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【後日談1】
―そして誰も知らない世界で
世界は、何も変わらなかったように見えた。
日常は続き、空は青く、人々は笑い、悩みながら生きている。
でもアカネは知っている。
この日常は、誰かが戦ってくれたから守られているのだと。
ナオトと並んで歩く坂道。
ふたりの高校生活はもうすぐ終わりを迎える。
「ねぇ、あの時さ」
アカネがふと、問いかける。
「うん?」
ナオトが横を見る。
「“世界を滅ぼすもの”が、また現れたらどうする?」
「……また戦おう。ふたりで」
ナオトは迷わず答えた。
「でもその時はさ、できれば——」
ふたり同時に笑った。
「ロノウェが、もうちょっとちゃんと説明してくれると助かるよね」
どこかで、ぴくりと黒いうさぎの耳が動いたような気がした。