03 異世界転移の受難
『えーと、そうなると皆さんには魔法少女改め魔女三人組として僕の世界に来てもらうことになるんすけど。
出発前に幾つか詰めておかなくてはならないことがありまして。
まずは、各自「変身できる動物」を選んでもらいます』
「変身できる動物?」
『魔法少女枠の人は、基本能力として、魔力使わなくても特定の動物に姿を変えられる能力が付いてくるんすよ。
魔法少女だと、「ウサギちゃん」「子リスちゃん」「シマエナガちゃん」からひとつ選んで貰うんですけど、皆さんは魔女枠なので、こちらの「不気味生物カタログ」から、それぞれひとつお選び頂くことに……』
白イタチがどこからともなくA4の冊子を取り出してオバチャンたちに差し出した。
オバチャンたちは額を集めて覗き込む。
「不気味生物カタログにアンタが載ってないよ?」
『またまたそんな心を抉るタイプのご冗談を…』
「あ、カラスあるじゃん!私これにする。カタログには『カラス』としか書いてないけど、できればワタリガラスでお願いしまーす」
「カラスってそんな種類とかあるの?」
「唐須さん、鳥詳しいもんね」
「スズメ目カラス科カラス属って世界に40種類以上あんねん。
日本で見られるのは7種類いてね。その中で最大のがワタリガラス。パワーも賢さもカラス界トップクラスだよ。折角変身できるならこれがいいなあ」
浮き浮きした様子の唐須を白イタチが不思議そうに見る。
『変身できるのが不気味生物って聞いて皆さん嫌がるかと思ったら、意外とノリノリっすね』
「ご家庭に寄り付く害虫や害獣と最前線で戦うのは大抵その家の主婦だからね。
スズメバチでもネズミでも何度も戦っていれば怖くもなくなるし、敵を知るうちになんとなく愛着もわくもんだよ」
『はあ…僕もそのうち愛してもらえるのかな……』
遠い目をする白イタチの肩を藤堂がちょんちょんつつく。
「私『カエル』にするわ。種類はイエアメガエルのブルーアイ、スーパースノーフレークで」
『エラい注文が細かいっすね………』
「藤堂さんとこは、息子さんたちがカエル飼ってるんだよね」
「そう。めちゃくちゃ可愛いし、見てるだけで癒されるんだよ〜。あの子のためにも絶対この世界にカエル、ってモチベーションにするんだ」
「いいね!じゃあ私は黒猫にする。種類は問わない。猫は全部可愛い」
「「やったー猫だー」」
「あんまり撫で回さないでよ?中身は私なんだから」
さっきまで生きるか死ぬかの話をしていたのに、何事もなかったかのように和気あいあいとしているオバチャンたちを見て、白イタチは今更ながら舌を巻いた。
魔女としてのポテンシャルは未知数だが、この胆力と図々しさは、10代の女子とは比べものにならない。
もしかしたら、自分はとんでもない人材をスカウトしてしまったのかもしれない、と白イタチの胸には期待と不安が出たり引っ込んだりしていた。
※※※※※※※
『じゃあ、変身できる動物はそれで決まりとして、次の議題なんですけど、魔王を倒したら叶えてほしい願い事、先に聞かせてもらってもいいっすか?後で変えてもいいんですけど、一応方向性だけでも』
「世界恒久平和」
「全難病の治療法確立」
「物価安定」
『………無理ィ!!』
白イタチが青ざめて水色になったのを見て、オバチャンたちはニヤリとする。
「言ってみただけだよ。心配しなさんな」
「そんなことできるなら、自分の世界くらい自分で救ってるでしょうよ」
「私たちが戻って来るまでに、アンタができることリストアップしておいてよ。さっきの冊子みたいに」
『ハァ、良かった。そうさせてもらえると助かるっす………んじゃ、最後にもう一つだけ………僕、この世界ではこんな姿ですけど、あっちの世界ではもっと大きくて神々しい感じでやらせてもらってるもんで、あの………』
白イタチがモジモジする。
「わかったわかった。地元だとイキっちゃうタイプなのね。大丈夫、あっちで神様してるアンタ見ても、笑ったりからかったりしないから」
『………サーセン………』




