88話 次なる目的地
可愛いゴラムと別れ、俺はユーリ達の元へと戻ろうと山を駆け下りていた。
そして俺の視界に彼らを確認すると、俺は木陰に隠れ様子を伺っていた。
「ここでバレたら今までの苦労が水の泡だからな……。こっそりとスカーレットの背後に回り込まないと……」
幸いな事にスカーレットは木を背にして、みんなの後ろに立っていた。
俺は瞬間移動を駆使して何とか彼女の背後へと回り込む。
「スカーレット……戻ったぞ……。皆は無事か?」
俺は小声でスカーレットに話しかける。
「エル様……? よくぞご無事で……。こちらも滞り無く、全て順調に済ませました」
「そうか……。では今から分身体を消して、本物の俺と入れ替わる。準備は良いか?」
「…………!」
俺の問いにスカーレットは分身体を抱きしめ、無言の抵抗を見せる。
「駄目だと言っただろう。それはスカーレットにはやらん。――――では消すぞ? 【分身体 削除】……!」
「あぁ……!!」
俺が有無を言わさず分身体を消すと、スカーレットは悲痛な叫びを上げた。
俺はそんなに無慈悲な事をしたのだろうか。
そして本物の俺は木陰から飛び出し、スカーレットに抱っこしてもらった。
「どうだ、本物の抱き心地は? 分身体なんかよりもずっと良いものだろう?」
「えぇ……。スーハー……。最高です……」
「貴様……匂いを嗅いでおるのか……?」
「幸せな匂いでございます……」
俺を抱きかかえ、顔を埋めて匂いを嗅ぐスカーレットは恍惚な表情を浮かべていた。
そして俺自身もスカーレットの柔らかみに触れ、満更でもなかった為、その事については触れなかった。
「それよりスカーレットよ。ゴラムは女だと知っていたか?」
「……? 知っていましたよ? エル様はご存知なかったのですか?」
――俺が知るわけないだろうが……!
実際にゴラムと会うのは初めてだったんだし、誰も教えてくれなかったからな……!!
「知らなかったぞ……。奴の核を引き抜いて少々驚いた」
「そうでしたか。それは申し訳ありませんでした。ところで、あの岩はちゃんと反省していましたか?」
「まぁ初めこそ抵抗して聞く耳を持たなかったが、俺の真の姿を見たら途端に汐らしくなって、反省し始めよったわ」
「ふんっ。他愛も無い奴ですね。真の姿を見ないと反省しないとは、エル様の配下として失格ですね。死刑でも良かったのに」
――俺の真の姿を見るまで気が付かなかったのはスカーレットも同じだろうが……。
まぁいいか。それよりスカーレットは何でそこまでゴラムを嫌うのだろうか。
何だか物凄く気になって来た……。
「死刑は俺のポリシーに反するからしなかったが、しっかりとお仕置きも与えたし、先程ギガンテスの修繕も終わったところだ。これからは俺の為に尽くすそうだ」
「当然です。エル様の配下である以上、エル様に尽くす事は義務……いや、幸せな事なのです。あの岩も漸くその事に気が付いたのですか。遅すぎます。やはり死刑ですね」
「先からやたらと死刑に拘るが、スカーレットは何故そこまでゴラムを嫌うのだ? 前に何か因縁があるとか言っておったが……?」
俺の問いにスカーレットは苦虫を噛み潰したような表情で虚空を睨み、口を開いた。
「だってあの岩……。私を"ショタコンデカパイサキュバス"などと呼称したのですよ……? 許せますか……?」
――確かにその呼び名は少々オブラートに包む必要があるとは思うが、スカーレットよ……。
かなりお怒りの様子のところ悪いが、それについては何も間違った事は言っていないと思うぞ?
「そ、そうか……。それはまぁ、なんというか……酷いな」
「そうでしょう……!? 有り得ませんよね……。だから私はこう言ってやったのです。『黙れ、"ヒョロガリ貧弱チビ棒人間"が……!』とね。それからですね。奴が岩のような姿で出歩くようになったのは」
「何……? では、それまでゴラムは核であるあの細い体のままで生活していたのか?」
「えぇそうですよ? 奴は元々、ただの細い小さな女魔人ですから」
――ゴラムがゴーレム魔人になったのは、お前のせいかァァァ!!!
今の話から察するに、強さを求めて暴れ回ったのも元を正せばこのスカーレットの発言からじゃないのか……!?
さっき俺は、あんなに自分を責めたというのに……!
いや、もういい。俺が家出した事も原因ではあるんだし、この件でスカーレットを責めるのは違うだろう。
「そうか……。もう何だか疲れた。――――それよりユーリ達はどんな感じだ? ゴーレムと戦って疲弊してはいないか?」
「疲弊するどころか大騒ぎでしたよ。自分達が強くなっている事を実感したのでしょう」
「そうか。なら、巨人族達にもギガンテスへと戻ってもらおうか。修繕も済んだことだしな」
「承知しました。では早速巨人族達へ、ギガンテスが修繕された事と、もう戻っても良い事を伝えて参ります」
「あぁ。頼む」
スカーレットはそう言い残すと俺を地に下ろし、巨人族達の元へと向かって行った。
俺はユーリ達と合流し、わざとらしく欠伸をしながら輪の中へと入っていった。
「みんなァ……おはよー」
「エル……! やっと起きたのかぁ!」
「エルきゅん、おはよう! 寝起きもとっても可愛いわね」
「おはようエル……。騒がしかったけど、よく眠れた?」
「うん、みんなおはよう。僕いつの間にか寝ちゃってたみたい……。――――それより僕、お腹空いたよー」
俺は更にわざとらしく子供ムーブを続ける。
なぜなら何とかして、皆をジャペンに行くように仕向けないといけないからだ。
「エルきゅんのお腹が空いたのなら、どこかの街で食べて行く? うん、それしかないわね……!」
――やはりセリーヌが一番初めに食い付いたか……!
よし、このまま他のメンバーも釣り上げたいところだ。
「うぅん。僕、お米が食べたいんだ……」
「米かぁ……。確かにブリジアで食べた米は最高に美味しかったよなぁ」
――ナイスアシストだ、ユーリ……!
普段はアホなくせに今日は勘が冴えているな……!
「お米と魚……。じゅるり……。リリィも食べたい……」
――米といえば魚。さすがはリリィだ。
ヨダレを垂らしながらナイスアシストだ……!
「ならもう一度ブリジアに戻りますか? ここからならオイラ、案内出来ますよ?」
――ちがぁぁーーう!!
違うぞボンズ……!
ブリジアは俺の目指す所ではない……!!
「違うよボンズ。僕は本物のお米が食べたいんだよ」
「本物のお米……?」
俺の言葉を受け、みんなはその言葉の意味を思案し始める。
――よしよし、いいぞ、考えろ。
本物の米が食えるところといえば何処だ?
しかし、俺の期待とは裏腹に、一向に答えにたどり着かない一同。
痺れを切らした俺は、自ら口を開く。
「そ、そーいえば……女将さんに聞いたんだけどー。ジャペンって所がお米の名産地なんだって!」
――どうだ……?
流石にこれでみんな、ジャペンに気持ちが向くんじゃないか……?
「ジャペン……。確か海の向こうにある街よね? 私、行ったことがないわ?」
――うーん……!
セリーヌはまさかの微妙な反応……!
これは幸先が悪いな……。
「オイラも無いですね。確か食事がとにかく美味しいのだとか」
――でかした、ボンズ……!
これで必ず"あの子"が乗ってくるはずだ……!
「…………! リリィも行ったことないよ……。ご飯が美味しいなら行ってみたいかも……!」
――やはりな……。
リリィなら飯の話題を出せば、乗ってくるだろうとわかっていた……!
ナイスアシストだボンズ……!
後はユーリ……お前が宣言するだけだ……!!
「――――よし。なら次の目的地はジャペンにするか!」
「「「異議なーし!」」」
――キタァァァァァ……!!!
いやぁ、正に総力戦だったな……。
完勝だ……。
こうして皆の丁度いいアシストもあり、何とか目的地を上手くジャペンへと誘導する事に成功した。
そして俺達は遂に海を渡り、ロクサーヌがいるというジャペンへと向かうのだった。
第五章 第三の街ブリジア、ギガンテス編 〜完〜
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