86話 最高
「あの、もしよろしければ何か着るものをくれねぇーですか……?」
「何を恥ずかしがっておる。男のくせに情け――――」
「――――俺様……女なんですっ……!」
「な、何だと……?」
ゴラムの突然のカミングアウトに、時が止まった。
――嘘……だろ……?
ゴラムは男じゃなかったのか?
スカーレットだってゴラムの事を――――いや、一度も性別には触れていなかったか……。
岩とか奴って呼んではいたけど、一度も"彼"とは言わなかった。
「貴様……本当に女性なのか……?」
俺の問いにゴラムは黙ってこくりと頷き、何やら恥ずかしそうに自らの手で身体を隠している。
――いやいや……! ちょっと待ってくれ……。
見れば見る程、女性にしか見えなくなってきた……。
でも、今のゴラムは髪の毛とかそういうのも無いし、身体が棒人間の様に細く、表情こそわかるものの、顔もほぼ"線"だからよくわからない。
じゃあ何を基準にゴラムを男として認識していたのかだが、それは一人称が"俺様"な事と、ゴーレム時の屈強な姿だ。
それだけでゴラムを男扱いしていたのは、些か早計だったか……?
いや、そんな事ないだろ……。
ていうか俺は女性であるゴラムに対し、無理矢理衣服を脱がせたり(※ゴーレムの中から核であるゴラム本体を引き抜いた)、素っ裸の女性の身体を鷲掴みにしたり(※逃げない様に掴み、握り締めていた)したのか……?
もしかしてこれは、れっきとした"セクハラ案件"なのではないか……!?
「ゴ、ゴラムよ……! 頼むからセクハラで訴えるとかは辞めてくれよ……? 違うんだ……アレは貴様を止める為に仕方なくだな……」
「…………?」
ゴラムはよくわからないといった表情を浮かべているが、もしそんな事をされれば魔族領中に――――いや、世界中に俺の名が性犯罪者として轟いてしまう……!
◆
『本日未明。職業不詳、自らを魔王と名乗る一〇歳の少年――――"バン・メヌエセント・グリトグラ・テンスラ・オバロ・コノスバ・ダンマチ・リゼロ・コノヨノダレヨリモオヒトヨシ・メッチャイイヤツ・ダケドドウテイ・エルグレイド三世"容疑者が強制わいせつや、その他の容疑で逮捕されました』
『調べによりますと、ダケドドウテイ容疑者は、被害者の女性に対し、強制的に衣服を脱がせ身体を触る等のわいせつな行為に及んだとされています』
『捜査関係者によりますとダケドドウテイ容疑者は、かけられた容疑に対し「そんなつもりは無かった。目的の為に仕方なくやった」と供述しており、全く反省しておらず、再犯の可能性が極めて高いと見られています。――――それでは次は可愛い猫の話題です! 〖今日のにゃんこ〗』
◆
――ま、まずい……!
そんな事になったら俺の目的(種族間の争いを無くし、平和な世界にすること)を達成するなんて、夢のまた夢になってしまうぞ……。
あと、俺の事を"ダケドドウテイ"と呼ぶのはやめてくれ。
そして〖今日のにゃんこ〗はどこの局で放送されているんだ。後で教えてくれ。
俺がそんな様々な思案をしていると、ゴラムは恥ずかしそうにしながらも、徐に口を開いた。
「あ、あの……エル様……。もしかして俺様が自分の事を俺様と呼んだり、この姿があまりにみすぼらしいから、女に見えねぇーのですか……?」
――くっ……。図星だ……。
だが女性に対して、「貴様の姿は女性らしくない!」等と言うのは如何なものか……。
この問いに俺はなんと答えるのが正解なんだ……?
それに今思えば、女性に対しこの様な扱いは、もう既に相当なお仕置きになっているのではないか……?
よ、よし。ゴラムにセクハラで訴えられる前に、これがお仕置きだったということで手を打ってもらおう。
そうだ……そうしよう……!
そして俺が更に思案を重ねていると、ゴラムがとある確認をして来た。
「エル様。この首輪は魔力制御が施されているとの事ですが、多少の魔法を使う事くれぇは出来るのでしょうか?」
「……? あぁ。そのくらいは可能だが……?」
――実際は魔力制御など施していないからな。
ていうかゴラムの奴……一体何をするつもりだ?
「そうですか。では、少しお待ちを……。――――【変身合体】……!!」
「なっ……!? 【変身合体】だと……!?」
俺が驚愕しているのを他所に、ゴラムの身体は某女児アニメの変身シーンの様に、宙に浮き、謎の光に包まれた。
そして変身が終わったゴラムは宙からゆっくりと舞い降りると、がおーと言い出しそうな可愛いポーズを決めた。
それと同時にゴラムの身体を包んでいた謎の光が弾け、変身後の姿が露になる。
その姿は先までの岩や瓦礫を組み合わせた無機質なゴーレムではなく、見た目はまるで人間そのものだった。
「ど、どうですかい……? エル様? これで少しは女らしくなりましたか?」
「か……かっ――――!!」
――褐色美女だとォォォォ……!?
褐色の肌に白髪がよく映えていて、キツめの目とギザギザとした歯はゴラムの荒っぽい性格が上手く反映されている……!?
それにさっき着けてやった首輪がチョーカーの役割を果たしていて尚良しだ……。
く……悔しいが、これは推せる……!
どうやったのかはわからないがそこには、これが魔法かと妙に納得してしまう俺がいた。
「ど、どうなんですか……? 俺様……ちゃんと女らしくなれていますか……?」
「――――ろ……」
「はい……?」
「敬語をやめろ……。そしてもう少しキツい口調でも構わん」
「で、ですがそれだとエル様に失礼じゃ……?」
「良い……!! 俺がそうしろと言っているのだ。敬語はやめて、もっと荒々しく話すのだ。それと声色は、少し低いくらいの女性の声で頼む。あ……あと一人称は俺様のままで構わんからな?」
(え、エル様……。何故突然、そんなにも早口に……? まぁいいか。それで尊敬するエル様が喜んでくれるのなら……)
俺の要求を受け、ゴラムは少し考え込んだ後、仁王立ちで腕を組み、大きな胸を上手く隠すと、上から目線で口を開いた。
「ふんっ! わーった! わーったよ……! エル様の望み通り、荒っぽい感じで話してやるよ! これでいいか!?」
「――――いい……!!」
俺は涙を流してグーサインを送る。
ゴラムはそれを受け、少し照れくさそうに笑っていた。
「し……しかし、未だ素っ裸というのはいただけんな。どれ、俺が何か服を出してやろう。どんな物がいいか望みを言え」
「へっ! 俺様に望みを聞くとはよくわかってんじゃねぇーか。そうだなぁ……。動きやすい服がいいなぁ。出来れば腕と脚は出しておきてぇってのが理想だな」
――なるほど……。
動きやすくて、腕と脚が出ている服が理想……。
となると、実家で妹がよくしていたあの格好――――
「ふむ。わかった。――――【メンズTシャツ ショートパンツ 発現】!!」
そして俺はゴラムの発注通り、動きやすい服――――つまり、男物のTシャツとショートパンツを発現させた。
「おぉ!? これは見た事ねぇ服だな!? よし、早速着てみるぜっ!」
そう言うとゴラムは少し興奮気味に俺が出した服を着始めた。
そして着替え終わったゴラムの姿に、俺は再度悶絶する。
「俺様的には中々気に入ってんだが、エル様はどうだ?」
「最高だ…………!! ありがとう、ゴラム……!」
「何の礼だよテメェ……」
――素っ裸だと目のやり場に困ると思い、服を着せた訳だが…………これはこれでエロい……!
あえて大きめのメンズTシャツにした事で、荒々しい外見なのに、どこか借り物感を演出している。
加えて、ショートパンツから見える健康的な太ももは富士の山頂よりも美しい。
そして極めつけは、下着を出し忘れてしまった事によるTシャツの襟元からのチラリズム……。
決してコレを狙って下着を与えなかったのではない。
断じて違う。
「…………コホン。あー……着替えも済んだ事だし、ゴラムよ。早速ギガンテスの復興作業に取り掛かってくれるか?」
「あぁ、任せろ! 俺様はエル様の言う事なら何でも聞くぜ!」
――何でもだと……?
貴様……その言葉。ゆめゆめ忘れるなよ……?
その後、ゴラムは黙々と瓦礫などを組み合わせ、壊れたギガンテスを復興させていった。
俺はそんな彼女をじっと見守った。他意は無い。
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