短気は被害甚大・・・取捨選択は正確に
※原作リスペクト作品です
※残虐・性的描写なし/対象年齢15歳以上推奨
※本小説の設定やキャラクターイメージはこちらから
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死神博士にはちょっと悪い事したな~...
と、少しだけ後悔しているけど、捕まったら進まないので、ここは心を鬼にして前に進む。
このゲーム、かなり難しいわね。
いまだにゲームの目標がわからない。
やっぱり、最初の部屋の先に行かないとダメなんじゃないかと思うわよね。
それにしても、脇道のクエストも半端じゃないクオリティーね。
中身は意味不明だけど。
と、思っていたら広場に出たわね。
鏡の裏に見えた広場は確かにこれぐらいの距離だったと思うから、目的地はここで間違いないはず。
見ると広場に家が一軒。
それも、ドールハウスのような家が見える。
どういう事?
ここの人たちは基本小さい人たちなの?
妖精?
いや、違うわよね?だって、みんな性格良くないし...
悪い人じゃないんだけど、みんな性格良くないわよね。
そういや、妖精は悪戯好きって聞いたことがあるわ。
じゃあ、ここの人たちは妖精なのかしら?
う~ん...悪戯好きというよりも、普通に性格が良くないだけだから、妖精では無いわね。
妖魔よ!妖魔!
そういう事にしときましょう。
じゃないとこっちが持たないわ。
そんな事よりも、目の前のドールハウス。
絶対人が居るわよね?
てか、居てくれないと困るのよ。
アイテムボックスには赤いキャンディーと青いキャンディーが5つずつ。
だから、5回は大きくなったり小さくなったり出来る。
私はここまでかなり苦労したのよ。
だから、私はこのゲームを攻略したい。
そして、目の前にはヒントがあるかも知れないドールハウス!
しゃ~ないなぁ~...
私はアイテムボックスから青いキャンディーを一つ取り出し、口に放り込む。
『ぴろりろりん』
いつもの効果音セリフが鳴り、私のアバターが小さくなる。
そういや、この効果音セリフって、どこから鳴ってるのかしら?
世界の声?
とにかく、ドールハウスにぴったりの大きさになったので近づいてみる。
死神博士の作ったキャンディーはちゃんと配合が完了しているみたいね。
それにしても、いやぁ~、なんか、めっちゃ綺麗なドールハウスね。
ちょっとした貴族のお屋敷みたいな感じが良い。
どうかお願いします。
妖魔ではなく、妖精さんがいますように...
「だぁ~!!ご勘弁ください!!」
バン!と扉が乱暴に開き、中から白い妖精...ではない、白いつなぎ服のお兄さんという妖魔が出てきました。
「わらわの言う事が聞けないというのは何故です!?わらわは世界で一番美しい社長令嬢にしてあなたの上司ですよ?」
お屋敷の中から、とても綺麗な声が聞こえてくる。
言葉は綺麗ではないけど。
それにしてもお兄さん。また会いましたね。
会いたくなかったけど。
お屋敷から出てきた白いお兄さんは、私を見つける。
あ、めっちゃ良い笑顔。
前髪で目が隠れているから分からんけど。
「あ~!キミキミキミ!!あとはよろしく!!」
そういうとお兄さんはどっかに行っちゃいました。
完全に人の話を聞く気がないのね...
死神博士と別れてからここまで、私は一切しゃべってません。
どんなゲームなのよ...
「そなたは何者ぞ?」
扉から真っ赤なドレスを着た女性が現れた。
いや、めっちゃ綺麗な人。
まだ顔が影になってて見えないけど。
「あ、私は通りすがりのものです」
おもわず「あっし」って言いそうになった。
ダメよ。私はちゃんと普通の女子高生なんだから。
「わらわはこの世界で一番美しい社長令嬢じゃ」
そういうと、全身が見える。
お~...確かに美しいわね。
前髪で目が隠れているので、そこだけ残念だけど。
「では、ついてまいれ」
「え?なんでです?」
「あの者に『あとはよろしく』と言われたであろう?」
「いや、言われましたけど、OKって言ってないですよ?」
お兄さんの後始末に巻き込まれたくないのよ!
「わらわが了承したのじゃ。ついてまいれ」
と、手を取られてお屋敷に引きずり込まれる私。
やっぱり、このゲームは強引に進めるのね...
終わったらアンケートで文句言わなきゃダメね。
この世界で一番美しい社長令嬢にかなり強引にお屋敷に連れ込まれた私。
ドアがきしむ音を立てながら「バン」と勢いよく閉まる。
完全にホラー仕立てじゃない...
「して、試しに問うが、そなたは...誰じゃ?」
この世界で一番美しい社長令嬢...面倒だから「令嬢」で良いわよね?
令嬢が部屋の真ん中で振り返りながら私に尋ねる。
その足元にはいつの間にか猫が座っているんだけど...なんか尻尾が多くない?
あ、確実に多いわね。
猫は10年生きたら猫又っていう妖怪になるんだって、パパから聞いたんだけど?
で、猫又になると尻尾が二本になるそうで、それが猫又の由来。
でも、目の前の猫は尻尾が...いっぱいある。少なくとも5本以上。
まさか9本あるとかじゃないわよね?
そんな事を考えていたら、猫がニヤリと笑ったんだよね。
違うわね...これは「嗤った」だわ。
だってキモイんだもん!特に目が!!
とか考えてたんだけど、まずは令嬢に返事しなきゃね。
「だから、通りすがりの者ですってば」
「わらわはこの世界で一番美しい社長令嬢じゃ」
自己紹介が長いわよ!
てか、さっき聞いたわよ。
「現在、わらわはちと困っておってのぉ。そなたに手助けを願いたいのじゃ」
結局、私が何者なのかは関係ないのね。
そして、見境なく話が進むのね。
「それにそなたも困っておるのじゃろう?例えば、この森から出る方法とか?」
おっと。ここに来て、これはちゃんとしたイベントのようね。
是非前向きに検討させていただきたいのですが、慎重にしないとね。
「えっと、まずは何に困ってるの?」
「ここ最近、わらわの事務所の集客率が下がっておってな、お父様からどうにかしろと言われておるのじゃ」
「それは大変ですねぇ~」
女子高生の私には、マジでどうしたら良いか分からない内容ね。
何か案を出せって言われたら全力で逃げよう。
「原因はわかっておるのじゃ」
まさかの返答。
「じゃあ、簡単じゃん?」
原因にもよるとは思うけど、基本的に原因が分かっているなら対応は簡単だと思うんだけど?
「わらわが美しいあまりに、お客がなかなか集まらないからじゃ」
そっち?
言ってて恥ずかしくないのでしょうか?
いや、それよりも、
「普通逆よね?」
「美しすぎる事は罪であったのじゃ」
あ~...この人も人の話を聞かないのね。
さすが、白いお兄さんの上司だわ。
「あまりにもイライラしたので、手あたり次第に紙をシュレッダーにかけておったのじゃ」
確かにシュレッダーは楽しいかもだけど、それを喜んでやるのは小学生低学年までよ。
私も小学4年生の頃には、パパに頼まれてもシュレッダーはしなくなったもの。
と言う事はこの人、小学生の低学年っていう事?
それはともかく、
「なぜシュレッダー?」
「儚く消えていくその姿が美しい」
全く共感できません。
「『消えていく』ではなく、『自分で消して』ますよね?」
「それ以上にわらわは美しいので、結局イライラは止まらず」
「私の質問には答えてくれないのですか?」
「美しすぎるが故に、何をしても許される...あぁ...罪深いわらわ...」
大丈夫か?この人。
てか、全く話が進まないんですけど?
「そうして紙をシュレッダーにかけていたのじゃが、どうやら大事な書類も一緒にかけてしまったようでの」
あ、やっぱり。
オチはそこだったのね。
「にゃー」
ん?足元から猫の鳴き声が聞こえる。
慌てて足元を見ると、さっきの三毛猫が足先から10センチぐらいの所で座っていた。
やっぱり尻尾が沢山あるわね~。軽く確認したけど9本も尻尾があったわ。
猫の九尾っているのね~...普通は狐だと思ってたわ。
このゲームデザイナーさんは猫が好きなのかしら?
それにしても、いつのまに移動したのかしら?全然気が付かなかったわ。
「(おっと...おもわず鳴いてしまったので気づかれてしまった)」
ん?
なんか聞こえた気がするけど、小さすぎてちゃんと聞こえない。
そんな事より、ちょっと待って。
大事な書類をシュレッダーにかけてしまったって事は?
「じゃから、そなたに復元してもらおうと思ってのぉ~」
やっぱり~!!
てか、お兄さんはコレで逃げたのか!!
「ご自分でもできますよね?」
「わらわが出来るという事は、そなたも出来るという事」
合ってるけど違います。
「いやいや、そもそも自分でシュレッダーにかけちゃったんですよね?」
「そう言っておろう?」
潔いわね、この令嬢。
いっそ『男前』って言ってあげたい。
いや、今はそれどころではないわね。
「だったら自分でされるべきでは?」
「わらわの美しさがそれを許さぬのじゃ」
なんで?
「どういう理由で?」
「わらわがシュレッダーされた紙片に近づくと、紙片が恐れ多いと逃げるのじゃ」
「嘘だ~!!」
ここは大きくなったり小さくなったりするキャンディーがあるので、そういう有り得ない現象もあるかもだけど、そんな都合の良い現象は無いはず!
「では、その目で確かめると良いぞ」
そう言うと床に散らばった紙片に社長令嬢がゆっくり優雅に近づいていく。
そうすると、どういうわけか紙片がさぁ~っと遠のく。
え?マジ?なんでこうなるのよ?
これも仕様なの?
「どうじゃ?言った通りであろう?」
社長令嬢がこちらを向いたんだけど、その右手にはさっきまで無かったものを持っていたのよ。
それはなんと、扇子。
どこから出した?
「あの~...その右手に持っている物はなんでしょうか?」
「知らぬのか?これは世界で一番美しいわらわの持つ扇子である」
そんな事は知っておりますよ!
「紙片に近づいた時、扇子で何かされませんでしたか?」
「何もしてはおらぬが?」
と、本当に不思議そうな雰囲気で返答する令嬢。
う~ん...疑惑はあくまで疑惑でしかないのよね。
テレビアニメの探偵物を見ている私としては証拠を固めるしかないわね。
「ちょっと、その扇子をみせていただけます?」
「良いぞ。これは良いぞ?」
なんか言ってるけど、この際無視。
割と簡単に手渡してくれたわね。
ちなみに、これは「貰った」わけではないので、アイテムボックスには入らなかった。
が、今はそれでいい。
「すみませんが、もう一度紙片が逃げるところを見せていただけます?」
と、手に持った扇子を離さないようにして令嬢に再度お願いする。
これで扇子を返してくれとか言ったら良いんだけど...
「良いぞ」
意外と簡単にOKをしてくれたわね。
床に散らばった紙片に社長令嬢がもう一度近づいていく。
そうすると、やっぱりどういうわけか紙片がさぁ~っと遠のく。
「どうじゃ?言った通りであろう?」
社長令嬢がこちらを向いたんだけど、その右手にはやっぱり扇子が握られている。
そして私の手元の扇子は...無い。
マジでどういう事?
さっきまで持ってなかったのに、扇子を持っていて、私が預かった扇子が無くなるって事は...
それらも含めて仕様って事?
ナンテコッタイ...
どうやらゲームのイベントらしいので、やるしかないわね。
「分かりました。まずは紙片を集める事からやりますけど、ここに落ちている分で全部ですか?」
「おぉ!やってくれるか!わらわは嬉しいぞ!!」
と晴れやかに言うと、スカートをバラのように広げ、くるくると回りながら踊り始めた。
お~!流石世界一と自称するだけある。
シュレッダーの紙片も紙吹雪のように浮き上がり、令嬢の舞いに合わせて舞い踊る。
幻想的な光景が目の前で広がっていく。
うんうん。これぞ目の保養って奴よね。
ちょい待ち!
紙片が舞ったらダメじゃん!!
と、思ってももう遅く、幻想的な光景を演出し終えた紙片はさらに舞い上がり、窓から一枚も残らずに外に退場していった。
え~...どうすんのよコレ。
「どうじゃ?手伝ってくれると言ったそなたの為に踊ってやったのだが?」
一通り舞い終わり、すんごい笑顔で嬉しそうに話しかけてくれる令嬢。
気が付いてないんでしょうか?
「代償に紙片が全部窓から出ちゃったんですけど?」
「おお!わらわの美しさが故に、とうとう出ていきおったんじゃな」
「そんな事言ってる場合じゃないでしょうに!早く探しに行かないと!」
慌てて私はお屋敷の外に出る。
幸い、この扉は認証式や一方通行ではなかったので、すんなりと外に出れた。
あ、天井見るの忘れた。




