第四章:運命の交差編「アカネが前回の彼女と“出会う”瞬間」
それは“夢”の中だった。
けれど、いつものぼやけた記憶とは違う。
意識ははっきりしていて、足元には濡れたアスファルト。
空は曇天、遠くで雷が鳴っていた。
「ここは……見たことがある」
アカネが呟いた時、背後から声がした。
「ずっと、気づいてたよね。あなたが“私”の続きを歩いているって」
振り返ると、そこにいたのは制服姿の少女。
忘れようとしても、いつも夢の断片にいた“あの子”。
「あなたが……あの時、死んだ……」
「そう。でも、それは終わりじゃなかった。
ロノウェは言ってた。“運命は一度きりじゃない”って」
彼女は優しく笑った。
「苦しかったよね。誰かの記憶が流れ込んできて、
誰の痛みかもわからないまま泣いてしまう日もあったでしょ?」
アカネは何も言えなかった。ただ、頷いた。
「でも、それはあなたが“受け継いだ”から。
もう一度、この世界を守れるように。
もう一度、“誰かを救えるように”」
「私は……できるかな。あなたほど強くない……」
「大丈夫。あなたには、隣にいてくれる誰かがいるでしょ?」
その言葉に、ナオトの顔が浮かんだ。
「ありがとう……私、あなたのこと、忘れない。ずっと一緒にいるからね」
「うん。私も、見てるから。——がんばって」
少女の姿は、風とともに消えていった。
アカネの目に、涙がこぼれた。
けれどそれは、悲しみではなかった。
——彼女は確かに生きていた。誰かの心の中で。