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転生ショタ魔王、世界平和の為に家出する〜チートを持ったお人好しによる世直し旅〜  作者: 青 王(あおきんぐ)
第六章 ジャペン編

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90話 大航海


「だって船には、トイレがないでしょ……?」


 リリィは盛大な勘違いをしていた。


 ――いやいや、リリィ。船にもトイレくらいあるぞ。

 しかもこんなに大きな船なら尚更だ。

 いや、待てよ……?

 現代の船には勿論トイレはあったが、この世界ではどうだ……?

 魔法やスキルがある代わりに、文明レベルはそこまで高くない。

 え……。どっちだ……?

 

「大丈夫よ、リリィ。船にもトイレくらいあるわ?」


 ――あ、やっぱりあるのね。よかった……。

 

「そ、そうなの……? じゃあトイレの水はどこに流れるの……? ――――ま、まさか……!?」


 リリィは何かを悟った様な顔をして、手に持った魚の串焼きを見つめた。そして段々と顔が真っ青になっていくと、遂には手に持ったソレをボンズへ手渡した。いや、"押し付けた"。


「えっ……!? リリィ、これ好きなんじゃないの?」


「リリィ……魚嫌い……。だって、汚いもん……」


 ――あらぁ……。これまた盛大な勘違いをしちゃってるなぁリリィは……。

 もしかして体内から出た汚物を、そのまま海に流すとでも思ってるのかな。

 そんなわけないでしょうに。

 

 確か、現代のマリントイレは浄化槽に貯めて、バクテリアとかの作用で浄化してから流すんだっけか?

 ならこの世界にも同じ仕組みがあるだろう。

 しかもこっちは魔法でだからな。

 もしかしたら、現代のものよりも綺麗になるんじゃないか?


「大丈夫だよ、リリィ! 船には浄化タンクっていう汚れた水を魔法で綺麗にする所もあるし、海にも水を綺麗にする無害な小さい魔物もいるから、魚は全然汚くないよ! それに魚屋さん達も焼いたりする前に綺麗に洗ったりするだろうしね!」


 俺がそんな事を考えていると、落ち込むリリィに対して、ユーリが船の浄水について説明し安心させようと声を掛けた。俺達は皆、そんなユーリの《《らしくない》》言動に驚き、唖然としていた。


 ――ユーリが珍しくまともな事を……!?

 しかもこんな知的な……。何があった……!?


「ユーリ……。ユーリは本当にユーリなの……?」


「えぇ? 何を言ってるの、エル? 俺は俺だよ?」


「いや、だっておかしいじゃない……! 何でユーリがそんな事を知っているのよ!?」


「え、だって――――そこに書いてあるもん」


 セリーヌが問い詰めると、ユーリは真顔で小さな看板を指さした。それは水族館などでよく見る、子供向けに書かれた海についてのわかりやすい説明文だった。


 俺達はその看板をじっくりと読み、そして安堵した。


(((((よかった……。ユーリはユーリだ……)))))


「何さっ……!? 俺がこういう事を言うのがそんなにおかしい!?」


 ユーリはみんなの表情を見て、頬を膨らませる。俺達は決して悪気があった訳ではなかったから、すぐに首を横に振った。


「ありがとうユーリ……。これで魚を嫌いにならずに済んだ……。――――それより……ボンズ……。魚、返して……」


「え、うん……わかったよ。どうぞ」


 リリィはユーリに礼を言うと、ボンズに押付けた魚を返してもらい、嬉しそうに頬張った。それを見た俺達は皆、優しい顔になっていた。


 ボーーーーーーーーン……


 すると突然、船の汽笛が鳴った。


「あ、そろそろ乗船しないといけない時間だわ……!」


「え、そうなの!? じゃあみんな急ごう!」


 セリーヌがその汽笛の意味を口にすると、ユーリを先頭に俺達は順に乗船した。

 そしていよいよ、俺達を乗せた大きな船は、ジャペンに向けて出港する。



 ◇



 乗船してから二時間が経過した頃。

 俺達は全員で船の甲板の先で、風を浴びながら遠くを眺めていた。



「うぅー……。気持ちわるーい……。セリーヌ……回復魔法をかけてよー……」


「えぇ……無理よそんなの……。だって私も……気持ち悪いんだからぁっ……うっ……」


 ユーリとセリーヌは、船酔いを発症し、真っ白な顔をしていた。


「あぁ〜……世界が揺れてるぅ……。ハッ……! これも魔族の仕業かぁ……?」


「そうかもしれないわね……。もし本当にそうなら……うっ……ただじゃおかないんだから……ううぅっ……」


 ――いや、どう考えてもただの船酔いだ。

 ていうか、船酔いが酷くて二人とも、声にいつもの覇気がないな……。

 

「情けないですねぇ……。勇者と聖女ともあろう二人が、こうも揃って船酔いとは。先が思いやられます。オイラは全然へい…………おえぇっ……」


 序盤は調子よく語っていたボンズも、最後には盛大に海へ汚物を吐き散らした。


 ――全然平気じゃないじゃないか……!

 盛大に吐き散らし過ぎだろ。汚いな……。


「ちょっと!! 汚いよ、ボンズ! リリィのお魚が汚れちゃうじゃん!」


 そんなボンズに対し、リリィは今まで聞いたことがないないくらいの大声で責め立てる。


「まぁまぁリリィ。気持ちはわかるけど、海もきっと綺麗になるし大丈夫だよ。それより、リリィは船酔いしないんだね?」


 海に顔を放り出し、横一列に並んで盛大に吐き散らす三人を他所に、俺はリリィに声を掛けた。


「リリィは大丈夫。だって、ふにゃちゃんがいるもん……!」


 リリィがそう言うと、彼女の胸元からふにゃ丸が顔を出す。


「オレの力でリリィに状態異常を無効化しているクリン! どうだクリン!」


 ――なるなど、そういう事か。

 だからリリィは船酔いしなかったんだな。

 それにしてもさすがは、魔族内序列二位で旧四天王のふにゃ丸。何をやらせても万能だ。

 これからの時代は、いちパーティーにいちふにゃ丸だな。


「いつもありがとう、ふにゃちゃん……!」


「どういたしましてクリン!」


 二人は互いに顔を見合わせ、仲が良さそうに笑っていた。

 

「ところで、スカーレットは何で平気なの?」


「私ですか? 私は船に乗った時から、少しだけ身体を浮かせておりますから、揺れを感じないのですよ」


 俺は自慢げに話すスカーレットの足元を良く見てみた。すると本当に、ほんの数ミリ程度身体が浮いていた。


 ――さすがは有能お世話係……。

 こんな状況でも抜かりないな。

 驚く程に冷静で、しかも他のメンバーにはそれを教えない所がとてもスカーレットらしい。


「凄いね、スカーレットは……。それじゃあ、エルはどうして、船酔いしないの……? エルも何か魔法を使ってるとか……?」


「エル様はそんなに貧弱ではありません。この程度の揺れなど、何も感じませんよ。ね……? エル様!」


「う、うん……そうだね。ははは……」


 何故か自分の事の様に誇らしげに自慢するスカーレット。俺は愛想笑いを浮かべ適当な相槌を打った。


 ――いやいや、俺にもちゃんと揺れは伝わってるよ?

 ただ俺は元々三半規管が強いだけだ。

 前世でも、一度も乗り物酔いとかした事なかったし、このショタボディでもそれは健在だったようだな。

 それにしても、あの三人……。さっきから一生吐き散らしているな……。

 さすがに見ていられないな……。


「あの三人……可哀想だね……」


「じゃあ、私の魔法で身体を浮かせてあげましょうか……。えい……!」


「あ、ちょっと待っ――――」


 手遅れだった。俺が止めに入った時には既に、スカーレットは魔法を行使し、三人の身体を少しだけ浮かせていた。


「おわっ!? うっ……。何だか、余計に揺れを感じて……うぅ……!」


「私……もう……だめ……」


「オイラ……来世では……鳥になりたいな。そしたら……船酔いとかならないもん……ね……」


 スカーレットが良かれと思ってとった行動は、返って三人の症状を悪化させてしまったようだ。


 ――そりゃあそうなるわな……。

 絶賛船酔い中の人に、変な浮遊感を与えると更に気持ち悪くなるに決まってる……。



 その後も暫くの間、三人は身体の水分が全て抜けるのではと思える程に吐き続けた。

 そして俺達は、永遠に続く三人のえずき声をひたすらに聞かされるも、さすがにこの場に放置するわけにもいかず、三人の体調が回復するのを待ち続けた。

 最終的には痺れを切らしたリリィが、三人にふにゃ丸の力を使い、症状を和らげるという結果に落ち着いた。




ここまで読んで頂きありがとうございますm(_ _)m

これからも本作品をよろしくお願いします!


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