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第1幕 3場 ボルマンの部屋

 第1幕 3場

 ボルマンが自室の机に座って書類をまとめているところに、ゲッベルスがノックをして入ってくる。


ゲッベルス「ボルマン君、草案が出来上がったよ」


ボルマン「わかりました。ではお見せ下さい」


 ボルマン、草案を受け取って読み始める。


ゲッベルス「戦車隊が活躍して進行が止まったことを強調して書いたよ。それとまだベルリンに残っている市民はこの機会にできるだけ早く避難するよう促す内容だ」


ボルマン「・・・ふむ、なるほど。まだ足りませんね」


ゲッベルス「なに?」


ボルマン「誇張が足りません。もっともっと大々的に、今回は勝利したということをアピールしなければ国民の士気は高まりません」


ゲッベルス「いや、勝利はしていないのではないのか、戦車部隊が一時的に進行を食い止めたに過ぎないのでは?」


ボルマン「たとえ一時的でも進行が止まっていることに変わりはありません。これは外からの情報を知らない国民をベルリン市街戦に勝利したと信じ込ませるための格好の材料になります」


ゲッベルス「しかしだな」


ボルマン「それでよいのです。ゲッベルス閣下、私の指示した通りに草案をすぐに書き直してください、ベルリン市街戦は勝利したと」 


ゲッベルス「勝ってもいない戦いを勝ったことにしろということか」


ボルマン「その通りでございます」


ゲッベルス「そんなことをしても状況は変わらない、きっとすぐにバレでしまうだろう」


ボルマン「バレたところで何という事はありません。敵は物量が多いのです、それを逆手にとって、戦車隊が突破されて再び進行が始まったら第二波を仕掛けられたということにしてしまえばよいのです」


ゲッベルス「ベルリン市民はどうするつもりだね、市街戦に勝ったという事を信じてこのままベルリンに留まれば確実に手遅れになってしまう、今なら避難できる者も無駄に命を落とすことになってしまうのだぞ、それでも良いというのかね君は」


ボルマン「避難指示を出せば市街戦はまだ続いているという事を国民全体に悟られてしまいます。それに首都を放棄して逃げろとなどいう指示を出すことは敵にナチスの弱体化を露呈するようなものです、みすみす敵の猛攻を呼び込むことにもなりかねません。第一、避難の指示を総統閣下はまだお出しになられてはおりません、総統閣下が避難せよとの指示を出さない限りは市民は避難することは許されないのですし、あなたがその指示を出すこともできないのです」


ゲッベルス「この期に及んで体裁を保つためにベルリン市民を見殺しにしろと言うのだな」


ボルマン「その通りでございますゲッベルス閣下」


 双方しばし沈黙。


ゲッベルス「・・・総統に、一度だけでもこの草案をお見せすることはできないだろうか」


ボルマン「できかねます」


ゲッベルス「ベルリン市民の命がかかっていてもか」


ボルマン「できかねます」


ゲッベルス「それをなぜ君が決めるのだね」


ボルマン「私が決めたのではありません。総統閣下は今お休みになられています、睡眠不足の総統閣下を如何なる理由があっても起こしてはならないというのは総統閣下ご自身が指示された事でございます。そしてその間の細事はわたくしに一任すると仰せつかっておりますゆえ、このたびの事は言うなれば広義の上で総統閣下のご決定ということになります」


ゲッベルス「そんな、いつからだ」


ボルマン「お答えいたしかねます。さあゲッベルス閣下、草案を今一度書き直していただけますか」


ゲッベルス「ボルマン君、きみは」


ボルマン「正午には発表の予定です。それまでに今一度お書き直しください」


ゲッベルス「・・・・・・・・・・・・・・・分かった」


 ゲッベルス去ろうとする。ボルマンは机についたまま別の書類に目を通しながら話す。


ボルマン「総統閣下のお部屋に行かれても無駄でございますよ、SSが護衛の任についております、お会いになることはできません」


 ゲッベルス振り向かずに無言で去る。



続く

 睡眠不足の~、というボルマンのセリフは実際にあったヒトラーの指示をもとにしています。

 

 この指示があったがために、かの有名なノルマンディー上陸作戦の対応を素早く決めることができませんでした。

 連合軍の上陸を許してしまった要因のひとつですね。


 だんだんと話が動いてきたような気がします。

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