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なんで僕の思考を当てるんだよ

「ああ」と僕は花梨に聞こえるか聞こえないかぐらいの声で言った。


「奏太様は妹さんにさえ心配されてるんですね」


カンナが笑いながら言ってくるので、僕は返答せずに携帯をポケットにしまった。


しかし、まだ時間がある。今から行ったとしても高校についた時は八時前だろう。まぁいいか、久し振りの高校でもあるしな。


僕は足を高校のある方向へと向けた。花梨から貰ったアイスを口にくわえながら、ゆっくりと歩を進めていく。途中近所のおばちゃん的な人にすれ違うたび、これは良い話題だと言いたげそうな表情をおばちゃんはする。


「奏太様、高校に行かれるのは何日ぶりなんてすか?」

「たしか、十日とかそんぐらいだと思う」

「それじゃあ道が分かんないってことがあるんじゃないでしょうか?」

「あるわけない。これでも去年は普通に登校してたんだよ」

「あれ?そういや奏太様は高校何年生なんですか?」

「二年生。妹は一年生」

「妹さんのことはなにも言ってないのに、教えるって本当にシスコンですね」

「たまたまだ!」


はぁ、毎回カンナと話していると最後には負けてるような気がする。



∇▲∇▲∇



君を見てると


雪を連想する


今日も疲れただろう


おやすみ


ごめんな


守ってやれなくて



∇▲∇▲∇



「おーい、聞こえてっか」


さっきからカンナの返答がない。怒らせたわけでもないし、悲しんでるとは思えない。


一応僕はポケットから携帯をとりだし、電源をつける。


「うわっ、急にどうしたんですか?」


目を丸くして僕を見てくるが、表情的になんの変化もない。しかし、電源をつけたときカンナの目には涙が浮かんでいた。


「いや、なんでも。たまに反応しないときあるよな。それってバグとか?」

「私に限ってそれはありません!」


胸を張って言ってくる。プライドがとても高いということは分かった。


「それより、奏太様。もう高校が見えますよ」


ちらほらと登校してる生徒や、部活の朝練のかけ声が聞こえる。


「結構立派な高校じゃないですか」


私立清穂せいほ高校。新校舎で設備も最高と言えるほどではないが、充分にある。学力はそれほど高くないが部活の方を優先しており、全国大会に出場してる部活動も結構ある。しかし、来てる生徒は全員真面目ではなく髪を染めてる生徒やピアスをしてる生徒がいたりする。


「さぁさぁ、行きましょう」


高校を見てテンションがあがったのか、嬉しそうにカンナが僕を急かしてくる。


「分かってるよ」


僕は清穂高校の門を潜り抜けて、自分の教室へと向かう。


歩いてる途中で何人かの教師は振り向いてくるが話しかけられはしない。顔見知りの生徒は僕を見るたび顔を背けて、避けてくる。


「なんなんですか、あの人達は」


僕に対する教師や生徒の態度が気にくわなかったのかカンナが怒り気味で言った。


「気にすんな」


僕は少し暗い声でいってしまった。


「本当に友達が作れなかっただけで引き込もっていたんですか?」


僕は慌てて話を変えようとしてみるが、カンナが一歩も引かない。


「どうなんですか?奏太様」


僕は黙りこむことにした。


十分もすると、カンナもさすがに諦めてくれた。


そんなことをしている間に僕の教室に着いた。教室に入る前にロッカーに鞄をしまい、教室のドアの前に立つ。


別に緊張することではないのだが、深呼吸をしてドアを開ける。


教室には一人の女子が窓際の席で外を見ながら背中を伸ばしながら綺麗な姿勢で座っていた。朝の日差しがその女子の腰まである金髪を輝かせ、神々しいとも思える雰囲気を醸し出していた。


僕は見とれていたことが恥ずかしくなり、すぐに視線をそらした。その女子は振り返ると僕の顔を見て驚きもせず、氷のように冷たい表情を変えず、早々に僕の横を歩いて通り抜けた。


僕はその女子の名前、そして顔すらも見たときがなかった。僕が不登校になってる時に転校してきた生徒か?この時期に転校してくる人はいないと思うのだが、この世は今どうなってんだか分からない、アプリで殺し合いをする世の中なんだからな。


まぁ、あの女子は置いとくとして、教室に来たもののすることがない。そう言えば机がもしかしたら席替えとかで変わってしまったかもしれない。どっか適当に座ってたら、実はそこが女子の席だったりとかで、それから知り合いから始まり、付き合ったり―――


「大丈夫ですよ。そんなことは決してありません!あと、顔がキモいことになってます」


僕の思考をぶったぎる様にカンナが大きな声で言った。


「なんで僕の思考を当てるんだよ」

「顔を見れば変なことを考えてるか考えてないかぐらいは分かります」


おとなしく男子の席だと一発で分かるところにしよう。その机の脇にはリコーダーが掛かっており、リコーダーを入れてるケースの脇に書いてある名前は、雑に和也と書かれていた。もしかしたら和也っていう名前の人が他にいるとは思わないのだろうか。


「ここは和也さんの席ですね?」

「そうだよ」


僕はおとなしく席に座ってることにした。そういやここの席はあの女子が座っていた席の前だ。僕はあの女子と同じように外を眺めてみた。ここの教室は三階にあり、町の方を見ることができる。久し振りにこの風景を見た。暖かい日差しに当てられて僕はうとうとしてしまい、眠ってしまった。

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