表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/11

第1話:『とおりゃんせ』

「世界」なんてなければ、何も起こらないから、「平和」なのに。

世界は、その日、静かに終わった。


突如、地球のあらゆるスピーカーから、澄んだ少女の歌声が響き渡った。それは、日本の童謡「とおりゃんせ」。その歌声が流れた瞬間、世界中の人々が、まるで糸が切れたかのように、次々と倒れていった。


ニューヨークのタイムズスクエアに集まっていたデモ隊「アンティファ」の若者たちは、互いに罵り合い、火炎瓶を投げつけようとしたその時、歌声を聞いて一斉に吐血し、崩れ落ちた。東京の国会議事堂では、連立与党の政治家が、裏金問題について笑いながら談合している最中に、血を吐いて息絶えた。薄暗いアパートの一室では、無抵抗の覇気を失った女性に無理やり自分の欲望の色を刻み込んでいた男が、腰を振るのを止め、薄汚れた畳に血痕を散らしながら絶命した。


歌声は、世界のあらゆる場所で、あらゆる形で「悪」と呼べる者たちを粛清していった。それは、人種、国籍、性別、思想を問わない、無差別で、かつ選別された死だった。


生き残った者たちは、ただ呆然と立ち尽くすしかなかった。世界人口は半数にまで激減していた。なぜ、誰が、何のためにこんなことをしたのか、誰も知る由もなかった。


やがて、歌声が止んだ後、世界は静寂に包まれた。そしてその静寂のただ中に、たった一人の女性が姿を現した。


彼女の名は、神宮寺結衣。


挿絵(By みてみん)

女性

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ