85話 落とし所
スカーレットとの通信を切り、俺は細ゴラムを自らの顔の位置まで持ち上げる。
「おい貴様……。自分が何をしたかわかっているのか?」
「へっ。何を凄んでやがる? さっきまで仲間の安否を心配して慌てていたくせによォ?」
ゴラムは俺がどれだけ圧を放とうが、相も変わらずふざけた態度を続ける。
「はぁ……。俺がこの姿でどれだけ貴様に詰め寄ろうが、全く反省の色を見せないな」
「あぁ? 何で俺様がテメェなんかに詰められて反省しなくちゃなんねーんだ?」
甲高い声でなめた口を叩くゴラムに俺は一つの答えを出した。
――コイツに対してはこの姿で何を言っても無駄だな。
幸い、ユーリ達はゴラムが放った新たなゴーレムの相手で手一杯だろうし、麓まで到達しているならそこから俺の姿は見えないだろう。
ならいっそのこと、コイツに俺の真の姿を見せて反応を見てみるか。
「貴様、その態度を俺にとった事。忘れるなよ?」
「あぁ?」
「ふぅ……。――――【変身 解除】」
そして俺は自らにかけていた変身を解除した。
すると先まで俺の手の中でふんぞり返っていたゴラムが、みるみるうちに姿勢を正していき、顔は青ざめていく。
「あ……あな……あなた様は……!?」
「はぁ……。ここまで姿を晒さんと気付けないとはな。貴様、それで本当に俺を尊敬しているのか?」
俺の手で強く握り締めているにも関わらず、それを諸共しない程にガタガタと震える細ゴラム。
「ま、魔王様……! い、いやぁ……まさか魔王様が相手だったとは思いもしなかったぜぇ……ガハハ……」
「俺は魔王だと名乗っただろうが? それに魔族の中で五芒星にまで上り詰めた貴様が手も足も出ない程の魔人が、俺以外にいると本気で思っていたのか?」
「ぐっ……た、確かに……。よくよく考えてみりゃあすぐにわかる事でした……」
俺が真の姿を見せた途端、ゴラムはわかりやすく反省し始めた。
その証拠にゴラムの身体は前傾に折れ曲がり項垂れている。
「貴様はもう少し人の話を聞き、冷静に状況を判断出来るようにならんとな」
「はい……。返す言葉もねぇーです……」
――なんだコイツ……。
急にめちゃくちゃしおらしいじゃないか。
さっきの勢いはどうしたんだよ。
「どうやら俺が本当に魔王だとわかった事で、少しは反省しているようだが。俺が何に対して貴様に怒っているかわかっているか?」
「はい……。俺様が魔王様に対して生意気な態度をとったことです……」
――あぁ、やっぱり魔族はアホなんだな。
期待した俺が馬鹿だった。
「違う。俺は貴様が何の罪も無い人間達を襲い、そして殺した事を怒っているのだ……!!」
「はぁ……?」
――何故そこでポカンとする?
普通はそこで「はぁっ!! そうでしたか……! それは大変申し訳ありませんでしたァ……!!」ってなるもんなんじゃないか?
何が「はぁ……?」だ……!
ボーッと生きてんじゃねーよ!
「だから……。あのな? お披露目会でも言ったが、俺は人間と争うなと言っているのだ。その言葉の意味が理解出来んのか?」
「はい……。だからこそ俺様達は急いで人間共を滅ぼそうと……」
「そうではなくて!! 人間と……タ・タ・カ・ウ・ナ・! わかる!?」
「え、えぇ。すげぇわかりやした……。で、でもそれだと魔王様の目的が――――」
「俺はそんな事、何一つとして望んではおらん! 俺はただ、人間と魔族――――この二つの種族の争いを止めて平和な世界にしたいだけだ……!!」
「…………っ!!」
俺がそうハッキリと言い切ると、漸くゴラムはハッとした表情を見せる。
「だが、俺の真意は今までの魔王とは違うだろう。だから貴様らが中々理解出来なかったのもわかる。もう少し貴様らに配慮すべきだったと今となっては思う。すまなかった」
「や、やめてくだせぇ……!! 魔王様が俺様達に謝る事なんかねぇーです……! わりぃのは全部、理解出来なかった俺様達ですから……!」
「ふんっ。そう言ってれると助かる……。まぁそれはそれとして。俺はこの真意を理解した上で、それでも俺の考えに背いて、人間に危害を加える奴らに関しては、徹底的に戦うつもりだ」
「そ、そんな奴……いねぇーと思いますぜ……?」
俺の意向を聞いたゴラムは真っ向からその意見を否定した。
先まで俺にめちゃくちゃ反抗していたのはどこのどいつだと言ってやりたかったが、俺はひとまずスルーした。
「それがいるのだ、ゴラムよ。して、貴様はどうする? 俺の真意を知った上で、まだ人間を襲うか?」
「い、いえいえ、そんな事……! もう金輪際、決して人間を襲わないと誓いやす……!」
「そうか……。――――だが、もう遅い。何故なら貴様は、既に何人もの人間を殺しているよな?」
「…………はい」
今のゴラムはとても反省しているように見える。
先の言葉にも嘘は無いのだろう。
だが俺はあえて厳しく、事実を突き付けた。
ゴラムがやった事は決して許されることではないからだ。
「それは貴様が死を持って償ったとして、許される事だと思うか?」
「…………いいえ」
――そんなに申し訳なさそうにしないでくれよ……。
毎度の事ながら、俺の真意を理解した上でしっかりと反省している配下達に説教するのはかなり胸が痛いんだ……。
それでも俺はコイツらの様な馬鹿な配下達に、魔王としてしっかりと躾をしなければならないんだよなぁ。
はぁ……魔王ってのも楽じゃないぜ……。
「ふん。ならば貴様はどうすれば許されると思う?」
「そ、それは……。これから魔王様の下で働き、人間達の為に誠心誠意尽くす事……ですかぃ……?」
「そうだな。ならば貴様が人間達の為に出来る事とは何がある?」
「俺様は土や岩を思い通りに操る事が出来やす。だから初めは、その力を使って俺様が壊した建物や街を元に戻したいと思いやす……」
淡々と質問を続ける俺に対し、うつむき加減で返答を続けるゴラム。
自分のやるべき事をしっかりと理解出来ているゴラムに、もうこれ以上何も言う事は無かった。
「そこまでわかっているのか。よく反省し、改心したようだな。ならば最後に俺は、貴様がもう悪事を働かない様に魔力制御を施した首輪を着けるが良いな?」
「勿論です……。何なりとしてくだせぇ」
そして俺はゴラムを自らの手から解放し、地面に立たせた。
地に足をつけ、下を向くゴラムに俺は一つの首輪を着けた。
先は魔力制御を施した首輪と言ったが、実はそんなものは施していないただの首輪だ。
ゴラムがしっかりと反省しているとわかったからこそ、あえて信頼の証としてこの首輪を着ける事にした。
これでゴラムは俺に魔力を制御されていると思い込み、間違っても魔力をフルで解放して暴れ回る事はないだろう。
ただ、ゴラムがやってしまった事は取り返しがつかないし、良くない事だ。
だが正直に言うと、どうしてやればゴラム自身も、被害に遭った人達も気持ち良くなれるのか――――その方法がわからない。
結局、俺の自己満足な制裁で許しを与えてやるしかないのがとても心苦しい。
こういう点から見ても、人間と魔族は一生分かり合えないのかもしれない。
それでも俺は種族間の争いが無い、平和な世界にしたいと思っている。
最初は女神様に言われたからやっていたという事もあるが、今では俺もこの世界に馴染んで来て、この世界が好きになった。
だからこそ、俺の本心――――いや、もっと深い部分でこの世界をより良いものにしたいと思っている。
残念な事に、一度死んでしまった人達は蘇らせる事が出来ないし、全て元通りというわけにもいかない。
死んで詫びさせようにも、謝る相手がいないんじゃ何の意味もない。
だから俺は、やらかした配下達にはしっかりとお仕置きをして、それから人間の為になる事をしてもらうのが今は一番いい方法だと思っている。
「よし、これで貴様は真に俺の配下になった。これからは人間や魔族といった種族に関わらず、世の為、人の為に尽くすのだぞ?」
「はい……。ありがとうごぜぇーます……」
「ならば顔を上げてシャキッとせんか! 貴様、男だろうが!」
「あ、あのぅ。その事なのですが……魔王様――――」
「これからはエルと呼べ。魔王というのは人間にとって恐怖の存在だからな。こちらの方が都合が良い。そして何だ? 何か言いたい事でもあるのか?」
何かを言いかけたゴラムに呼び方を矯正し、俺がそう問うと、ゴラムはこくりと頷き口を開いた。
「はい、エル様……。あの、もしよろしければ何か着るものをくれねぇーですか……?」
「何を恥ずかしがっておる。男のくせに情け――――」
「――――俺様……女なんですっ……!」
「な、何だと……?」
ゴラムの突然のカミングアウトに、時が止まった。
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