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第7話:『魔女協会への扉』
翌朝、かおりは、出勤の電車に乗らず、魔女協会の門の前に立っていた。
目の前にそびえ立つ、巨大なガラスと鋼鉄の建物。それは、神宮寺結衣が『空間操作』で作り上げた、新しい世界の象徴だった。
彼女の動機は、決してニュースが語るような、純粋なものではなかった。
彼女は、女性として強くなりたいわけではない。 この世界で、幸せに生きたいわけでもない。
ただ、この完璧すぎる世界の裏にある、真実を知りたかった。 神宮寺結衣は、本当に「思いやりのある者」なのか。 そして、自分が今生きているこの世界は、本当に正しいのか。
かおりは、迷いを振り払い、魔女協会の門に手をかけた。
それは、彼女自身の心の傷と向き合うための、最初の一歩だった。