第2話:『悲しみ』
神宮寺結衣は、無数の星々が瞬く、宇宙空間の中に立っていた。彼女の周りには、地球という名の青い宝石が、まるで手のひらの中にあるかのように、小さく輝いている。
彼女は、武装魔法「悲しみ」を行使した直後だった。全身の神経が焼き切れるかのような激痛が、彼女を襲う。両目から血の涙が流れ、肌には稲妻が走った後のような痣が浮かび上がっていた。
「これが…人類の『悲しみ』」
彼女は、世界の全ての負の感情を読み取った。絶望、憎悪、苦痛、そしてそれらが引き起こした無数の悪意。その感情が、彼女の脳内で座標となり、彼女はそれをたった一握りの力で握りつぶした。
「通常魔法では、肉体しか殺せない。魂は、また別の器に移り、同じ過ちを繰り返す…」
彼女は、遠い過去に、恩師から教わった言葉を思い出す。恩師は、この「悲しみ」の魔法が持つ危険性を説き、決して使ってはならないと警告した。しかし、彼女は知っていた。世界の病は、肉体の死で癒えるものではない。魂そのものを滅ぼさなければ、この世界は、いつかまた同じ破滅に向かって進むだろう、と。
彼女の瞳に映る地球は、半分が死に、半分が生き残った。しかし彼女は、その光景を見て安堵することはなかった。彼女が感じていたのは、世界の全ての「悲しみ」を背負った、圧倒的な孤独だった。
彼女は、この日から、人類の創造主となった。