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【バトン】
―新しい選ばれし者へ
ある日、アカネは通学途中、ふと足を止める。
見知らぬ少女がひとり、坂の途中で空を見上げていた。
制服が乱れ、どこか傷ついた目をしている。
彼女の手には、まだ誰にも見えていない“光”が握られていた。
——この感覚。覚えている。
アカネは静かに近づき、声をかける。
「ねぇ、大丈夫?」
少女はハッとしてアカネを見る。
どこか似ている。あの日の自分に。
「わからない。なにが起きてるのか……。
でも、誰かが“助けて”って叫んでる気がして」
アカネは微笑んで言った。
「大丈夫。あなたは“選ばれた”んだよ。
でも、ひとりじゃない。私たちがついてるから」
少女は目を見開いた。
その背後で、ひょっこり顔を出す黒いうさぎ。
ロノウェはにやりと笑って言った。
「さあ、行こうか。世界はまた、“君”を待ってる」
それは、終わりではなく始まり。
想いは繋がり、痛みは未来を変える力になる。
——「君にしか見えないもの」が、世界を救うから。