【閑話】 お仕置き後の魔族のその後①
エルがユーリ達と共に五芒星の一角、ゴラムと対峙していた一方で、以前エルにこっぴどく叱られ、お仕置きを与えられた配下の魔族達はというと――――。
◇
魔王城のとある一室。
五芒星シエスタの部下であり、記念すべき"エルのお仕置き第一号"のカマセーヌは、大量の書類整理に追われていた。
「カマセーヌさぁ〜ん、これもお願いしまぁ〜す」
「あ、カマさん。これもよろしくっす」
「カマセーヌ様、こちらも確認よろしいでしょうか」
「………………っ!」
一心不乱に机の上にある書類を片付けていくカマセーヌだったが、次から次へと空いたスペースに新たな書類が放り込まれる。
我慢に我慢を重ねて来たカマセーヌだったが、一切悪びれる様子もなく、ひたすらに書類を重ねていく三人の部下達に怒りの限界が来たのか、握っていたペンを片手でへし折った。
「カマセーヌ様……?」
そんなカマセーヌの様子にいち早く気付いた一人の魔人が、彼の顔を覗き込む。
「ぐああああ!!! ざっけんなよ、マジで……!! 終わるかよ、こんな書類の山がよォ!!」
そして遂に、カマセーヌはブチ切れた。
「落ち着いて下さい……!!」
「落ち着いていられるかボケェ……!! だいたいどうなってんだよ!? 魔王様だけならともかく、五芒星の奴らまで全員城からいなくなるなんてよォ!?」
「カマさん。五芒星の"方々"っすよ」
「うっせぇわ!! 黙ってろボケ……!!」
部下に揚げ足を取られ、更に苛立ちを募らせるカマセーヌ。しかしそんな事をしていても、書類の山は消えてなくなりはしない。
「だいたいカマセーヌさんが書類整理なんか引き受けるから、こんな事になってるんじゃないですかぁ〜」
「しょうがねぇーだろ!? 書類整理はお偉いさんのサインが無いとダメだし、五芒星の"方々"が全員いなくなって、じゃあその次に偉いのは誰だって言われたら、俺が手ェ上げるしかねぇーだろ……!!」
「やっぱりただの見栄っ張りなんじゃないっすか。別に他の人に任せれば良かったんすよ。それに、だいたいウチは魔物飼育課っすよ?」
「そうですよ、カマセーヌ様。それなのに貴方が勝手にウチの魔物達を引き連れて人間族の王都なんかに行くから、魔王様に叱られたのでしょう? そのせいで未だに、私達まで他の魔族から白い目で見られているのですからね?」
三人の部下達によるカマセーヌへの文句が止まらない。当の本人は正論で詰められているが故に何も言い返すことも出来ず、ただプルプルと怒りに震えていた。
「あぁー……うっせぇうっせぇうっせぇわ……!! じゃあ全部俺が悪いって言うのかよ!?」
「そうだと思いまーす」
「そっすね」
「その通りです」
カマセーヌが苦し紛れに放った一言も、三人の部下達に即答で返され、完封される。
「ち、ちげぇーよ! だいたいテメェらがあん時、俺に手ェ貸さねぇから王都を攻めきれなかったんだ……! 違うか!? ケル、ベロ、スゥ……!!」
ケル、ベロ、スゥとはこの三人の部下達の名である。
因みに三人は今でこそ魔人の姿であるが、基本はケルベロスという犬型の魔物である。
これは余談だが、三人が魔人の姿になっている時も、獣の耳と尻尾は健在である。
「私はぁ〜、どっちでもよかったんですけどねぇ〜? 二人がぁ〜行きたくないって言うからぁ〜」
「あぁ、俺はただめんどくさかっただけっすよ。今時、人間を滅ぼすとか流行んないっすよ?」
「私は手塩にかけて育てた可愛い魔物達を、そんな事に使いたくなかっただけです」
ケル、ベロ、スゥの三人は、各々の意見を上司であるカマセーヌへとぶつける。
八つ当たりを続ける上司に対し、部下が思った事をしっかりと伝えられるというのは、良い職場である証拠だ。もしかしたら魔王城はホワイト企業なのかもしれない。
「テメェら……本っ当に口が減らねぇなぁ……!? 鬱陶しいから黙って手ェ動かしやがれっ……!!」
「「「それはアンタだよ……!!!」」」
そして盛大なブーメランがカマセーヌの顔面に直撃したところで、四人は書類整理を再開した。
これも余談だが、この書類整理デスマーチは五芒星の面々が魔王城へ戻るまで続いたそうな。
◇
魔族領内・血の海ビーチ
魔族領内で高い人気を誇る、血のように真っ赤に染まった海のビーチに、一人の男魔人が沢山のサキュバスを侍らせていた。
「ふっ……。最高の気分だ……」
サキュバス達に囲まれて、スカした顔で海を眺めるこの男魔人も、かつてエルにお仕置きを与えられた一人である。
「ヤラカスさまぁーん……♡ はい、あーん……♡」
「あ〜ん……♡ ん〜! おいちぃ〜……!」
「やだぁ……ヤラカス様ったら、どこを召し上がっているのですかぁ〜?」
「んふ……! んふふふふ……!」
そう。この気色の悪い笑みを浮かべて、サキュバスに堂々とセクハラを働いているのが、かの有名な"魔族一不細工な男"ヤラカスである。
だが、エルのお仕置きによりユーリ並みのイケメンに生まれ変わったおかげで、今は以前のような火属性魔法ではなく、"大人の火遊び"に興じている。
「ヤラカスさまぁ? いつまでもこんな事をしていていいのですかぁ?」
「ふっ……。なに、先代魔王様のお気に入り(※自称)の俺に指図出来る者など、この魔族領内において魔王様以外にはいない。加えて? その魔王様も今はご不在。つまりはロングロングバケーションという事だよ」
サキュバスの問いに、伸ばし始めた髪をかき上げながら、訳の分からない理屈を並べるヤラカス。ここにエルやスカーレットがいたら大目玉をくらっている事だろう。
「でも、その魔王様に新たな策を練るように言われたんじゃないんですかぁ?」
「そうなのだが、俺は生まれ変わって気付いたんだ。争いなど無意味で時間の無駄だとね」
「じゃあ私達はずーっと、ヤラカス様と"楽しい時間"を過ごせるのですね……♡」
「んふふふふ……。そういう事だよ……♡」
「「「キャーー♡」」」
ただ、ヤラカスの考えは曲解しながらも、何故かエルの真意に近付いていた。すると大騒ぎするサキュバス達の中の一人が、徐に口を開いた。
「でも私、ここのビーチもそろそろ飽きちゃいましたぁ。ねぇ、ヤラカス様? 私達をどこかに旅行へ連れて行ってくれない……?」
「ふっ……。いいだろう。で? 具体的にはどこへ行きたい?」
サキュバスの上目遣いのお願いに、鼻の下を伸ばしながら答えるヤラカス。
それを受けサキュバス達は旅行先をどこにするか話し合いを始めた。
「やっぱり食事が美味しい所がいいよね」
「海が見える所がいいわぁ」
「せっかくだし、そこにしかない物が多くある所だといいわよね」
「なら……あそこで決まりだね……!」
そして話し合いが終わると、サキュバス達は全員で顔を見合せ頷いた。
「どこへ行きたいか決まったかい? 君達が望む所へ、この俺が連れて行ってあげよう……!」
「私達、人間族の領土にあるジャペンという所へ行きたいですわっ……!」
「ほぉ……ジャペンか。確かにあそこは食事も美味で、景観も良いと聞く。ならばそこへ行くとするか」
「ありがとう、ヤラカス様ぁ!!」
「これはたっぷり楽しまないとね……♡」
「食事が楽しみね……!」
こうしてヤラカスとサキュバスの一行は、図らずもエル達の次の目的地と同じジャペンへと向かうことになった。彼らの運命や如何に……。
ここまで読んで頂きありがとうございますm(_ _)m
これからも本作品をよろしくお願いします!
また、【ブックマーク】と【いいね】と【レビュー】も頂けると嬉しいです( *´꒳`* )
気に入った! もっと読みたい! と思いましたら評価をお願いします!
下の ☆☆☆☆☆ ▷▶ ★★★★★ で評価できます。
最小★1から最大★5です。
★★★★★なんて頂けた日には、筆者のモチベーションがぐぐーんと上がります\( ´ω` )/
是非ともよろしくお願いします!




