93話 謎のギャル
立ち入り審査に落ち、俺は途方に暮れながら宛もなくジャペンの周りを彷徨っていた。
――俺が……ユーリ達より……常識が無いだと……?
ふざけるのも大概にしろ……。
俺は四〇歳だぞ……。って威張れる事じゃないか……。
それにしてもどうするよ……?
こんな所で一人ぼっち。
俺はどうすればいい……?
あんな奴らでも、いなくなると寂しいものだな。
何故か物凄く心細い……。
誰か……誰かと一緒にいたい……。
俺がそんな情けない事を心の中で叫んでいると、一人の女性が話しかけて来た。
「あれー? どうしたの、僕ちん。一人ぼっちなのー?」
俺は俯いていた顔を上げ、ゆっくりとその女性の方へと向ける。そして誰とも素性が知れない彼女に、俺は恐る恐る口を開いた。
「うん……。お姉さんは誰……?」
「お姉さんはねー、ちょーっと名前は言えないんだけど、悪い人じゃないよー?」
すると女性は、自らの口の前で人差し指を立てると、ニコリと笑った。
――悪い人ではない……か。
まぁ、一人で彷徨うショタな俺に声を掛けて来るんだから、その通りなのかもしれない。
それにしても、この娘若いな……。
見た所、二〇代前半といったところか?
パーマをかけているようなクルクルの長い金髪。それを頭の上で団子にして、服は露出度の高い肩が出ている服とショートジーンズ……。ドロップショルダーって言うんだっけ?
加えて、派手なネイルに、耳にはピアス、腕にはブレスレットか……。
まるで現代のギャルだな……。
「えっと、名前は……教えてくれないんだね……」
「ごめんねー! 本当は教えてあげたいんだけど、色々事情があってねー。――――それより僕ちんは何でこんな所を一人で歩いてたの? 服装からしてこの街の人では無さそうだし?」
――ギャルのくせに鋭いな……。
って、それは世の中のギャルに失礼か。
ならば、これだけは言っておこう。
俺はギャルも好きだ……!
「うん。実は僕、旅行でジャペンに来たんだけど、一緒に来た人達はジャペンに入れて、僕だけ審査に落ちちゃったんだ……」
「えぇー! そうだったのー? 可哀想……! こんなちっちゃい子くらい、街に入れてくれたらいいのにねー?」
――まったくだ。彼女の言う通りだ。
どうしてこうも融通が効かないのか。
まぁジャペンは日本によく似た街だというし、それが国民性……いや、街人性なのだろう。
日本人は融通が効かないところがあるからなぁ……。
「そうだよね……! お姉さん、わかってるね……!」
「ふふん。そうでしょ! 童心を忘れない。これがいつまでも若くいられる秘訣だね!!」
そう言うと彼女は、胸を張り自慢気な表情を浮かべる。
――ちょっと意味が違う気がしなくもないが、この子はきっといい子なのだろう。
だが、露出度の高い服の上からでもわかる大きなソレは、童心とはかけ離れた物であるという自覚が足りていないご様子。
これは誰かが教えてやらないといけないのではないか?
まぁ確かに肌は白くて綺麗だし、若く見える。
まぁ、実際若いのか。ていうか、肌は白過ぎる気もする――――いや、いくら何でも白過ぎないか……?
俺は彼女の外見の違和感に気が付いた。
初見では、彼女のその派手な髪や装飾品に目が行きがちだが、よく観察すると肌が異様に白いのだ。
寧ろ青白いという表現が正しいと思える程に。
加えて名前も教えてくれないという不気味さも相まって、俺はホラー映画を見た時の様な寒気を覚えた。
――彼女は一体、何者なんだ……?
「ねぇねぇ、僕ちん! 街に入れないってことは、今日は暇って事だよね!?」
「う、うん。まぁ暇だよ? 特にすることもないし、行く宛てもないしね……」
「じゃあさ、じゃあさ! ウチの家においでよっ!」
俺が怪訝な表情を浮かべているのを他所に、彼女は嬉々とした表情で目を輝かせている。
「い、家!? そ、それはまずいよ……」
「えぇー? 何でなのさぁー!?」
「だ、だって僕達、出会ったばかりだし。それに男と女だよ……?」
俺がうつむき加減でそう言うと、彼女は突然大笑いを始めた。
「キャハハハハッ……!」
「ど、どうして笑うの……!?」
「だって僕ちんが……男と女って……ぷッ……! そんな歳でもないっしょ? どんだけマセガキだよっ! キャハハッ!」
――なんという事だ……。
異世界ギャルにマセガキ認定されてしまった。
まぁそんな事はおいといて。
今の俺には金も無ければ、行く宛ても今夜の宿も無い。
ここは彼女の好意に甘えておくか……?
まぁ、もし何かまずい状況になれば自力で逃げ出せばいいだけだしな。
「笑わないでよっ……。でも今日は、お言葉に甘えてお邪魔させてもらおうかな……」
「へへっ。そうこなくっちゃ! じゃあ行こっ!」
そう言うと彼女は俺の手を引いて歩き始めた。
刹那――――俺が彼女へ抱いていた違和感と疑念が、とある確証をきっかけに全て晴れる。
――彼女の手、有り得ないくらいに冷たい……。
これ……どう考えても人間の体温じゃない。
だが、彼女は元気よく歩いているし、話もする。
つまり彼女は――――死人だ……!
「ん? どしたの僕ちん?」
「ん……? うぅん。何でもないよ……!」
「そ……? ならいいやっ!」
彼女は俺の手を引きながらこちらへ振り返り、怪訝な表情をうかべた後、ニコリと笑い再び前を向いて歩き出した。
――どういう事だ……?
正真正銘、彼女は死人……。
ジャペンには今、五芒星の一角、リッチーのロクサーヌがいる。
てことはつまり……彼女はロクサーヌの部下……?
それとも彼女が……ロクサーヌ……なのか……?
どちらにせよ、俺は今ロクサーヌの拠点へと向かっている。
危険は承知の上。だがこれはチャンスでもある。
ロクサーヌの計画を先に知り、未然に防ぐ事が出来るかもしれない。
そして俺は、周囲の警戒をしつつ、彼女に手を引かれるまま、ロクサーヌの拠点へと向かった。
◇
彼女に手を引かれるまま暫く歩いていると、古びた一軒家に辿り着いた。彼女はそこで足を止め、扉を開けて俺を中へ誘う。
「さぁー! 着いたよー! ウチのお家へようこそー!」
「お、お邪魔しまーす……って何これ……?」
俺は恐る恐る足を踏み入れた。すると中は、割と普通の家――――というわけではなかった。
家の中は白と黒を基調とした家具に、ピンクと黒の豹柄のベッドシーツとカーペット。そしてよくわからないキャラクター物のぬいぐるみの数々。
――ぎゃ、ギャルの部屋だ……!
アニメや漫画で見たギャルの部屋まんまじゃないか……!!
何ともまぁ、よくここまで異世界で再現したものだ……。
ていうかコイツ……もしや俺と同じ異世界人か……?
外見もそうだが、部屋までもとなると、流石にそれを疑わずにはいられない。
「いいっしょ、この家! 私の為にみんなが作ってくれたんだよねーっ。私の趣味をよくわかってるつーかさ! 最っ高に可愛いし、アガるっしょ?」
「ちょっとそれはよくわからないけど、まるでギャルみたいだね」
俺がそう言うと、彼女は目の色を変えて俺の手を握った。
「え、マジ……!? 僕ちん、ギャル知ってんの!?」
――この反応……。
やっぱりコイツ……異世界人か……。
「知ってるさ。俺も同じ異世界から来た人間だからな」
俺は彼女に対して、最早、魔王ムーブも子供ムーブも必要ないだろうと、ただの四〇歳のおっさんとして返答した。しかし、彼女から返ってきた言葉は意外なものだった。
「じゃあさ、じゃあさ! ウチにもそのギャルってヤツ、教えてよっ!」
「は……?」
その瞬間、黒とピンクに彩られた部屋に、沈黙が流れた。
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