第三章:「新しい少女の正体」
少女の名前はアカネ。
表向きは明るく、運動神経も抜群で、友達にも恵まれている。
だが、彼女は誰にも言っていない秘密を抱えていた。
——自分が、「前の主人公の記憶」を持っていること。
断片的な記憶。血の匂い。黒いうさぎ。倒れていく誰かの姿。
そして、ラストシーン。
「次は……あなたが……」と託された言葉。
彼女は、自分がその「誰か」だと気づいていた。
「私……“前に死んだ”人の代わりなんでしょう?」
ある日、ナオトの前でそう言った。
「違うよ」ナオトは即答した。
「君は君だ。誰かの代わりじゃない。君にしかできないことが、あるんだ」
初めて、アカネは泣いた。
記憶の重みに耐える強がりの仮面を、彼の言葉が崩した。
ふたりは共に歩き出す。
ナオトは「見えないものを見る者」として。
アカネは「記憶を継いだ者」として。
ロノウェは、それを見守っていた。
「選ばれた者」と「選ばれなかった者」が並んで歩いていく。
それは、どこか“かつてのふたり”を思い出させた。
運命はもう、ひとりでは背負わなくていい。
この世界には、信じてくれる誰かがいるから。