8話 国王の逆鱗
王の間へ入った俺とユーリは国王の低く野太い声に迎え入れられた。
「よくぞ参った。勇者ユーリとその弟エルよ」
国王が言葉を発すると、部屋の中にいた衛兵や騎士達は即座に膝まづき頭を下げた。そして俺とユーリもそれに合わせて頭を下げる。
辺りをキョロキョロと見渡してみたが、勇者パーティーのメンバーらしい人は見当たらなかった。
――それよりもこの国王だ……。
国王の見た目はおよそ四〇歳過ぎくらいで、金髪と白髪が入り交じった髪と長い髭を生やしているのが印象的だ。それに五〇〇年前に俺のパッパと喧嘩した割には若すぎないか……?
そう思ったがすぐに俺は自分の認識の間違いに気が付いた。
――いやいや、待てよ。
そもそも人間が五〇〇年も生きられるわけがない。
この国王が俺のパッパと喧嘩したのかと思ってたが違う。
魔族は人間族よりも長命だから五〇〇年間争いを続けても魔王は一代だが、人間族の国王は何代にも渡って変わっているんだ。
俺がそう認識を改めていると、暫くして国王が話を始めた。
「おもてをあげよ。ユーリとエルよ。遠い所からよくぞ参った。ご苦労であった」
「いえ! 何をおっしゃいます国王様! 俺は魔王を討伐すべくここへ参上した次第でございます」
――へぇー。こいつアホのくせにこんな話し方も出来るんだな。
丁寧な言葉遣いで話すユーリを横目で見ながら、俺は少し感心していた。
「して、ユーリよ。儂に何か言うべき事はないか?」
――おっと……。これは恐らく俺の事だな。
そらそうか。勇者ユーリを呼び出したのに急に出処のわからないガキを連れてきたんだからな。
ユーリ……上手く説明しろよ?
「はっ。 実は先程……。廊下にあった高そうな花瓶を割ってしまいました……!」
「……なにぃ!? 花瓶を割ったじゃとぉ!?」
――何でぇ!?
やりやがったよコイツ……!
絶対国王が聞きたかったのはそれじゃないだろぉ!?
「も、申し訳ありません!!!」
「あ、あれは、妻に貰った大切な花瓶じゃ……。それをお主は割ったと申すか……」
国王は少し怒っているのかプルプルと身体を震わせていた。そして国王の横に座っている女性――――恐らくは王妃なのだろうが、彼女は口と目を大きく見開いて驚いている様子だった。これぞ正に『開いた口が塞がらない』状態だな。
「も、申し訳ありません! そんな大切な物とは知らずこの様な……!」
「ふぅー……。もう良い……。割ってしまったのならば仕方あるまい。今回は多目に見てやろう。しかし、儂が聞きたかったのはその話ではない。話すべき事が他にあるであろう?」
ユーリは国王にそう言われ暫く思案した後に、ゆっくりと口を開いた。
「非常に申し上げにくいのですが……」
「良い。申してみよ」
「先程から王妃様の胸元を、チラチラと見てしまっておりました…………!!」
「………………っ!!!???」
ユーリがそう言うと王妃は胸元を手で隠し、国王は明らかにさっきより怒っているのがわかった。
――コイツ何言ってんのーーー!!!???
業火に更に油を注いでどうする!?
ここまで来たらもうアホを通り越して尊敬すらするわ……。
まぁ確かに? 王妃様は俺好みの綺麗な人ではあるよ?
出るとこは出て、引っ込むとこは引っ込んで。
ユーリがチラ見してしまうのもよーくわかる。
ただ、今ここでそれを言わなくてもよかったんじゃない?
そして俺はチラッと国王の方へと目をやる。
すると……。
――ほら見てみろ。
国王さん、顔を真っ赤にして、金色の髪と髭を有り得ないくらい逆立てて怒ってるぞ。
まるでスーパーなサ○ヤ人のようだ。
もう時期に「クリ○ンのことかァァァッ……!!!」とか言い出すぞ……?
「お主……。儂の妻、クリソンの事をそのような目で見るとは……。勇者と言えど許さんぞ……! ――――儂は怒ったぞォォォ……!!!!」
――あ、王妃様クリソンって言うのね。
まさかのニアピンじゃん。
悟○さながらの言葉まで発して……。
あんたが誰かに怒られるぞ……。
いやいや、そんな事は今はどうでもいい。
どうすんの? この状況。
ユーリ君? ちゃんと自分の言葉の責任は取りなさいよ?
するとユーリは勢い良く頭を床に打ち付けると、額を擦り付けながら謝罪の言葉を叫び始めた。
「申し訳ございませんでしたァァァァ!!! ですから国王様! どうか落ち着いて下さいませェェェ!!」
「落ち着いていられるか! このクソ外道がァァァァ!!」
完璧な土下座の体制で大声で謝るユーリに対し、国王は怒り狂い椅子から立ち上がると、凄まじい殺気を放ちながら殴りかかった。
しかしその刹那――――――
ウーーーーー! ウーーーーーー!
『ただ今王都近郊にて、大量の魔物による進軍を確認! 一五分程で王都へ到着の見込み……! 戦える者は直ちに王都門前へと集結して下さい! 繰り返します――――』
城内に警報が鳴り響いた。
すると先程まで怒り狂っていた国王の熱が一気に冷め、周りの衛兵や騎士達に指示を出し始めた。
そしてユーリに胸元を見られたせいで恥ずかしがっていたクリソン王妃も、凛々しい顔で立ち上がりユーリに向かって声を掛ける。
「先程は少し恥ずかしい目に遭わされました……。国王も酷くお怒りになられました。しかしそれらは全て不問といたします。ですのでしっかり勇者の使命を果たすのですよ」
クリソン王妃はそう言うと前傾姿勢で俺とユーリの顔を覗き込み、ニコリと微笑んだ。しかし俺とユーリはその微笑みに気付く事はなかった。
なぜなら俺達の視線はそのたわわに実った大きな果実へと集中していたからだ。
「――――っ!! 貴方はまた私の胸を……!! もういいです! 別室に待機している勇者の仲間になる方々と合流し即刻、王都門前へと向かいなさい!!」
「「はい!!!! 承知いたしました!!」」
俺達はクリソン王妃に叱られ、急いで部屋を出て別室にいるという勇者パーティのメンバーの元へと向かった。
「貴様……本当にアホだな。しかもスケベで最低だ。実にけしからん。勇者の風上にもおけんな」
「う、うるさいな!! 普通の男の子だったら気になるだろう!? 最後はエルも見てたし!! それに花瓶を割っちゃったのも事実だし、言わない訳にはいかないじゃん!?」
――あぁ、コイツ本当に真面目で馬鹿正直な奴なんだな。
いい意味でも悪い意味でも嘘をつけない、真っ直ぐな男。
現代で流行っていた追放物のクズ勇者よりかは幾分かマシか。アホだけど……。
俺がそんな事を考えていると、気が付けば勇者パーティーのメンバーが待つ別室へと到着した。
「俺の仲間になる人達はどんな人かな? 何だかワクワクするね! エル!」
「あぁそうだな。貴様の様にアホじゃなかったらいいが……」
「ひっどいなー……! 俺はアホじゃないっ!」
「国王に殺されかけておいて何を言っているんだか……。ほら、さっさと中に入るぞ」
「あ、エル! 待ってよ……!」
そして俺達は部屋の中へと入り、いよいよ勇者パーティーのメンバーと出逢う。
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