬間、和也は白い包帯にぐるぐるとミイラのように巻かれていた。落ちていた大小様々な石ころが浮かび上がり、一気に和也に向かってぶつかっていった。


「武器【鉄の短剣】!」


僕は右手に重さを感じると和也に向かって走り、白い包帯を切るがこの際しょうがないので、和也ごと切り裂いた。


「もっと優しく助けてくれよ」


助けてやったのに苛つくな。兎にも角にも逃げよう。釛は僕達を倒そうとしているのは分かるが、なぜ倒すのかが分からない。


僕は和也の右手を掴みながら走り出した。できれば女子の手を掴みながら走りたかったという考えは頭のすみに置いといて、できるだけ走ろうと思った。


「死刑【ギロチン】」


急に体が地面に吸い付くように、うつぶせになってしまう。


カチャ。


首元にギロチンが現れる。そのままギロチンの刃が落ちてくる。


「武器【電撃のランス】!」


前に見た【鉄のランス】に少し金色の装飾に、雷がバチバチとランスを帯びていた。


そのランスで僕の首に落ちてきたギロチンの刃もろとも壊す。


「これで貸し借りは無しだからな」


そう言って和也は笑う。


「あ、ありがとう」


僕も少し照れながら笑ってお礼を言った。


刹那、寒気が体全体を巡る。


「あ、がっ、お前」


釛が頭を右手でおさえながら苦しそうにする。しかし、あの無表情だった顔が歪み、僕達を睨む。恐怖を感じた。


「死刑【首吊り】」


僕と和也の首にいつのまにか、粗く結ばれたロープがあった。


「え」


一気に視界にうつるものが一変する。空中に浮いていて、重力が僕の首を絞める。


息ができない。

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