84話 山の麓での攻防戦
私はエル様の声を聞いて安心したと同時に、今の状況が良くないものだと瞬時に理解した。
「エル様、なんなりとご指示を……」
『スカーレットよく聞け……。今、ゴラムが地属性魔法にゴーレムマスターのスキルを合わせた技をそちらへ放った』
「はい。とんでもない轟音と地割れが発生しております」
『恐らくその内、規模こそわからないがゴーレムが出現するはずだ。俺はゴラムの相手をしているからそちらへは行けない。すまないが、新たに発生したゴーレムに関しては貴様達だけで何とか対処してくれ』
――エル様はこちらへ来られない程、あの岩に苦戦を強いられていると……?
いや、まさか。そんな事、あるはずがない。
恐らくあのクソ岩が、エル様が与えて下さった慈悲に背いて、よからぬ事をしたのでしょう。
あの石ころめ……。せっかくのエル様の慈悲を不意にするとは……。許すまじ……。
「――――承知いたしました。ところでエル様はいかがなさるおつもりで……?」
『俺はもう少しこの阿呆にお仕置きを加えようと思う。どうやら何も反省していないようだからな』
「なるほど……。では、本体がそちらにいるということは、こちらのゴーレムは始末してよろしいのですね?」
『あぁ、それで構わない。出来るか?』
「お任せ下さい。確実に始末いたします」
『そうか。ならば頼んだ。無事を祈る――――』
その言葉を最後にエル様人形から、あの可愛らしいお声が聞こえなくなった。
それと同時に先の地割れにより、大きく開いた地表から巨大なゴーレムが出現した。
「グォォォォォ……!!」
「え、えぇ!? いきなりでっかいゴーレムが現れたけど、どうなってんのー!?」
「訳がわからないわ! ゴーレムの相手はSS級冒険者が引き受けてくれたんじゃなかったのかしら!?」
「ひぃぃぃぃ……! こ、こんなのオイラ達だけじゃどうしようも出来ないよぅ……!!」
――皆、慌てている様子。
まぁ事前情報無しで突然こんなものが現れたのだから無理もないか。
それよりこのゴーレム。エル様が相手をしていたものより少し小さいな……?
やはり本体がいない上に、エル様にこっぴどくやられて弱体化しているのか。
となれば、私達だけでも十分に戦えそうだな。
「皆さん、落ち着いて下さい。このゴーレムは恐らく本体がいない分身体。加えて、SS級冒険者によってかなり体力を奪われているはず。この程度なら私達だけでも十分倒せる相手です」
私がそう言うと、勇者パーティーの面々はゴクリと生唾を呑み、ゴーレムを睨み付けると、戦闘態勢に入った。
「スカーレットがそう言うのなら、私達でも何とか出来るのでしょうけど、何か作戦はあるのかしら?」
「いいえ。ありません」
「ちょ、ちょっと……!?」
セリーヌの問いに私が即答すると、彼女は怒りと戸惑いが混ざった様子で声を上げた。
「ゴーレムとは見てわかる通り岩や土、瓦礫といった物を魔力によって繋ぎ合わせているだけの存在です。なので片っ端から身体を破壊していけば、いずれ魔力切れで倒れます」
「じゃあ相手が攻撃して来たら、どうするの……?」
「ボンズさんが受けるか、躱して下さい」
「ひぃっ……! そんな無茶苦茶なぁ……!」
「私はエル様を抱きながらの戦闘になります。なので後方から指示を出し、援護します。皆さんは私の指示に従って行動して下さい」
私の言葉を聞き、皆は怪訝な表情を浮かべつつも黙って頷いた。
そして私は皆より少し後方へ下がり、それぞれに支持を出し始める。
「ボンズは前方でゴーレムの注意を惹き付け、セリーヌは少し後ろから回復と支援をお願いします」
「うっ……わかりましたぁ……! オイラ恐いけど頑張りますっ……!」
「了解よ。今回は私もしっかり援護するわ……!」
ボンズは怯えながらも前方へ出て、タンク固有スキル【挑発】を使用し奴の注意を惹き付ける。
その後方からセリーヌも今回ばかりは下らない癖を抑えて、支援魔法の詠唱を始めた。
「次にコロクックはボンズの援護を。リリィはふにゃ丸と合同で水属性魔法を絶えず放って下さい。」
「御意。ボンちゃんの援護は任せろ……!」
「えぇ……。リリィ、水魔法は苦手なんだけどな……」
「大丈夫クリン。オレと一緒ならリリィは苦手な水属性も上級まで使えるクリン!」
「ほんと……? ならやってみる……!」
コロクックは私の指示通り、ボンズの脇からゴーレムに攻撃を加えたり、彼が捌ききれない攻撃を受け流す援護に回る。
リリィは初めこそ不安気な表情を見せるも、ふにゃ丸が安心させる言葉をかけ、彼女の杖と一体化すると、水属性上級魔法【ウォーターハザード】を展開。
「スカーレット! 俺は何をすればいい?」
――あぁ、この男の存在を忘れていた。
ユーリは他の面々と違って、これといって強い攻撃手段を持ち合わせているわけではない。
「そうですね……。ユーリは適当に隙を見て斬撃でも放って、ゴーレムの身体を少しでも破壊して下さい」
「よーし、任せてぇ!!」
――今の雑な指示でやる気を出せるのは世界中を探しても、恐らく彼くらいのものだろう。
たまに鋭い発言をするかと思えば、こうやって扱いやすい一面も持っている。
中々本質を掴めない男だ。勇者というものは。
「ウゴォォォォ……!!!」
その後、ゴーレムの雄叫びと共に、戦闘は本格化していく。
まず初めにゴーレムは大きな腕を振り下ろし、拳を先頭のボンズへぶつける。
「うっぐっ……! おもっ……! でも……ありがとうございまぁす……!!」
屈強な肉体を持つボンズだが、巨大ゴーレムからの一撃は相当に重いのか、一度攻撃を受けると簡単に膝をつかされてしまう。
そこへすかさずゴーレムの二発目が彼を襲う。
「ボンちゃん、大丈夫か……!? 次は私が……! ――――【流水剣】!!」
「ボンズ! まだ膝をつくには早いわよ! ――――【サンダーヒーリング】!」
しかしすぐさまコロクックが先頭を入れ替わり、流れる水の様な剣技でゴーレムの攻撃を受け流す。
そしてその隙にセリーヌが、膝をついたボンズへ回復と付与魔法をかけた。
「リリィ、準備はいいクリンか? いくクリンよ?」
「うん、準備万端だよ、ふにゃちゃん……! ――――【ウォーターハザード】!!」
「ウッ……ウゴォ……ウゴォォォォ……!!」
次いでリリィとふにゃ丸はゴーレムに対し、水属性上級魔法を放つ。
それを受けたゴーレムは苦しそうな叫び声を上げた。
「今だ……! ――――【連続斬撃 エクスカリバー】!!」
水魔法で身体が濡れ、柔くなったゴーレムへユーリは連続で斬撃を放つ。
方向こそ定まってはいないが、ゴーレムが巨大故、見事全て命中。
ゴーレムの身体はみるみる崩れ落ちていく。
「巨人族の皆さん! 崩れたゴーレムの破片を砂になるまで粉々に踏み潰して下さい!」
そして私はただ戦闘を眺めているだけだった巨人族達に、そう指示を出した。
崩れ落ちた瓦礫や岩を粉々に踏み潰す事で、再びゴーレムとして合体する事が出来なくなるからだ。
「う、うぉ……? わ、わかった!」
「行くべ野郎共! 落ちている石ころを全て踏み潰せぇ!」
「おぉ!! やってやるべぇ!」
「俺はボンズとコロクックの援護に回るべ! 必死に戦うアイツらを見て、俺は感動しちまっただぁ……!」
「俺もだ! アイツらちっせぇくせに、すんげぇかっけーべ!」
私の指示通りに行動する者の他に、必死に戦うボンズ達に感動し勝手に彼らの援護に回る者もいたが、特に問題は無いと判断し、私はそれらを黙認した。
◇
そしてひたすらに攻撃を重ねる事、数十分。
漸く、巨大ゴーレムの身体は私達でも容易に踏み潰せる程にまで小さくなり、その場に倒れた。
「ユーリ、そのゴーレムにとどめをさしてください!」
「了解っ! ――――【聖剣 エクスカリバー】!!」
ユーリは威勢よく返事をすると、勢い良く聖剣をゴーレムに振り下ろした。
しかし、何故か聖剣はゴーレムの体二つ分程離れた位置に突き刺さる。
「あ……しまった……!」
「はぁ……何をやってるのよもう……」
「しまらない……。ユーリ残念すぎ……」
「ユーリさん……最後くらい、ちゃんと決めてくださいよ……」
「う、うるさいなぁ……! ――――ふんっ! これでいいでしょ!?」
ユーリの残念な行動に一同は深いため息をつき呆れ返った。
するとユーリは顔を真っ赤にしてゴーレムに向き直り、聖剣ではなく、自らの足でそれを踏み潰した。
「ご苦労様です。では、仕上げを。――――【エリア・マジックドレイン】」
そして一面が踏み潰され粉々になった瓦礫や岩まみれになっている事を確認した私は【エリア・マジックドレイン】を展開。
ゴーレムが再度復活しないよう、辺りの魔力を吸収した。
「ふぅ……」
その後、魔力を吸収し終え一つ息を吐くと、皆は私の顔を、まるで何かの言葉を待っているかのように、固唾を飲んでまじまじと見つめていた。
「終わりました。皆さん、ご苦労様でした」
私は皆が待っていた言葉をかけた。
すると場は歓喜の渦に包まれた。
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