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番外編:「使い魔の書」〜ロノウェの記録〜
ロノウェは静かな夜に、古びた図書室の一角で、一冊の本を開いていた。
それはこの星の記録。
選ばれし者たちのすべてが綴られた使い魔の書。
「第23章、前の彼女と彼。
世界を救うも、その身を落とし、次の希望にすべてを託す——」
ロノウェは語りかけるように、ページをなぞる。
「ごめんね。僕は君たちに、“終わり”を伝える役目しかできなかった」
「でも……それでも君たちは、笑って僕に手を振ってくれたね」
「ありがとう。あの優しさが、今の子たちを導いてくれたよ」
ページが風でめくられる。
「第24章、アカネとナオト。
ふたりは記憶と運命を受け継ぎ、世界の再起を果たす」
ロノウェは本を閉じる。
「選ばれた者は、特別なんかじゃない。
ただ、誰かの想いを、信じ続ける強さを持っていたってだけなんだ」
黒いうさぎは、立ち上がる。
これからも誰かが迷った時、恐れた時——
そっと現れて「君ならできるよ」と言うために。
それが、ロノウェの役目だから。