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第五章:真実の目編「ナオトが見た“もうひとつの真実”」
ナオトは時折、不思議な“光景”を見る。
それは人には見えない、選ばれなかった彼にだけ見えるもの。
ある日、ロノウェがふと漏らした。
「ナオト、君は“選ばれなかった”んじゃない。——君は、“選ばなかった”んだ」
「……どういうこと?」
ロノウェは少し間を置いてから語り始めた。
「実はね、最初に“選ばれる可能性”があったのは君だったんだよ。前の彼女の次に」
「え……?」
「でも君は、その時……“誰かを助けるより、自分を守りたい”って願った。
それは悪いことじゃない。むしろ、自然なことなんだ」
ナオトの中で、何かが軋んだ。
「だから世界は、君を“傍で見守る者”にした。
君はそのまま、アカネのそばにいるべきだったから」
「……じゃあ、僕が選ばれてたら、アカネが……」
「彼女は今よりも、もっと孤独だったかもしれない」
ナオトは空を見上げた。
見えない星々の奥に、前の彼女とアカネの記憶が重なる。
選ばなかった自分。
でも、今こうして彼女の隣にいる自分。
「それでも——今は、選びたい。もう一度、この手で」
それは、彼にとっての“もう一つの選択”。