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06 魔王の受難


 勇者パーティーは魔族の国の目前まで迫っていた。


 魔族の国が近づくに連れ、襲ってくる魔物もどんどん強くなっていったが、オバチャンたちの話を聞いて以来、勇者パーティーは魔物を無闇と殺したり、再起不能になるまで痛めつけることを躊躇うようになった。

 簡単なことではなかったが、「戦闘は基本、話し合いで解決」の姿勢を貫き、話を聞こうとしない魔物には力を合わせて相手が大人しくなるまで反撃した。

 その結果、最終的に魔物と勇者がお互い傷だらけになって夕日をバックに熱い握手を交わすようなことまで起きた。


 話がついた魔物たちは女僧侶が回復させ、魔族の国に帰らせる。

 こんなことをしていたら、魔族の国に入ったときに向こうの戦力が全然減っていなくて苦労するだろうとは思ったが、オバチャンたちがニコニコして「大丈夫大丈夫」と言うのを聞くと、なんだか本当に大丈夫な気がしてきてしまう勇者たちだった。


 旅は相変わらず快適で、みんな健康状態も栄養状態もバッチリだ。

 ただ、オバチャンたちの使う呪文が妙に耳に残ってしまい、メンバーの口から時折、


「♫カメラハ◯◯◯◯カ・メ・ラ」だの

「♫◯◯ーダデンキ」だの

「♫1◯◯マンボルト」だのと


 無意識に鼻歌が漏れてしまうのが弊害といえば弊害だったが。



※※※※※※※



 旅の日々も終わりに近づき、ついに勇者パーティーは魔族の国に足を踏み入れた。


 たちまち魔王軍が大挙して押し寄せてくるかと身構えていたが、特にそんな様子もない。


 あちこちに魔物の姿はあるが、なんとなーく遠巻きにされているだけだし、一部の魔物に至っては、こちらに小さく手を振っている。


 そんな中、突然飛びかかってきた若い魔物もいたが、勇者たちが迎え撃つ暇もなく、母親らしき魔物にゲンコツをくらって襟髪を引きずられて行った。


 ………勇者パーティーは困惑していた。


 魔族の国も思ってたんと違う。


 一応警戒は怠らず歩を進めて半日、日が暮れて魔物の集落から離れた場所に露営すると、以前戦った相手なのだろう、薄っすら見覚えのある魔物がそっと食材を差し入れてくれた。

 それに対し律儀に魔女三人組が、作った煮物をオバチャン魔法「タッパー」に詰めてお礼に持って行ったりするもんだから、いつの間にか露営地の焚き火の周りは、オバチャン相手に煮物のレシピを尋ねたり、勇者相手に魔王の内政の愚痴をこぼす魔物でいっぱいになってしまったのだった。


 翌朝、魔物たちに見送られて旅立った勇者一行は、もはや魔王を倒しに行くのか魔物たちを代表して魔王に陳情に行くのかわからなくなっていた。



※※※※※※※



 紆余曲折なく辿り着いた魔王城には、流石に厳重な警備が敷かれていた。


 城門の前には、屈強な魔物の一個連隊がずらりと並んで勇者パーティーを迎え撃つ構えを見せている。

 これだけの相手をどう説得するか……と勇者たちがすっかりオバチャン思考で悩んでいると、魔王軍の隊長と覚しき大型の魔物が、持っていた巨大な戦斧をこちらに見えるように地面に置き、手を振りながら走ってきた。


 よく見れば、それはかつて勇者と夕日の中で友情の握手を交わした魔物だった。


 隊長魔物は、声を潜めて勇者に耳打ちする。


『このまま、お前たちに押し込まれたていで玉座の間まで案内する。

 魔王様の手前、一応「戦ってる感」だけ出してくれ。

 魔王様は相変わらず人間とは徹底抗戦の構えだ。

 この際、お前たちの得意な交渉術で、魔物と人間の和平を実現してくれると我々も有り難い』

 

 勇者たちは驚いたが、戦わずに済むに越したことはない。

 ここは隊長魔物の提案に全力で乗っかることにして、せいぜいワアワア声をあげて剣をぶつける音をたてながら、てくてく歩いて最短距離で玉座の間に侵攻?したのだった。



※※※※※※※



 魔王は玉座から闖入者たちを鷹揚に見下ろした。


『よくぞここまで来た、勇者、よ……………?』


 言いかけて、魔王はまじまじと勇者たちを見る。

 勇者一行は傷ひとつなく、武器も防具もピカピカで、ほっぺもつやつやだ。とても激しい戦いを乗り越えてきたようには見えない。


 魔王が首をひねっていると、勇者たちの後ろから三人の魔女が進み出た。


「魔王さん、魔物と人間の和平に向けて、交渉の余地はある?」


『なんだこの老婆どもは』


「よぉーし交渉決裂だ!その首切り落としてくれるわ!!」


「待って待ってコタツさん!早いよ交渉決裂がwww」


「流石魔王だねえ、嫌なとこ突いてくるわ。でもさあ、アンタんとこの国民、長引く争いに疲れ果ててるよ?」


「そうそう。軍備にばっかり国費をつぎ込んで、内政はめっきり疎からしいじゃない。典型的なダメ為政者でしょ、それ」


「だいたい、百年以上人間の国を征服しようとあれこれやっといて、未だにこの程度の成果って、才能ないにも程があるでしょ。諦めて別のこと頑張りなさいよ」


 臆せずぽんぽん言いたいことを言いまくるオバチャンたちに、魔王の顔がみるみる赤くなる。


『言わせておけば、ババアどもがつけあがりおって………許さぬ、揃って消し炭になるがいい!』


 魔王が突きつけた指先から、紅蓮の炎が噴き出し、一直線にオバチャン三人組に向かった。


 慌ててオバチャンを守ろうと飛び出す勇者たちを押し留め、三人の魔女は冷静にオバチャン魔法を放つ。


「年収130万円の壁!」


「小1の壁!」


「ベルリンの壁!」


 たちまち強固な壁が3重にそびえ立ち、魔王の炎はアッサリ弾き返された。



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