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人狼転生 〜転生したら、俺らは神殺しの獣と呼ばれていた〜  作者: かぼちゃパンツ
1章 〜アンデッドパレード〜

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9話

「怪我とか、大丈夫ですか?」


 俺は目の前にいる女性に声をかけた。

 背中まで伸びた黒髪は、戦闘の後だというのに艶があって、やけに目を引く。


「う、うん。ない、と思う!」


 彼女は少し慌てた様子で、指先で髪をいじりながら答えた。


「そっか。良かったです」


 そのタイミングで、彼女の仲間らしき人たちが岩陰から姿を現す。

 俺が戦っている間、身を潜めていたんだろう。


「あんた、強いんだな」


 筋骨隆々の男が、素直にそう言った。


「あはは。そんなことないですよりそれより、地上まで送っていきましょうか?」


「おお、助かる。よろしく頼む」


 皆かなり消耗している様子だ。

 この状態で無理をさせるより、護衛してしまった方が早いだろう。


 倒れているリーダーらしき男を担ぎ、俺たちは歩き出した。


 少し進んだところで、黒髪の女の人が俺の隣に並ぶ。


「あのさ……私たち、お金とか無いんだ。だから、その……助けてもらった報酬は、あんまり期待しないでほしくて」


「え?」


 思わず声が出た。


「あはは。報酬なんて要らないよ。たまたま通りかかっただけだし」


「……そっか。あのさ、君、名前なんて言うの?」


「ウォルファ。君は?」


「私はマルタ。今さらだけど、助けてくれてありがとう」


 マルタか。

 見たところ、まだ駆け出しの冒険者だろう。


 だけど、彼女の内側にはかなり豊富なマナが眠っている。本人はたぶん気づいていない。もしこのマナに自覚があるならば、スケルトンごときに手間取らないはずだ。


 他愛もない話をしながら、俺たちは地上へと戻った。

 途中ですれ違った冒険者たちも、皆疲れ切った顔をしている。


 久しぶりに日光を浴びたマルタたちは、ほっとしたように笑った。


 この洞窟の近くには、エールという街がある。

 そこまで行けばひとまず安全だが、念のため護衛は続けることにした。街道に、魔物は絶対出ないわけじゃない。


 肩がきつくなってきたので、俺は担いでいた男を持ち替える。


「ねえ、ウォルファって貴族サマなの?」


 街道を歩きながら、マルタがそう聞いてきた。


「え? 全然違うよ。どうして?」


「そのネックレス。すごく高そうだから」


 マルタの視線が、俺の首元に向く。スノームーンからもらった、大切な首飾りだ。

 彼女は、今でも俺を覚えているのだろうか。たまに気になってしまう。


「昔、友達からもらったんだ。その人は……まあ、確かに貴族かな」


 帝国の内務卿の娘。

 冷静に考えなくても、だいぶ大貴族だ。


「ふーん。その人、女?」


「まあ、そうだね」


「……そっか」


 なぜか、そこで会話が途切れた。

 空気が微妙なので、俺は話題を変える。


「そういえば、マルタは魔法の勉強ってしたことある?」


「全然。独学だよ」


 やっぱり。

 独学で魔法を発展させるのは、それこそ天才にしか出来ないことだ。

 だけどマルタは、正しく学べば確実に化けるはずだ。


「もったいないな」


「しょうがないでしょ。うち、貧乏だし。勉強の費用とかは出してくれいの」


 そこで、俺は一つ思いついた。


「ルナーティアの魔導学園、知ってる?」


「る、るな……? ごめん、地理あんまり詳しくなくて」


 俺は腰のポーチから、折りたたんだ地図を取り出す。

 片腕は塞がっているので、マルタに手渡した。


「開いてみて」


 地図が広がる。


「今いるのが、ここ。エール。で、ここからずっと北に行くと……」


 指を上に滑らせると、そこに名前があった。


「ルナーティア王国。魔法が発展してる国だよ」


「ふーん。そんな場所、あるんだ」


「マルタ、君は特別なマナを持ってる。ちゃんと学んだ方がいいよ」


 マルタは目を丸くする。


「私が? 本当?」


「本当だよ。魔法を学ぶと、他人のマナがなんとなーく見えるようになるんだ」


 戦闘で出力をミスったばかりなので、少し説得力は弱いけど。


「ウォルファって、近接もできて魔法も使えるんだね。すごいな……」


「いやいや。もっと強い人はいくらでもいるよ」


 そんな話をしているうちに、石壁に囲まれた大きな街が見えてきた。

 エールの街だ。酒で有名な場所。


 俺たちは門を潜り抜けて、人が賑わう門前の広場に到着する。


「よし、ここまで来れば大丈夫かな。それじゃあ、またね」


 軽く別れを告げて、背を向けた瞬間。


 ――服を掴まれた。


「え?」


 振り返ると、マルタが真っ直ぐと俺の目を見ている。そして、服を掴む手は震えている。


「あの……私も、一緒に冒険できない?」


 予想外だ。ただ、俺は人狼だし、長く一緒にいればいずれバレる。辺境育ちだけそうだけど、念には念を入れないといけない。

 ここは断るべきだ。


「ごめん。俺、基本的に一人旅なんだ。だから無理だよ」


「ちょ、ちょっとでいいから! それに……魔法、教えてほしい」


「……」


 俺はつい黙ってしまう。


「駄目だったら諦めるから。お願い」


 さっき会ったばかりなのに、すごい熱量だ。でも、その目は本気だった。


 少し考えて、俺は息を吐く。


「分かったよ。ルナーティアに行くまで、魔法の訓練をしよう。俺も、そこに行く予定だったし」


 マルタの顔が、一気に明るくなる。瞳は輝いていた。


「ありがとう!」


 ただ一つ、気になることはある。


 この子、今のパーティはどうするつもりなんだろうな

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