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05 勇者パーティーの受難


 勇者パーティーは困惑していた。


 魔女たちが戦わない。


 まだ魔族の国までは距離があり、遭遇する魔物の数も強さも大したことがないとは言え、彼女たちが攻撃魔法や防御魔法を使っているところをまだ誰も見たことがない。


 だからといってオバチャンたちが戦闘に参加しないわけではなく、魔物が襲ってくると真っ先に飛び出して、口頭で言い負かしたり、物理的にとっ捕まえて尻を叩いて追い払ったりしている。

 その事自体はとても助かるのだが、勇者パーティーとしては「違う、そうじゃない」という気持ちを拭いきれない。


 また、彼女たちは大変に口うるさい。


 勇者に前髪が長すぎると文句を言ったり、女戦士に全身鎧を着込んでいるのに腹と太ももが丸出しとはどういうことかと文句を言ったりしている。

 旅路の途中、訪れた村で村長の家に泊めてもらったときなどは、美しい村長の娘にお酌を強要したタンクの騎士を後ろから鈍器のようなもので殴って昏倒させ、目を覚ました後に延々皿洗いの刑に処したりもした。


 そして、オバチャンなので若いメンバーと比べて体力も少ない。


 長時間の徒歩移動や山越えではどうしても遅れがちになるので、疲れるとすぐ猫やカラスやカエルに姿を変えて、パーティーの誰かの肩や頭に乗せてもらっている。

 動物の姿だとオバチャンのときよりなんぼか可愛いし、お喋りも減って一石二鳥なので、これにはメンバーも否やはないのだが………


 ただ、彼女たちがなんだかんだ強大な魔法使いであることも、旅をしているうちに少しずつ分かってきた。

 こちらの世界の魔法使いは、常に魔力切れの危険と背中合わせであるため、いざという時にしか魔法を使わない。

 そのため、魔法といえばそれこそ攻撃魔法か防御魔法に特化するイメージなのだが、オバチャンたちは魔力の絶対量が段違いらしく、魔法の日常使いを惜しまないのだ。


 オバチャンたちがパーティーに加わってからというもの、勇者たちの旅の質は大幅に向上した。


 パーティーの着衣はオバチャン魔法「ドラムシキセンタクキ」でいつも清潔だし、騎士や女戦士の鎧も「◯レ55-6」の力で錆ひとつない。

 冷えに敏感なオバチャンたちのおかげで、宿が見つからず野宿せざるを得ないときでも、「ユカダンボー」と「デンキモウフ」の併用で、あったか快適に過ごすことができる。


 オバチャン魔法は物質にバフをかけることもできるようで、魔法で出してもらった「フロオケ」に川の水を汲んできて満たせば、それをたちまち疲労回復や打ち身・擦り傷を癒す効果のある、細かい泡の立ちのぼる湯に変えてくれたりもする。

 もっともオバチャンたちによると、これはバフによる効果ではなく、「バブによる炭酸効果」らしいが。


 お喋りばかりでこちらのことなど全然気にしていないように見えて、仲間のちょっとした体調不良や怪我に真っ先に気づくのもオバチャンたちだった。

 オバチャンたちは、「家族の健康管理も主婦の仕事のうちだからね」と笑い、「こういうの放っとくと後で地獄見るよ」と言って、「カッコントー」だの「キズパ◯ーパッド」だのの小さな魔法で、ヒーラーの女僧侶の手間を省いてくれた。


 それに何より、彼女たちが交代で作ってくれる食事が美味しい。


 これには魔法は使っていないそうなのだが、皆の好みや健康に配慮した温かいご飯は、どれも初めての献立ばかりなのに何故か懐かしい味がした。

 ……食べると妙に里心がついてしまって、時折鼻の奥がツンとなるのが玉に瑕だったが。

 

 ある夜、勇者たちは星空の下食事をしながら、オバチャンの魔法について聞いてみた。

 攻撃魔法や防御魔法を使わないのはどうしてなのか、と。

 オバチャンたちは苦笑して話しだした。


「私たちの魔法はね、自分たちの経験から生まれてるの。

 確かに、私たちの世界にも強力な武器や兵器があって、その威力も直接ではないけど理解しているから、魔法として使おうと思えば使えるんだと思う。

 でも、私たちこれまでの人生で強力な武器や兵器を使ったことも使いたいと思ったこともないからね。うまく加減ができなくて、あなた方まで傷つけたら困るでしょ?」


「それに、襲ってくる魔物たちも、よくよく話してみたら何も考えず魔王の命令を聞いてるだけだったり、国に残してきた家族がいたりして、問答無用で攻撃するのもなんだかなあと思っちゃって。

 別にわざわざ戦わなくても、話し合いで納得して引き揚げてくれることがほとんどだしね。

 流石にパーティーのみんなが危険に晒されたら私たちも黙っちゃいないけど」


「結局、私たちみたいなオバチャンが、使い方も効果も熟知してるあっちの世界の魔法みたいな現象って、大体『カデン』によるものなんだよね。

 だから魔法を使うときは、その『カデン』のことを思い浮かべながら、イメージを増幅させる呪文を唱えるわけ。例えばこんなふうにね……

 ♫シンセイヒンガヤスイ、◯ー◯デンキ」


 チン、と音がして、勇者の手元で冷めていた夕食がホカホカになった。


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