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配信者のすゝめ~ 推しが引退したので、僕が配信界の王子になります!~  作者: 無月公主


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11/29

11.21時の約束②

新しいスタイルに変えて初めての配信が始まる。あおいは画面の隅に表示された「毎日定期配信21時から!」というテロップを見つめ、気持ちを引き締めた。今までの気まぐれな配信とは違う。今夜は、このテロップに込めた覚悟が胸の中で静かに響いていた。


これまでなら「とりあえずやってみよう」くらいの気軽さで始めていたが、今日は朝から入念に準備を重ねて臨んでいる。配信内容も、自分がやりたいだけの内容ではなく、視聴者が楽しめるものを慎重に考え、途中から見ても楽しめる短めのゲームを選んだ。SOARAから教わった「気軽に参加できる内容」の大切さを思い出し、誰でも気軽に楽しんでもらえる内容を目指したのだ。これなら、どのタイミングで見始めても、リスナーはすぐに一緒に楽しめるはずだと思えた。


さらに、SOARAに勧められた「メモの準備」も今回から取り入れた。これまでは思いついた話題でなんとか場をつないでいたが、今日は「話す内容」を前もってメモに書き出している。モニターの周りには、話すべきテーマやリスナーに投げかける質問などが書かれたメモがいくつか並んでいる。話が詰まりそうになったときのために、準備しておいたものだ。


「どんなに経験がある配信者でも、言葉が詰まる瞬間はある。だから、あらかじめ話題をメモしておくことが大事なんだよ」とSOARAは言ってくれた。「視聴者に話がスムーズに伝われば、それが君の印象にも残るからね。話の『見える化』ができると、視聴者も自然と親しみを感じやすくなる」


SOARAのアドバイスは、あおいにとって新しい発見だった。話題を紙に書き出すことで、単に準備が整うだけでなく、配信に向き合う自分の「本気さ」が自分にも伝わってくるような気がした。メモには「最近の出来事」「リスナーに聞きたいこと」「次のゲームの攻略ポイント」などシンプルでわかりやすい話題が書かれている。普段のあおいからは想像できないほどの徹底ぶりだ。


メモを準備しながら、あおいは少し成長した自分を感じていた。「配信は気楽にやるもの」と思っていたが、SOARAの助言を受けたことで、視聴者の気持ちを考えることの大切さに気づくようになっていた。


ついに配信がスタートした。あおいは画面を見つめ、ひとつ深呼吸をしてゆっくりリラックスを心がけた。そして、自分の決意が込められた「毎日定期配信21時から!」のテロップを見ながら、画面越しに優しく語りかけるように声を出した。


「こんばんは!SOR∀です。今日から21時からの定期配信、始めていきますね

1」


画面越しに響いた自分の声に、少し自信が宿っていることを感じた。これまで手探りで配信していた自分が、今日はしっかりとした気持ちでここにいるように思えた。


視聴者リストには、初めて見る名前もいくつか表示されている。少しずつだけど、これまでよりも多くの人が自分の配信を見に来てくれている。そのことに心の中で小さな喜びを感じながら、あおいは自然な口調でリスナーに話しかけた。


「今日はこのゲームをやっていきます。誰でも気軽に楽しめる内容なので、ぜひ最後まで一緒に楽しんでもらえると嬉しいです!」


その後も、メモに書かれた話題を頼りに配信を進めた。「このシーン、ちょっと難しいんだけど、誰か助けてー!」と助言を求めてみたりしながら、画面の向こうにいるリスナーに積極的に話しかけた。話題が途切れることなく進むことで、会話のテンポも良く、自然とリスナーとのやりとりがスムーズに続いていった。


少しずつメモを使って話題をつなぐことにも慣れてきた頃、コメント欄が賑やかになり始めた。リスナーから「そのキャラ知ってるよ!」や「この場面の攻略知ってる!」といった共感のコメントが増えてきたのだ。コメントが入るたび、あおいは自然と笑顔になり、視聴者の反応がリアルタイムで伝わってくる喜びを感じていた。


「あ、ありがとう!みんなと一緒にゲームやるの、やっぱり楽しいな」


その一言に、あおいの胸の中にあった嬉しさが自然に表れていた。SOARAのアドバイスに従ってしっかりと準備をして臨んだことで、自分の配信が少しずつ変わり始めているのを実感した。


「そういえば、みんなはどんなゲームが好き?こういうシンプルなゲームも楽しいけど、もっと難しいゲームが好きな人も多いよね」


そう問いかけると、一瞬コメント欄が静まり返ったが、すぐに「私はホラーが好き!」「難しいゲームの配信も見たい!」といった反応が次々に表示され始めた。これまでなかなか自分からコメントをしてくれなかった視聴者たちが、こうして一言話を振るだけで反応を返してくれる。そのコメントが画面に次々と流れていくのを見て、あおいは小さな達成感を感じた。いつもよりも和やかな空気が広がり、自然と会話が弾んでいることに心が躍った。


「やっぱりホラーは人気あるんだね!僕も、いつかホラーゲームに挑戦してみようかな」と返しながら、さらにコメント欄が賑やかになっていくのを楽しんでいた。あおいの中で「視聴者の声を拾うだけでこんなに違うんだ」と新しい発見があり、配信を工夫した甲斐を感じて嬉しさがこみ上げた。


さらに、SOARAからのアドバイスである「時間管理」も忠実に守っていた。これまでは配信が楽しくて、気づくと何時間もダラダラ続けてしまうことが多かった。だが今日は、1時間半と時間を決めて、しっかりその中で終わらせるつもりで臨んでいる。SOARAからも「視聴者が満足したタイミングではなく、『もう少し見たい』って思わせるのがポイントなんだよ。そうすることで、次の配信に来る動機を作れるからね」と教えられていたからだ。


配信の残り時間が15分を切ると、あおいはタイマーに目をやり、少しずつ話をまとめるモードに切り替えた。配信はテンポよく進み、視聴者の反応も良かったので、心の中には満足感が広がっていた。


「そろそろ今日の配信は終わりに近づいてきました!楽しんでくれたかな?」と視聴者に声をかけると、コメント欄には「もっと見たかった!」「また明日も来るね!」といったメッセージが次々に表示される。それを見た瞬間、あおいの胸には言い表せない嬉しさが広がり、「このやり方で良かったんだ」と心から思えた。


あおいは、配信を1時間半で終わらせることで、視聴者が「もっと見たい」と思う瞬間に締める大切さを感じていた。これまでのように、終わりどきを決めずに長々と続けるのではなく、あえて余韻を残すことで次回の配信が楽しみになるようにすることの効果に気づいたのだ。


配信の終え方をコントロールすることで、視聴者の心に「また見たい」という気持ちを残し、次回への期待を高めることができると実感した。


「それじゃあ、今日も見てくれてありがとう!また明日の21時に会おうね!」と、あおいはいつもより明るく、力を込めて挨拶をした。その言葉には、これまで以上に感謝と自信が込められていた。


最後の挨拶を終え、配信を終了すると、画面が暗転し、静かな部屋に戻った。あおいは深く息をついて、画面から目を離す。疲れを感じる一方で、これまでにない手応えが胸に残っていた。配信前の準備や視聴者とのやりとり、そしてテンポ良く進める工夫によって、配信そのものがまるで別のものになったように感じていた。


「やっぱり、やってよかった…」


小さくつぶやきながら、心の中でSOARAのアドバイスに深く感謝していた。

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