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人狼転生 〜転生したら、俺らは神殺しの獣と呼ばれていた〜  作者: かぼちゃパンツ
1章 〜アンデッドパレード〜

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12話

 まさしく、死体の山が広がっている。


 こちら側の犠牲は、思ったほど多くない。

 少なくとも正門周辺に立っている冒険者たちは、まだ大半が生きているようだ。


 マルタは……少し離れた場所にいる。

 立ち姿もしっかりしているし、怪我はなさそうだ。


「ウォルファぁぁぁ!!」


 彼女は俺を見つけるや否や、全速力で駆けてきた。

 そして勢いそのまま、俺の両腕をがしっと掴む。


「どうしたの?」

「ほんっと怖かった! でもね、人生で一番、戦闘が上手くできた気がするの!!」


 ……完全にアドレナリンが出過ぎている。


「ほら、落ち着いて」


 俺はマルタの肩を掴み、ゆっくり揺らした。


「うん……ありがとう。ごめん、初めてのことばっかりで、興奮してたかも」


「まあね。でも、あんなに早く魔法を使いこなせるの、やっぱ才能だね」

「うふふ。私ってやっぱすごい?」

「すごい」


 マルタは満面の笑みを浮かべた。


 ――さて。

 死霊の群れを倒したのはいいが、気になることがある。

 俺は地面に転がっているゾンビの遺体にしゃがみ込み、服装を観察した。


 布はそこまで古くない。

 そして胸元に、冒険者のバッジがある。


 俺は指でつまみ、外した。


 背後からマルタが覗き込んでくる。


「なに取ってるの?」

「ああ、これ。バッジ。こいつの服に付いてた」

「銅のバッジ……私と同じだ」


 冒険者にはランクがある。銅は最下級であり、自分の級に相当するバッジを付けるのが疑問だ。

 つまり、このゾンビたちは元々冒険者だった可能性が高い。


「この人たち、もしかして昨日、あの洞窟にいたのかも」


 嫌な仮説だけど、一番自然だ。


「ま、待って。普通の人間をアンデッドに変えられるの?」

「生きてる人間を“直接”ゾンビにするのは無理。一度殺して、死霊生成の魔法をかけるとか……そういう手順になる」


 ということは、洞窟のどこかに、死んだ冒険者たちをアンデッドにした“犯人”がいる。


 でも、この量を一人で?

 ……いや、王国一レベルの魔法使いでも無理だ。集団の可能性が高い。


 頭の中で情報が噛み合い始めたところで、別の声が割り込んできた。


「おい、あんた」


 男の声だ。さっき一緒に戦った冒険者だろう。


「どうしました?」

「いや、あんためちゃくちゃ強いんだな。先陣切ってくれたおかげで助かった」

「いえいえ。俺、無駄に体が硬いだけで」

「はっはっは! そりゃ頼もしい。彼女さんも、彼氏がこんな強けりゃ安心だろうな」


 ……彼女さん?

 ああ、マルタを誤解してるのか。


「いえ、彼女は別に……」


 否定しかけた、その瞬間。


「そうなんです!!」


 マルタがでかい声で肯定した。


 『えぇ……』

 思わず心の中で苦笑する。


「ははっ、仲いいじゃねぇか」

「それでよ。あとで祝勝会っぽいのやるんだが、あんたらも来ねぇか?」


 宴。

 正直、興味はある。あるんだが――今はそれどころじゃない。


「すみません。やらないといけないことがあって」

「おう、そうかい。とにかくありがとな!」


 男は手を振って去っていった。


 マルタが首を傾げる。


「ウォルファ。やらないといけないことって?」

「さっきの話に戻るけどさ」


 俺はバッジを指で弄びながら言う。


「このゾンビたちが、昨日洞窟にいた冒険者だとするじゃん? だったら、洞窟の探索を“すぐ再開”するのが筋なんだけど……」


「けど?」


「……危険が読めない。何が起きるか分からない場所に、俺たちで突っ込むのは賭けだ。それこそ、本当に生きている人間を直接アンデッドにする罠があるかもしれない」


 マルタが唇を噛む。


「なんで……こんなことするんだろう」


 それはもっともな疑問だ。

 だが、俺たちが納得できる理由なんてない。悪とはそういうものだ。

 この五年間で、それは十分伝わった……


「あっ」


 ふと、脳裏に嫌な違和感が蘇った。


 そもそも、この依頼自体が変だ。

 依頼人はエール以外にも依頼をばら撒き、冒険者の級は不問。

 なのに報酬だけが妙に豪華。


 最初から、人を洞窟に集めるための餌だった?


「ごめん。やっぱ洞窟探索は無し。それより、もっと確実なやり方がある」

「それって、なに?」

「依頼人探し」



 エールの街で休憩と旅支度、それから聞き込みを済ませた俺たちは、夜に街を出た。


 松明はいらない。なにせ、俺には暗視の魔法がある。


「夜中の冒険って、新鮮でワクワクするかも」


 マルタは大きな荷物を背負っている。

 中身は……見なくても分かる。食糧だ。


 朝の防衛戦の報酬として銀貨をもらったはずなのに、その大半を食い物に変えていた。


「あのさ、今さらだけど重くないの?」

「え、全然重くないよー」


 それが重くないのか。

 戦士適性あるんじゃないか? いやいや、ないか。


「じゃあ行こうか」


 夜の行軍が始まる。


 依頼人は南から北へ、依頼をばら撒いていた。

 そしてエール以北から、この依頼を受けに来た冒険者はいない。


 つまるところ、エールが終着点。そう考えるのが自然だ。


 なら、依頼人はエールに潜んでいるはず。そう思ったが、聞き込みの結果は違った。


 依頼を貼ったのは老人で仮面を付けていたらしい。

 そして、すでに街を去ったとのことだ。


 依頼人そのものを捕まえるのは難しい。

 だが、老人が滞在していた場所や足取りを追えば、手がかりは掴める。


 夜の利点は、魔物の動きが鈍いことだ。もちろん、眠らない魔物もいるが。


「う〜、夜ってやっぱ寒いな」

「花の節が始まったばかりだしね」

「ウォルファは、何の節が一番好き? 私は火の節! 海で遊べるのが好きなんだ〜」


「俺は……」


 確かに、どれが好きだろう。

 思えば出会いや出来事が多かったのは、氷の節だ。


「氷の節かな。でも……好きっていうより、印象が強いだけかも」

「なにそれ。ウォルファって、そういうのパッとしないね」

「あはは。そう言われると、なんか恥ずかしいな」


 そんな雑談をしながら、俺たちは月明かりの下を歩いていく。

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