無幻ランド物語
俺の父さんは浮気性だ。
まじ腐ってる、まじ死ね。
でもあんなクソジジィでも母様は愛してるらしい。
なら俺は息子として親父を止めよう。
その原因となる、ランド家の女を殺して。
「わーはっはっは!!今日は素晴らしい朝だな!!」
「そうですわね、あなた。」
「そうか?いつもとかわんねえけど。」
「そんなことないぞハウ゛ィンよ!!こんな日はむしょうにランドマニアの血が騒ぐ!!」
・・・・。腐れくそジジィ。
「・・・・。」
ほら、てめえのせいで母様も黙っちゃじゃねーか!!どうしてくれんだよこの野郎!!
「というわけで私はランドを追い求めてくる!しばらく帰らんからな!!」
「・・・・いってらっしゃい、あなた。」
親父、でていったな。よし、
「じゃあ母様、俺も出かけるよ。」
「ハウ゛ィンも?珍しいわね。休日に出かけるなんて。」
「酷いなぁ。俺だって育ちざかりなんだよ?じゃあね。」
母様には言えないよ。今日、人を殺してくるなんてね。
・・・・ここが、ランド家か。
思ったより普通の家だな。
さて・・・親父はいるのか?まあいてもいいか。
遭遇したらトンファーで殴って気絶させればいいだけの話だし。
ピンポーン
「はい。」
「あの、ええと、ちょっと出てきてもらっていいですか?」
「?分かりました。」
・・・・。ずいぶんと無用心なんだな。
普通名もあげない奴のいうとおりにでてこないだろう。
ガチャ
「あの、どういった用件でしょうか?」
「あんたランド家の人だよね?」
「はい、そうですが・・・。」
「殺しに来た。」
「そうですか。」
・・・・???え、ちょ、日本語分かりますか??
殺しに来たっていったんだよ??
なのになんなのその反応???
「え、あ、あの・・・驚かないのか??」
「何故?」
「・・・言葉分かるか?殺すって意味知ってる??」
「はい。殺されたら死ぬのでしょう?」
「・・・・・。」
やばい、どう反応したらいいのか分からなくなってきた。
これって殺っていいの??いいんだよね???
「あの、殺していいですか?」
「駄目です。」
・・・即答・・・。死にたいわけではないのか・・・。
「あの、とりあえず上がっていかれませんか?立ち殺しもなんですし。」
「・・・そうだね・・・。」
この人、本気でなに考えてんだか・・・。
のちに、この人が俺を家に上げた理由がわかることとなる。
「おねーちゃん!誰だったの・・・ってげぇ!!」
なんだそのげぇ!!は・・・。
「うん。殺しに来たって人よ。」
「ふ~ん。」
こんなガキでも・・・驚かないのか・・・。
どうなってるんだよこの家系は・・・。
「ねぇねぇ!あんたってなんてゆの?」
「・・・ハウ゛ィン。」
「ハウ゛ィンか。僕はミタビっ!!よろしくね!」
「殺すとかいった人によろしくなのか?」
「殺すなんてことば、一日に三千回は聞いてるよ~wだからおねーちゃんも僕もいちいち驚かないよ。」
・・・・なるほど、慣れってわけか。いや、そんなもの慣れていいものじゃないが・・・。
「私たち、何故か周りの人に嫌われやすいので。」
「そんだけ嫌われていてよく生きてるな・・・。」
いじめを受けている人でも三千回は聞かねーよ。というか殺すというより死ねの方が多いだろうし・・。
「あ、申し遅れました。私、ランド家の三女、ムウアと申します。」
「あ・・・ご丁寧にどうも・・・。」
なんか、調子狂うな・・・。
ただでさえ殺しなんて考えたの初めてなんだし・・・。
あ、そうだ。親父いるか聞いとかないと。
「なぁ。ここに変なおっさんが訪ねて来なかったか?」
「変なおっさん?さあ?おねーちゃん知ってる?」
「いえ・・・わかりません。」
え?まじで。おっかしーな。さっきこっちに向かったと思ってたけど・・・。
「ミズキねーなら知ってるかもね。」
「ミズキ?」
「はい。ランド家次女です。あの人は家の周りを常にみていますからもしかしたら知ってるかもしれません。」
「呼んで来てもらえないか?」
「はい。少々お待ちください。」
これで、親父がいるかわかるな。
ねーねハウ゛ィンはなんでおねーちゃんに殺すとかいったの?」
「いや、ムウアだけじゃなくこの家の人全員が対象となるわけだが・・・。」
「んじゃあ僕もー?」
「まあ・・・多分。」
「多分?」
「・・・・実は変なおっさんっていうのは俺の親父なんだ。そいつがランドマニアとかいって浮気をしているみたいでな・・・。」
「ようするに逆恨みだね。」
「まあ・・・そうなるな。」
正直、こんな子供に言う必要はなかった気がするが・・・。
「でもね、多分その人浮気してないよ。だって僕たちそれ見たことないもん。」
「なんだと!!?」
で、でも親父は確かに・・・
「お待たせしました。」
「君がハウ゛ィンとやらか。オリはミズキ。以後よろしく。」
「え・・・ああ・・・。」
にしても・・・この姉妹・・・似てねーな。
「それで、君がいってた変なおっさんだが、オリは一度も見たことないぞ。」
「!!?でも親父は確かになんどもこの家に向かってだぞ!!?そして入っていってた!!それを何度も見かけている!!ずっと家の周りを見ていたというあんたが見かけていないはずがない!!」
「なるほどな・・・。」
「ハウ゛ィンさん・・・・。」
「ハウ゛ィン・・・。悪いけど、それ全部違うよ。」
「!!?」
違う・・・!!?俺は幻を見ていたとでもいうのか・・・!!?
「違うのは君でもオリらでもない。世界が違うのだ。」
「世界・・・!!?ってか、あんた人の心を読んで・・・」
「あのね、ここの世界はふたつに分かれてるの。一つは無の世界。もうひとつは幻の世界。」
「このどちらも、あなたのいう現実とは当てはまらないのです。」
「しかし、たまにだがこの二つの世界の狭間に現実が現れる。そして、そこに現れたのがこの家なのだ。」
「!!じゃあ俺は・・・・。」
「ここの空間に飲み込まれたみたいだね。僕たちと同じように・・・。」
「飲み込まれた空間は現実ではなんの変化も起きてないからな。オリらも現実には存在しているかのように見えているのだろうよ。」
「やはり、そうだったのですね・・・。最初見たときから変だとは思っていたのです。ここに来る人間は少ないから・・・。」
「それで・・・俺をこの家に入れたと・・・?でも、親父はどうなったんだ?きっとこの家にいるはずなのに何故現れない?」
「それは・・・分からんな。だが、必ずこの世界にはいると思うぞ。」
「!?なんで・・・」
「この家の近くにいたなら家なら必ずこの世界に連れて込まれる。君が最後に見たときよりこっちに来た可能性だって十分にあるんだ。何故オリが見かけていないかだけは分からんがな・・・。」
「!そうか、ランドマニアだっていってたのは親父じゃなかったかもしれないんだな!」
「もしかしたら本物の親父さんはこの世界のこの家を求めているのかもしれんな。それが現実の抜け殻に影響している・・・と。」
「どゆこと?僕分からないよ??」
「ようするに、ハウ゛ィンさんのお父様はこの世界にいるかもしれないってことよ。そしてこの家を探しているの。」
「だとしたら・・・早く親父を探さねーとな。ずっとあのままだったら母様に迷惑かける。・・・・そういえば、ここから現実に帰る方法ってねーの?」
「今は分からん。が、姉さんがずっと部屋にこもってその方法を探しているからいずれは見つかるはずだ。」
「まだ、姉がいたのか・・・。まあいい。俺は親父を探しにいってくるよ。」
「待て待て。」
「・・・・なんだよ?」
「一人では危険だ。帰れなくなるぞ。行くならミタビと・・・一番下の弟、サライを連れて行け。」
「なんであえてのガキなの?」
「野生のカンが働きやすい。」
・・・・Oh, I see。
「サライはね、僕と双子なんだよ。呼んで来るね!」
「あ、ああ・・。」
「あ・・・ハウ゛ィンさん。おなか・・・空きませんか?」
「そういえば・・・ちょっと、空いたかな。」
「ではお昼を作りますね!少々お待ち下さい。」
「あ・・・ありがとう。」
「いえいえ。」
「・・・ふっ、しかし、よかったな。」
「なにが?」
「君はあんな可愛い子を殺さずに済んだ。」
「あ」
そういえば殺しに来てたんだっけ?すっかり忘れてた。
「君は能天気だな・・・。そのトンファー、出かける時は必ずもっていくのだぞ。外は危険がいっぱいだからな・・・。」
「え・・・?」
この世界ってそんなに恐ろしいとこなのか・・?ここにいる限りそんな想像つかないけど・・・・。
親父・・・大丈夫かぁ・・・。
「ちょ、放せよ!!」
「だーめだよ!!一緒に出かけるのー!!」
ああ・・・なんか上が騒がしいな・・・。
「なんでだよ!!なんでそんなみす知らずの奴のために僕がいかなきゃいけないんだ!!」
「サライだってこの家の一員なんだから文句いわないの!!」
「だーかーらーいかねーって・・・ぎゃああああああ!!!!!」
・・・・なんか、悲鳴聞こえたけど大丈夫なのか?
「問題ない。いつものことだ。」
・・・・それもどうよ。
「ハウ゛ィンー!!おまたせー!!サライ連れてきたよー!」
「いってなーこの乱暴おん・・・・あ・・・!」
・・・・なんだ、なんで俺を見つめてるんだ??
「・・・どうした?俺の顔になんか付いてる?」
「え・・・あ・・し、しょがねーからあんたに付き添ってやるよ!!」
「はぁ・・・・。」
なんで顔が真っ赤なのか分からんが。にしてもこの二人、さすが双子だけあって似てるな。
「それじゃあ行こうハウ゛ィン!」
「ちょっと待て。今ムウアが飯作ってくれてるからそれを食べてからいこう。」
「!!・・・・僕よりねーちゃんの方がいいのか・・・・。」
「んー?なんか言ったサライ?」
「なっ、なんにも言ってねーよばかぁ!!!」
「?」
サライって変わった奴だよなぁ・・・・。
「ふふっ、恋の季節なのさ。」
「鯉?鯉って食べられるの??」
「・・・・ミタビには早いみたいだねぇ~・・・。」
「えー!!なにそれひどい!!」
「別に僕は君の隣に座りたかったとかじゃ・・・。」
「ん?ああ、そう。」
・・・・やっぱり変わった奴。
「ご飯できましたよーーー!!!」
*
というわけで無の世界にやってきたわけなのだが・・・。
「・・・・・なんで、こんな暗いんだ?」
「無だからだろう?それぐらい想像つけよ!」
「サライ!!そんな言い方しないの!!」
「ふんっ!」
・・・・なんだこの空気。
「しっかし、本当に親父いるのかなぁ・・・・。」
「さぁね。人間自体いることが少ないからねー。」
「・・・・確かに、な。」
見たところ、周りには魔物みたいなものしかいない。襲ってくるのがいないだけまだマシといったところか。
「・・・・だから、僕は行きたくなかったのに・・・。」
「すまないな。でも絶対お前らを危険な目には合わせないから。」
「!!なっ・・・なっ!!」
「んー?どうしたのサライ?顔真っ赤だよ?」
「なっ、なんでもねーよ!!!!」
「具合でも悪いのか?なんならもう帰ろうか?」
「そっ、そんなんじゃない!!だっ、大丈夫だっ!!」
・・・・。なんなんだろう?
「そういえばハーウ゛ィンの武器ってなんでトンファーなの?」
「なんでって言われてもなぁ・・・物心ついた時からずっとこれを持ってたとしかいえないな。親父の話だと小さいときにこれを店で見つけてからずっと手離なくってしょうがなく買ったとか言ってたけど・・・」
「ふーん、お気に入りの品なんだ。ハーウ゛ィンって変わってるよね。」
「そうかぁ?俺的にはお前の弟の方が変わってると思うぞ。」
「ぼっ、僕は!!べっ別に変わってなんかないっ!!あんたが悪いんだよっ!!」
「サライが変わってるのは認めるけどね。でも、普段はこんなんじゃないんだよ?ハーウ゛ィンに会ってから急にこうなったの。だからきっとハーウ゛ィンが変わってるんだよ。」
・・・・俺のせいなのか?
「べっ、別にあんたのせいだとか・・・・あんたのことがす・・・ってわけじゃねーよ!!!!」
??よく聞き取れなかったんだが?
「・・・!・・・なにか、こっちに来るよ。」
「!!」
ついに、来やがったか。
「ううぅ・・・ぼっ、僕は怖いとかじゃ・・・」
「大丈夫だ、ちゃんとお前らは守るから。」
俺はトンファーを構える。
「ぐるるる・・・」
・・・なかなか近づいてこないな・・・。んいや・・・
「ぐぎゃああああああああ!!!!!」
来た!!
「はぁぁぁぁぁ!!!」
俺は力いっぱいトンファーを振り上げる。
「ぐあああああああああ!!!!!」
どうやら敵に命中したようだ。奴はその場でうずくまっている。
「よし、今のうちに帰ろう!」
「さ・・・探さなくていいのか?」
「今日のところは引き上げた方がいいだろう。親父はまたあした以降に探す。」
「じゃあ僕についてきて!ちゃんと帰り道は覚えてるから!!」
「ああ、頼む!」
*
「やあ、おかえり。どうやら収穫の方はなかったようだね。」
「あ、ああ・・・・。」
「無にはいないかもしれないねー。」
「なら、明日は幻の方を探すか・・・。」
そっちにもいないかもしれないが・・・。
「あなたはそんな闇雲に探すおつもりかしら?」
「・・・見かけない顔だな。あんたが長女か?」
「ほーほほほ!!残念、あたくしは次男のカレオですわ。」
「そうかよろし・・・って男!!?」
「あら、失礼ね。男で悪いかしら?」
「え・・・いやその・・・。」
見た目も口調もどうみたって男には見えない。女装という違和感もなく、ナチュラルな美しい女性にしか俺には見えない。
「兄さん、いい歳してその格好はやめなよ。」
「あら?美しさに年齢は関係なくってよミズキ。」
「ごめんなさい、カレオ兄さんは変わった人なの。気にしないでくださいね。」
「むしろお前ら兄妹にまともな奴っていたのか?」
「ぼっ、僕はまともだぞっ!!」
・・・・まあ、ムウアはわりとまともかもしれんが・・・。
「えー?サライはともかく、僕はまともだよー?」
「失礼だなハーウ゛ィン。オリだってまともな方だ。」
「あら、あたくしだってこの美貌を除けば十分にまともですわよ?」
・・・・。変な人に限ってこういうこというからな~・・・・。
「あ、あの!そろそろお夕食にしませんか?」
「ああ、そうだな。頼む。」
「はい!」
「・・・・むっ、なんだよねーちゃんばっかり・・・・。」
「?どうしたのサライ?ごはん一緒に作る?」
「・・・・作る。ねーちゃんには負けないもん。」
「へぇ~サライが自分から作るっていうなんて珍しいねー」
「ぼっ、僕はお前とは違うんだよっ!!」
「・・・どーせ、僕は料理下手だよー・・・。」
・・・・。本当に、ここって賑やかな家族だよなー・・・。
「そうでもないぞ。オリらには親というものがいないからな。」
「・・・また心を・・・。でも、親がいなくたってこんなに兄妹がいたら寂しくなんてないだろ?」
「・・・・どうだろうな。」
・・・どうだろうなって・・・自分達のことだろ?
「あたくし達がこうやって集まってるのはこの世界に来てからですからね。現実ではみんなバラバラでしたわよ?」
「そう・・・なのか?」
「ええ。」
じゃあ・・・・もし元の現実に戻れるようになったら・・・ここの家族は・・・・。
「入らぬ心配は無用だ。だが、現実に帰ったらムウアだけでも気にかけてくれたら嬉しい。あの子が一番寂しかっただろうからな。」
「・・・・帰れたら、考えておくよ。」
「・・・ありがたい。」
「ねえねえ!何の話してるの?」
「ほーほほほ、お子様にはまだ早いですわ!」
「えーなにそれひどいよー!!僕も混ぜてよーー!!」
「ははっ。」
俺は・・・とにかく一刻も早く親父を見つけないとな。
昨日、夕食を終えたあと、ムウアに案内された空き部屋で寝た。
そこは何もなくて素朴なものだった。
はずだった。
なのになんだ・・・これは・・・・。
「うーん・・・なんじゃ・・・もう朝なのか・・・。」
「なんだかじゃない。お前誰だ。」
朝、目が覚めると横に見知らぬ女性が眠っていた。
年は俺と同じくらいだと思うが・・・・ってそんなことはどうでもよくて!!
「わしか?ローエンじゃよ。ここの長女じゃ。」
「お前が・・・!?どうみたって俺と変わらねーじゃねーか!!」
「むぅ・・・失礼な餓鬼じゃのう・・・。わしはこれでもお主の10倍は生きておるぞ?」
「ちょいまて、それは俺を何歳だとしての計算だ?というか早くどけろ。そしてあの悪趣味な壁紙を外せ。」
そう、この部屋には昨日までにはなかったはずの変な機械じみた壁紙やロボットらしきものが置かれていた。昨日と変わらないのは俺(とこいつ)が寝ていたベットだけだった。
「いちいち文句の多い餓鬼じゃな・・・。」
「だいたい、なんで俺の部屋で寝てんだよ?自分の部屋があるだろう?」
「ああ、あれか。あんなところじゃ、寝るどころか居ることさえ無理じゃな。神経が腐るわ。」
・・・・一体どんな部屋なのだろう。
「じゃあせめて他の姉妹の部屋にいけよ。」
「ふん、あんなやつらなぞ、顔を合わせるだけでも嫌じゃわ。ましてやそんなやつらの部屋にいって寝るなぞ、言語道断じゃ!!」
「・・・俺だったらいいのかよ?」
「血縁じゃないのなら、大丈夫じゃ。」
・・・・何でそんなに自分の兄妹が嫌いなのだろう?
「というわけで、元の世界に帰る方法が見つかるまでここに住ませてもらうからの。他の奴らには内緒じゃぞ?」
「別に・・・俺は居候だから文句を言える立場じゃねぇけどよ・・・。・・・一緒に、寝るのか?」
「しかたあるまい?」
まじかよ・・・・。俺これでも一応思春期の男子なんだけど??
「して、お主の名は?」
「・・・・・・ハーウ゛ィン。」
できれば・・・今日中に親父を見つけたいな。
「おはよーハーウ゛ィン!昨日はよく寝れた?」
「ああ、まあ・・・。」
昨日は、な。今日は無理かもしれん。
「大丈夫ですか?顔色が悪いようですが・・・」
「あ、うん。大丈夫。平気だ。」
「体調が悪いなら今日は行くのやめるか?」
「い、いや行く。是が非でも行く!!」
「そ・・・そうか・・・。」
ミズキがやたらと困った顔をしているがそんなことしったことじゃない。
「あ、そういえばミズキって何歳なんだ?」
みたところ俺より年上に見えるがローエンが姉だというのだから本当は年下なのかも知れない。
「急になんなんだ?オリは25歳だが。」
・・・やっぱり年上なんだよな。
「なあ・・・あんたらの長女って何歳なの?」
「姉さん?さあねぇ。多分かなり年なんじゃないか?」
・・・・本当に何歳なんだよ・・・。
「長女と長男はあたくし達とかなり年が離れてますからねぇ~。ちなみにあたくし29歳。」
「うわぁ!!カレオさんいつの間に・・・。」
「まあ、失礼ですわね。今日はあたくしも一緒に同行することになってますから降りてきましたのよ?」
「え・・・カレオさんも行くのか?」
「兄さんはこれでもトレジャーハンターだからね。きっと役に立つと思うよ。」
「闇雲に探していたら見つかるものも見つかりませんわ!」
「あ・・・ありがとうございます・・・。」
「もっ・・・もちろん僕もいくからな!!しょうがなく!!」
「僕もいっくよー!」
「あ、ああ。二人ともありがとうな。」
そういって二人の頭を撫でてやった。
「あ・・ああ・・・うあ・・・!!?」
「え、どうした!?」
サライが突然顔を真っ赤にしながら泣き出した。
「あ・・・・ぅ・・・」
「どうしたんだ!?頭撫でられるのそんなに嫌だったのか!!?」
「あ・・・・ああああああ!!!!!!なっ、なんでもない!!なんでもないからな!!!!ほんっとになんでもねーから!!あんたに撫でて貰って嬉しかったとか、全然そんなんじゃないから!!!!」
どうやら我に返ったらしい。よかった・・・。
(ハっ、ハーウ゛ィンにななな、撫でてもらった!!撫でて・・・ああええあああ!????)
「んー?そんなに撫でて貰うの好きだったのサライって?なら僕も撫でてあげようか?」
「おっ、お前のはいらねえよっ!!」
「えー!!なにそれさべつ!?」
「ま、まーとりあえず二人とも落ち着けよ・・・・」
にしても・・・さっきのサライの取り乱しようはなんだったのだろう?
「ふっ、恋だな。」
「面白くありませんわねー。男同士のなにがいいのかしら?」
後ろでミズキとカレオさんが何か言ったが俺には聞こえなかった。
というわけで幻の世界にやってきたわけだが・・・。
「・・・不思議の国ですか、ここ・・」
「まあ、それと対して変わりませんわねー」
「お菓子とかはまったくないけどねー。」
「・・・・・親父、本当にいるのかなぁ・・・。」
そういえばカレオさん、どうやって探すつもりなんだろう?
「ほーほほほ!!!探し物とあらば、あたくしに不可能はありませんわ!!」
「といってもカレオ兄は人探し初めてじゃないか・・・本当に大丈夫なのか?」
「失礼ですわねサライ。あたくしを誰だと思って?」
「・・・・(自称の)トレジャーハンター・・・。」
「その通りですわ!!ですから全てあたくしに任せなさいな。・・・で、探し物はどんな容姿かしら?」
「えっ、あ、右目眼帯してて・・・俺を同じ茶髪のぼさぼさ頭で濃い髭面のおっさんだよ。」
これでわかるのか、ものすごく不安だけど。
「わかりましたわ。では目を閉じてくださいな。」
「あ、うん・・・。」
目を閉じると、そこには懐かしい風景が広がっていた。
若い頃の母、父。
そしてその傍らに亡くなった妹が・・・・
「はっ!!」
「あ!よかった!!気が付いたんだね!!」
「ったく心配させんなよ!!ぼっ、僕はしてないけど!!」
「びっくりしましたわ急に倒れるのですもの・・・」
「ミタビ・・・サライ・・・カレオさん・・・俺・・・なんで・・・。」
なんで倒れたのだろう・・・何か温かいものに触れた気がして・・それで・・・
「それはそうと、探し物の場所がわかりましたわよ。」
「本当か!!」
「ええ、ですがあれはあたくし達では触れるどころか、近づくことすら無理ですわ。ですから、今日のところは引き上げましょう。」
「!!?なんでだよ!?場所がわかったんだろ!?だったら今すぐにでも・・・」
「ですから近づけないといったでしょう。」
「どういうことだ・・・?」
「それはミズキ姉が詳しいはずだよ。とにかく僕たちじゃどうにもできないから家に戻ろう」
「でも・・・」
「このままここにいたって、さっきみたいに倒れるだけだぜ・・・。おまけに魔物もよってくる・・。」
「・・・ちっ、わかった、帰ろう・・・。」
このまま・・・親父が見つけられなかったら・・・いや、いまはまずミズキに詳しい話を聞くのが優先だ。
「なんだって?あんなところにいたのか!?」
「ええ。あたくしもびっくりですわ。」
「なあ・・・その親父がいるってところにはなんで俺達はいけないんだ?」
「ああ、君は知らなかったな。あそこにいった人間は必ず死ぬか、魔物に変えられるか、なのだ・・・」
「なんだって!?じゃあ親父は・・・」
「それは大丈夫。魔物にはなってるが、この世界から出るときは元に戻れるはずだから。しかし、こっちからは助けられない・・・。どうしたらいいものか・・・。」
「何か方法はないのか!?」
「・・・ある。だが、切り札となる人間が今この家にいない。」
「・・・それは・・・長男か?」
「そうだ。あの人は唯一あの場所に影響を受けずに入れる。何故かは知らんが・・・。だが、放浪癖のある人だからな。今どこにいるのかまったくわからん。」
「このあたくしでさえも見つけられませんわ。」
「そんな・・・」
「・・・方法なら、あります。」
「ムウア!?」
「あの人は・・・猫が好きですから猫を飼えば、よってきます。」
「・・・あのさ、ムウア?」
「はい?」
「その、猫はどっからとってくるんだ?」
「・・・・・・・・・・。」
・・・この子も、けっこう抜けてるなー・・・・
「・・・・。だ、誰かが・・・猫の格好すれば・・・」
・・・・そんなんで本当に大丈夫なのか?
「でもやってみる価値はありそうだね!面白そうだし、僕とサライでやってみるよっ!!」
「なっ、なんで僕まで!!?」
「いいじゃん、付き合いなよ!!」
「だっ、誰がそんなこと・・・!!」
「サライ、気持ちはわかるがやってくれないか?頼む!この通り!!」
「!!!なっ・・・しっ仕方ないからやってやるよ!!別に、お前のためとかじゃないからな!!」
「ああ!サンキュー!!」
「~~~~~~!!!」
「あはは!一回こすぷれっていうの、サライとやってみたかったんだよねー♪」
「・・・僕は、出来ればやりたくなかったよ・・・・」
・・・サライって変な奴だけど、いい奴だよなー
「よし!こんな感じかにゃ?」
「なんで僕がこんなこと・・・・」
「二人とも、なかなか様になってるじゃないか。」
「可愛いね、二人とも。」
確かに可愛い・・・。
「さーて、本当にこれで来るかしら?」
「多分無理だとは思うが・・・・。」
だって、人間なんだし・・・。
「あーーーーーーーーー!!!!愛らしい猫ちゃん発見ーーーーーーー!!!!!!」
ってくんのかよ!!!?
「まさか、こんなアホがオリ達の兄だとは思わんかった。」
「・・・・・。」
「兄様、眼はありまして?」
「ん?ここは家かね?って、猫ちゃんかと思えばミタビとサライじゃないか!!くそっ騙された・・・!!ああでもこれもなかなかイイ・・・ハァハァ」
「きっもっ!!!!こっち来るなよ!!」
「僕とサライに近寄るなよーーーー!!!!」
・・・・・なんだ、あの変態・・・。
バンッ!
「なんじゃと!?バカ兄者が帰ってきおったのか!!?」
「ってローエン!!?」
ずっと部屋に引き篭もってたんじゃなかったのかよ!?ってかなんで帰ってきたの分かったんだ!?
「げぇ!!」
「げぇ!!じゃなかろう!!どこにいっておったのじゃ!!」
「いや~あの~そのー・・・・。」
ん?ローエンって家族嫌いじゃなかったのか?それとも兄は別とか?
俺はこっそり隣のミズキに聞いた。
「・・・なぁ、ミズキ。」
「なんだ?」
「あの二人って、仲いいのか?」
「悪いな。」
んなあっさり・・・。
「姉さんは兄さんのことものすごく憎んでるし兄さんは姉さんのことを恐れてる。そんな関係だ。」
・・・・止める気はないのかあんたらは・・・。
「だいだい貴殿は長男としての自覚がないのじゃ!!だからわしがこんなクソ餓鬼どもの面倒を見るはめになったのじゃぞ!!どう責任とってくれるのじゃ!!?」
「いや~そもそもオレがふらふらするようになったのはローエンのせい・・・」
「うるさい!!言い訳は無用じゃ!!!」
「それぐらいにしてやってくれないか姉さん?それには用があるのでね。」
あ、やっと止めた。
「なんじゃ貴様!?邪魔立てする気か!!?」
うわ~すごい殺気・・・今にもミズキを殺しそうな勢いだな・・・
「そんなケンカ、現実に戻ってからでもできるでしょう。今は一刻を争いますわ。」
「兄さんにやってもらいたいことがあるのだよ。」
「オレに?力仕事ならローエンに任せた方がいいんじゃないのかい?」
「いや、あんたにしか出来ないらしいんだよ。」
「おや、君は?」
「俺はハーウ゛ィン。実は俺の親父を見つけて欲しいんだ。」
「ハーウ゛ィンの父親はどうやらあのグレン氷山にいるみたいですの。あたくし達ではいけませんですけど・・・あなたなら可能でしょう?」
「うーん・・・確かに可能だが・・・・しかし・・・。」
「いかないのじゃったら貴殿をこの場で引き裂く・・・」
「すいません行きます行かせて頂きます!!」
「ローエン・・・。」
「・・・お主には世話になるからの・・・その前払いじゃ。」
「そっか。ありがとうな!」
・・・・ん?世話になる?未来形??
「なっ、何いってんだよローエン姉!!?」
「ふん、餓鬼には言うまいよ。わしは現実に帰って、ハーウ゛ィンの世話になるのじゃ。」
「なっ!!?なっ、何言ってんだ!!ハーウ゛ィンとローエン姉とはだいぶ歳が離れてるじゃないか!!」
「ふん、わしらの間に歳なぞ関係ないわ。第一男の貴様が口だすことじゃないだろう。それとも・・・まさか、惚れたのか?」
「ちっ、ちがっ・・・!!」
「ならば、関係なかろう?」
「関係ある!!おおありだ!!!!」
「サライー?何ローエン姉に対してムキになってんのさー?ハーウ゛ィンに関係あることー?」
は?俺??
「お前はややこしいから入ってくるなっ!!」
「えー何それひどーい!!」
「にしても・・・ミタビもそうだが君もけっこう鈍感だな。」
「は?なんかいったかミズキ?」
「いや、なんでもない。」
・・・・俺、なんかしたのか?
「・・・あの、」
「・・・ん?どうしたムウア?」
「ハーウ゛ィンさんは・・・好きな子っていますか?」
え、なに唐突に??
「い、いやいないけど・・・。」
「そうですか・・・。」
「ムウア・・・・。まさか・・・」
「ううん。違うよ。違うから・・・私は大丈夫だから・・・。」
「・・・あまり無理するなよ。そんなに気をつかわなくていいから。」
「・・・うん。」
「・・・どういうことだ?」
「・・・君には・・・関係ないよ・・・。」
ミズキまで・・・一体なんなんだよ?
翌日、あの長男さんが白いうさぎみたいな生き物を持って帰ってきた。
「ハァハァ・・・こ、これでいいのかい?」
「間違いないですわ。お疲れ様ですわ!」
「お・・・男に微笑まれても嬉しくない・・・。」
「殴りますわよ?」
「なんならわしの砲撃もついでに受けるがいいぞよ?」
「すいませんすいません・・・・」
「そういえばあんたの名前ってなんていうんだ?」
「ああ・・・俺はク」
「クソゴミじゃよ。」
「ええ!?」
「違うから・・・俺はクレーウィッチだよ。」
「ああ・・・びっくりした・・・。」
「お願いだからローエンのは信じないでね・・・」
「なんじゃ?わしは間違ったことはいっておらぬぞ?」
「・・・・・。」
「・・・にしても、これが本当にあの親父なのか?」
なんかモフモフしていて正直可愛いんだけど・・・
「うん。人間の気配残ってるのこれだけだし、カレオが間違いないって言ってるからね。」
「・・・・元の世界に戻ったらこれ、元に戻るんだよな?」
「え・・・あ・・・多分。」
「別に戻らなくても問題ないんじゃないか?オリはこのままの方がいいと思うぞ」
「いやいや・・・。そういう問題じゃないから・・・」
俺もこっちの方がいいとは思うがよ・・・・。でもダメだろ。
「さてと、あとはわしの仕事のみじゃな。首を洗ってまってるがいいぞよ。」
「・・・それ、使い方絶対間違ってるだろ・・・・。」
ってもういないし。
「キュィ?」
「にしてもこれ可愛いね~~~~!」
「さっ、触っても・・・いいのか?」
「キュ?キュッキュッ??」
あーミタビとサライはやっぱりこういうの好きなんだな。
「そういえばこれって言葉理解できるのか??」
「魔物風情にそんな知能があると思いまして?」
ですよねーよかったぁーーー。
「ねぇねぇハーウ゛ィン、これに名前つけていい??」
「・・・いやぁ・・・すでに名前あるんだけど・・・。」
「え~~~~元の名前なんて絶対可愛くないからやだぁ~~僕がつけたい~~~!!」
可愛くないのは確定なのかよ。いや実際可愛くないけどな。
「じゃあ好きにしろよ。知能もないみたいだし。」
「やったぁ!!うーん・・・じゃあキュックなんてどう?」
「キュィ??・・・キュック!!」
「うわしゃべった!!?」
「あれ・・・本当に理解してない・・・よな?」
「・・・・私が知るか。」
えっ、あ、ちょ、ミズキさんそれあまりにも無責任じゃないですか!!?
「キュックはごはん食べれるのかな・・・。」
「ムウア、一応元人間だから食べれると思いますわよ。」
「本当!?じゃあ今日からこの子のごはんもつくらなきゃ!!」
「オレのも忘れないでね~~~~。」
「え・・・あ、はい・・・・。」
「・・・ムウアちゃん、なんでそんな忘れてたみたいするのさ・・・。」
「ご・・・ごめんなさい。」
「ムウアは悪くない。忘れられる兄さんが悪い。」
「ミズキと同じくそう思いますわ。」
「ってか君はきもいんだよ。ネコのめしでも食べとけよ!」
「いっそでていけ!!」
「・・・・・・ううっ、オレ長男なのになんでこんな扱い・・・・」
「・・・・・。」
果てしなく同情します。クレーウィッチさん。
こうして数日が過ぎ、ようやく帰る方法がわかったという。
「さてと、準備はよいかの?」
「まったくもってダメです。」
「姉さん、いくらなんでもいまのはいきなりすぎだ。」
「なんじゃ、おぬしらは帰りたくないのかえ?」
「いや、帰りたいですよ?帰りたいけど少しぐらい待ってくれよ…。」
というかどうしたらそういう解釈ができるんだ…。
「ハーウ゛ィン…お主がそういうならしかないの。少しだけじゃぞ。」
「ああ、わかった。」
「やっと、帰れるのか?」
「ああそうらしいぜ。だからサライ、お前も早く仕度しろよ。」
「…帰っても、また会えるよな?」
「ああ。いくらでも会える。」
「…そうか。…あ、いやっ、別に会いたいとかじゃないからなっ!」
「はいはい。」
サライは言いたいこと言えたらしく、さっさと仕度をしにいった。
「そういえば、ミズキは仕度しなくていいのか?」
「オリは別に必要ない。ハーウ゛ィンこそどうなんだ?」
「俺はトンファーくらいしかもとより持ってきてないからな。」
「そうか。」
・・・ミズキは何も…持ってきてなかったのかな…?
「ハーウ゛ィンー!僕は仕度できたよーーー!」
「ぼっ、僕もだ。」
「お前ら…荷物それだけでいいのか?」
「さすがに全部は持っていけないよ。大切なものだけだったらこれで充分さ。」
「そうか…。」
「あたくしもできましたわよ!」
「…カレオさん…。なんですか、ソレ?」
妙にピカピカしている箱なんだけど…。
「あたくしの宝物ですわ♪」
「そうですか…。」
何が入ってるか若干気になるな…。
「わ、私も出来ました…」
「うわっ!?ムウア!!?なんだその荷物!!?」
「ムウア、いっとくがそんなにはもっていけないぞ」
「え…あ…でも…」
「日常製品はあとからでも買えますから本当に大切なものだけ持っていきなさいな。」
「え…あ…じゃあない…。」
「え?無いの?」
「はい…。私、ずっと一人で家事をやっていましたので。」
一人で…
…帰ったら、ムウアに何か買ってあげよう。それが大切なものにならないかもしれないけど。
「ムウア、」
「はい?」
「一人じゃないから。」
「…え?」
「俺が、元の世界に戻っても必ず会いに行くから。お前ら家族がまたバラバラになっても一人にはさせないから。」
「ハーヴィンさん…。…ありがとうございます。」
そういってムウアははにかみながら微笑んでくれた。
「…では、準備は終わったのじゃな?」
「え?待てよ、クレーウィッチさんは?」
「オレはここだよ。」
振り向くといつの間にか後ろにクレーウィッチが立っていた。
「うわあああ!!?いつの間に!?」
「ずっといたんだけどね…。」
「どうやらこやつの持つエネルギーが帰るためのキーになっとったらしくての。だからずっとこやつに手伝わさせてやったのじゃ。」
「みんなが帰れる状態になったのならオレはエネルギー放出機に入るけどいいよね?」
「ああいいけど…ってそれってクレーウィッチさんは帰れるのか?」
というよりそれって下手したら死ぬんじゃ…。
「あー大丈夫。みんなと一緒には無理だけどオレだけならいつでも帰れるから。げんに今までだってここと現実を行き来していたからね。」
「えええええええ!!!?」
「初耳だぞ兄さん!?」
「なんだよー変態のくせにキーキャラって!!」
「ますますうざー!!」
「兄さん…。」
「兄さんが見つけれられなかったのはそういうわけでしたのね…。」
「まったく…お主はいっつも大事なことを伝えないのじゃからな。帰ったら百億潰しの刑じゃ。」
「ははは…(帰らないでおこうかなー…)じゃ、いってくるよ。」
「お主らは目をつぶって帰りたい場所を想像するのじゃ。」
俺らは、いっせいに目をつぶった。
帰りたい場所はきっとみなそれぞれだっただろう。
俺は自分の家を想像した。
優しい母様。大好きな母様。
俺が望んでいた懐かしい光景。
だけど、その先に映ったのは…
笑顔で俺の名を呼んだムウアの姿だった
「うーん…。ここは…?」
目が覚めると、俺は見慣れないところにいた。
てっきりそのまま家に帰れると思ったのだがそうじゃなかったらしい。
それともここが現実じゃないか…。
「…それだけは勘弁して欲しいな…。」
「んあ?どこだーここ?」
どうやら親父も元に戻って目が覚めたらしい。
「あ、親父。」
「なんだハーヴィンじゃねーか。俺らはなんでこんなとこにいんだ?」
「さあ。親父は何も覚えてないか?」
「何をだ?」
どうやら覚えてないらしい。ということはここが現実なのは間違いなさそうだ。
「しっかし…家がわかんないんじゃどうしょうもないな…」
「何しているんだ君は。」
「え?ああ!!」
振り向くとミズキが呆れ顔で立っていた。
「ミズキ!!よかった、ここ、どこだかわかるか!?」
「ん?君は分からないのか?オリの仕事場だよ。」
んなもんわかるかっつーの。
「なんだなんだ?このキレーなねーちゃん、お前の知り合いかぁ?」
「ああうん、まあ、そう。」
「…家が分からないならオリが案内してやってもよいが…。」
「本当か!?じゃ、頼む!」
ということでミズキに家まで送ってもらうことにした(なんで俺らの家知ってるのか分からんが…)
ちなみにミズキの仕事は劇団エキストラらしい。どうりであんな変な格好してたわけだ。
「変とは、女性に対して失礼だぞ。」
…だから心読むなって…
「着いたぞ。」
「ああ、ありがとう。」
「何、礼には及ばんよ。…まあ、そちらも落ち着いたら、うちにまた来てくれ。ではな。」
「ああ。またな。」
ミズキは振り向かず、手だけ振って帰っていった。
「お前、あの子とどういう関係なんだ?」
「…親父には関係ない。」
言ったら絶対にややこしくなる。
「そういうことにしといてやるか。それよりさっさと家に入ろうぜ」
「元よりそのつもりだよ。」
そして、俺たちは久しぶりの我が家に入る。
「ただいま母様!」
「あらお帰り、珍しいわね二人そろって帰ってくるなんて」
「たまたまそこで打ち合ってな」
…そこ、嘘つく必要があるのだろうか。
といっても親父は事実を知らないわけだしあながちそれも嘘でもないか。
「お夕食できてますよ。」
「わかった。でも先に着替えてくるね。」
「さっさとしろよーせっかくの母さんの飯がさめちまうぜー」
…あんたは着替えないのかよ。
その日は飯を食べて、風呂に入って、そして寝た。
ごく普通の生活。それがあまりにも新鮮だった。
親父も母様となかよくしているみたいでよかった。
…明日にでもムウアに会いに行こう。
いやその前に何かプレゼント買いに行くべきか。
そんなことを考えているうちに俺は眠りについた…
今日は色んなことがあった。
でも結果的にはいい思い出になったのかもしれない。
元々人見知りだった俺にあんなにも友達ができたのだから。
あいつらは変わったやつらだけど悪いやつらじゃない。
多分、あの家にいけば楽しくやっていることであろう。
その中に俺はまた入っていきたい。
それが、俺にとって一番楽しいことのようだから。
そして、俺は…ムウアのことが…
いや、この感情はそういうものじゃなくて…
子供の俺にはまだまだ早いのかもしれない。
ー無幻ランド物語、これにておしまいー
そういえばクレーウィッチさん、あのあとちゃんと帰れたのかな…?
「…ああ、なんか…帰れる気がしない…。ローエン多分怒って待ってるだろうし…ハーヴィンくん家に勝手に住ませてもらおうかな…」
きっと明日も何か面倒事が起きる。