第5話:『統制された情報』
テレビの画面には、神宮寺結衣の穏やかな微笑みが映し出されていた。
「この度、女性がよりよく生きるための場所として、魔女協会を設立しました」
アナウンサーは、魔女協会が「女性を強くし、未来を築くための場所」だと、感情を込めて語っていた。ニュースは、協会での訓練の様子を美しい映像で紹介し、女性たちが生き生きと、希望に満ちた表情で訓練に励んでいる姿を映し出した。
かおりは、その映像を冷めた目で見つめていた。
この放送局は、王国が運営する唯一のメディアだ。かつて存在した、様々なオールドメディアは、「偏向報道の危険性」という名目で、全て消去された。今、この国で流れる情報は、全て神宮寺結衣の意思によって統制されている。
ニュースは、粛清の真実を語ることはない。ただ、神宮寺結衣が「思いやりのある人々を救済した」という事実だけを、繰り返し流している。
(この人たちは、何も知らないんだ)
かおりは、画面の中の女性たちを見て、そう思った。彼女たちは、なぜこの世界が築かれたのかを知らない。彼女たちは、自らが救済された「思いやりのある者」だという、幻想の中で生きている。
そして、その幻想を作り出したのが、画面の向こうにいる神宮寺結衣だ。