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立つ鳥跡を濁す・・・どうにもならない事は確かにある

まっすぐ進んでいたら、


「あ~...キミキミキミ!!」


後ろから声を掛けられたのよね。

とても聞き覚えがある声。


振り向いてみると、真っ白い人がこっちに向かってきているのが見えた。

あそこまで真っ白だとすぐに分かるわね。

真っ白つなぎ服のお兄さんだわ。


「ちょっと!なんで戻ってきてくれなかったの?」


お兄さんがちょっと機嫌悪そうに話しかけてきた。

そんな事言われても、排水溝に流されちゃったら無理じゃない。

見てたでしょ?


「あ~...今から戻ろうとしてたんですけど...」


嘘は言ってない。


「まぁいいや、事務所からノートパソコンとUSBメモリを持ってきて欲しいんだ」

「ノートパソコンはさっき持ってなかったでしたっけ?」

「ここをまっすぐ言った所に僕の事務所があるから」


相変わらず、人の話を聞かないのね...


「えっと、私の話聞いてます?」

「ノートパソコンもUSBメモリも事務所の2階の僕の部屋にあるよ。見ればすぐ分かるようになっているからね」

「お~い!聞いてますかぁ~!!」

「じゃ、お願いね~」


と言って、来た道を走って戻って行ってしまった。


「あ、待って!」


物を見つけたとして、どこに持っていけば良いのよ?


まぁいいや。

とりあえず、見つけて事務所で待ってたら取りに来るだろうし、そもそもお兄さんも場所を言わなかったので、玄関まででも大丈夫でしょう。

お兄さんへの教訓。『人の話はちゃんと聞きましょう』。


もうちょっと進むと事務所らしき建物が見えてきた。

近寄ってみると、「事務所」って書いた看板を掲げた2階建ての建物。


なんで森の中に建物を建てているのよ!

てか、看板が「事務所」ってなに?どういう仕事の事務所か分かんないでしょ?


そう思いつつ両開きの自動ドアから入ろうとすると...ドアが開かない。なんで?


あ~誰も事務所にいないので、鍵をかけているのかも知れないわね。

じゃあ、入れないじゃない!

と、思ったら近くに見た事のある白い箱...認証装置っていうのかな?が、付いたドアがあるのを見つけちゃった。


これ、さっきの認証カードで通れるんじゃ?

物は試しと思って認証カードを認証装置にかざしてみる。


『ぶ~』


あ~...やっぱり、そんな都合よくは行かないか...

それにしても、効果音じゃなくセリフで『ぶ~』って言われると、なんか腹が立つわね。

と思って、自動ドアの方に戻ってみたら、


『いらっしゃいませ~』


という野太い男性の声と共に、自動ドアが開いた。


なんで合成音や女の人の音声じゃなくって、男の人の声なのよ!

怖いお兄さん達の事務所かと思っちゃうじゃない!


大丈夫よね?


ちょっとビビりながら、事務所の中に入って行く。


「おじゃましま~す」


誰もいないはずなんだけど、育ちが良いので挨拶をしつつ、辺りを確認。

ここは本当に事務所のようで、事務机が4つほど並んでいて、事務所らしい雰囲気がある。

壁の方にはコピー機やロッカーや書類や本が見える。

事務机の上に『仕様について』って書かれたメモがあるけど、内容は全く読めない。単なるオブジェクトのようね。


ふ~ん...仕事をする場所ってこんな感じなのね。

テレビで見ているのとあまり変わらない気がするわ。


そういや、2階って言っていたわよね。


2階の階段を見つけたので、階段を上がってみる事にした。



階段を上がった所のすぐのドアには『僕の部屋』と看板が掲げてあった。

うん。確かにすぐ分かったわね。


鍵は付いていないようで、ドアは簡単に開いた。


「おじゃましま~す」


改めて挨拶をしながら部屋に入ったら、奥の窓の所に机があって、その上にノートパソコンとUSBメモリがあった。

確かに言われた通りだったわね。すぐに見つかったわ。

問題は、これをどうするかよね。

『持ってきて』とは言われたけど、『どこに』と言われなかったしね。


とりあえず、ノートパソコンとUSBメモリを持って、事務所の外で待ってみましょうか。


何気なくノートパソコンに触った瞬間、


『でででで~~~~ん、でででで~~~~ん』


え?なぜベートーベンの『運命』のイントロなの?

しかも、可愛い女の子の声だから、全く緊張する事もない。

ただ、警報だというのだけは分かったんだけど、突然の事すぎて、それ以上は考えられない。


『侵入者を検知しました』


私、侵入者?頼まれてここに来たのにどういう事?

てか、警報システムぐらい切っておいてよ~!!


慌ててノートパソコンとUSBメモリを持って部屋から出ようとした瞬間、机の引き出しが勝手に開き、そこから水鉄砲がびっくり箱みたいに飛び出して来たの。

びっくり箱って、本当に「びっくり」するものなのね。

本気で「きゃあ~!」って叫んじゃったわ。


でも、驚かすだけじゃなかったの。

水鉄砲から、赤い液体が発射されて、それが私の口辺りに当たってしまって...


『でんでんでんで~ん』


またしても、聞いたことのある効果音セリフが聞こえてきた。

このパターンはもう慣れつつあるわね。


でも、この赤い液体って、赤いキャンディーの材料なのかしら?


なぜ、そう思ったかというと、また私の身体が大きくなってしまったからなの。

右手は窓から飛び出してしまってるし、左腕は肘の所で入口を抑えているので出入りが出来ないようになってるし...


う~ん...困ったわね。


これはVRゲームだから、私の本体(?)は全く影響ないんだけど、VRのアバターがとても窮屈そう。

おかげで、私も疑似的に窮屈な感覚になっちゃっているのよね。


考えていると、外から白いお兄さんの声が、


「お~い、キミキミキミ! なんで持ってきてくれないんだよ~」


って、建物の外から聞こえてきた。

どうやら、今は窓の下辺りにいるみたいね。

タイミングが良いのか悪いのか、ともかく助けてもらいましょう。


「あのね、大きくなっちゃって、部屋から出られないのよ~」

「あ~...警報装置に引っかかったんだね。ダメだよ~、ちゃんと解除しないと」

「警報装置の切り方なんで知らないわよ!」

「なんで?天井にちゃんと方法を書いてあるでしょ?」


天井?

言われて天井を見てみると、


『警報装置の解除方法:二拝二拍手一拝』


と書いていある。

神社のお参り?

てか、誰に向かってするのよ!


「天井に書いてあるなんて知らないわよ!」

「いやいや、仕様でしょ?」

「なんでも仕様にしないでよ!」


ともかく、今後は天井も確認するようにと心に決めたわ。


「そういえば、刺激を与えると良いって聞いた事があるよ」

「刺激?」


お兄さんが突然意味不明な事を言い出した。


「確か、大きくしたり小さくしたりする方法...だったかな?」

「待って、それ絶対違うから!」

「じゃあ、時激を与えるよ~」


話しを聞いて!!


ホントに肝心な時に人の話を聞かないのね、この人...

どうしたら分かってくれるか考えていたら、窓から何かが投げ入れられてきた。

え~っと、これは「石」?


どうやら、窓から出た私の手に向かって石を投げているようなんだけど、いくつかは当たらずに部屋に入ってきている感じね。


現実世界だったら、色んな意味でNG行為なんだけど、VRだから被害はない。

まぁ、私のアバターが大きくなっているので、多少ダメージがあってもHPが1つ減るぐらいじゃないかしらね?

それでも、気持ち的にはやっぱりNGよね。


当然、そんな事では私のアバターは小さくならない。

それよりも部屋の中の被害が甚大になっていくだけ。

あ、ノートパソコンに当たった。


「ちょっとストップ!これじゃダメっぽいわよ!」

「え?そうなの?じゃあストップだね」


石が入ってくるのは止まったけど、ノートパソコンとUSBメモリも壊れちゃってるよ...

部屋の中も石だらけだし、あちこち壊れちゃってるし...って、あれ?


床に青いキャンディーが転がっている。

石に交じっていたのかしら?

これを飲んだら小さくなれるハズ。だって『仕様』だもの。


外ではお兄さんがぶつぶつ言いながら考えているけど、さっさと飲んでしまおう。


動かすことの出来る左手を調整しながら動かして、青いキャンディーを拾う。

そのまま口に持ってくるんだけど...気分的には落ちたものを口に入れるのは抵抗があるのよね...VRゲームと言えど。


『ぴろりろりん』


するとまた効果音セリフが鳴った。

どうやら青いキャンディーは『ぴろりろりん』と言うらしいわね。


予想通り、私の身体はさっきと同じ大きさまで戻った。


ノートパソコンとUSBメモリは壊れちゃってるので、持って行っても無駄。

そもそも私の責任じゃない。


すでに面倒ごとに巻き込まれている自覚はあるけど、これ以上の面倒ごとは嫌。

そもそも私の責任じゃない。私の責任じゃない。


大事な事なので、2回言いました。

いや、3回か?


急いで階段を降り、お兄さんの所に行った。


「あれ?小さくなってるじゃないか」


どうやらまだ考えていたらしい。


「あれからすぐに小さくなったんです。ありがとうございました」


嘘は言ってない。


「それは良かった。で、ノートパソ...」

「急いでいるんで失礼します。物は机の上にあったので!」

「あ~...じゃあ、自分で取ってくるよ。じゃあね~」


お兄さんはにこやかに言うと、事務所の入り口に向かって行った。

野太い『いらっしゃいませ~』と聞こえてくる。


さて、急いでここから離れなきゃ。

方向も分からず、とにかく進もうと思って事務所を背に進み始める。


しばらくして、2階の窓からお兄さんの悲鳴が聞こえてきたけど聞こえない。

それは私の責任じゃないんだからね!

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