82話 一縷の望み
俺は小さくなったゴーレムの身体から情けない悲鳴を上げるゴラムの核を掴み、引き抜いた。
すると俺の手にいたのは棒人間の様に細く小さな生き物だった。
「…………ぷっ。これが……貴様……ぷっ……貴様の本体……か……?……ブフッ」
「わ、笑うなぁ……!! あと見るなぁ……!!」
笑いを堪えながら話す俺の手の中で小さなゴラムは甲高い声でそう叫んでいた。
「いや、だって……ぷふ!! あんなに巨大なゴーレムの中身が……ぶっ! 貴様……の様な……ブフゥッ!! すまん、無理だ……笑いを堪えられん……!」
俺はそう言うと盛大に吹き出し、細ゴラムを掴んだまま大笑いを始めてしまう。
そして細ゴラムはというと、俺の手から何とか逃れようと、必死に身体を動かしていた。
「ふんっ……! ふんぐぅぅぅ……!!」
「何をしている? 今の貴様の力では、俺の手はビクともせんぞ? それに貴様、もう魔力が殆ど残っていないのではないか?」
「うぐっ……どうしてそれを……!!」
俺がそう問うと、ゴラムは甲高い声を発しながら、悔しそうな表情を浮かべた。
――どうやら図星のようだな。
そりゃあ、あれだけの巨体を動かすには相当な魔力が必要だろう。
俺は魔力についてはからっきしだが、カマをかけて正解だった。
「ふんっ。そのくらい猿でもわかるわ。それよりも、まだ貴様へのお仕置きは終わっておらぬからな?」
「ひぃ……! これ以上、何をするつもりだァ!?」
情けなくも、甲高い悲鳴を上げるゴラム。
しかし俺は何も気にせず話を進める。
「そうだなぁ。……では貴様が殺した人間達を蘇らせろ」
「はぁ!? そんなの無理に決まってんだろうがっ!!」
「だろうな」
「なっ……!? わかっていて言ったのか! ぐぅ……性格わりぃなテメェ……」
甲高い声で必死に反論するゴラムだったが、その声のせいか、何も圧を感じない。
「性格が悪い? 俺がか? 俺は一応お人好しで通っているのだがなぁ?」
「何言ってんだクソ野郎……!! 貴様がお人好しなら、世界中の奴らがお人好しだァ……!!」
――酷い言われようである。
俺は魔王だし、本来は物語の悪役なのだから、多少性格が悪い方がらしいっちゃらしいのだが、生前お人好しで通っていただけに、やはりあまりいい気はしないな。
とまぁ、与太話はこのくらいにしてそろそろ本題へ入ろうか。
「ならばゴラムよ。貴様が破壊したギガンテスの門や家屋、それから周辺の山々を元の状態に戻せ。それは貴様の得意分野であろう?」
「…………まぁそれくらいならやってやらんでもねぇな」
「何故貴様がそんなに偉そうなんだ? 俺は別に貴様にお願いしているのではないぞ? これは貴様へのお仕置きであり、命令だ」
俺はそう言いながらゴラムを握る手に力を入れる。
するとゴラムはピーピー悲鳴をあげながら俺の手の中でジタバタと動き回ったので俺は力を緩め、彼を解放する。
「ぐぐっ……わ、わかったよ……! やればいいんだろ、やれば……!!」
「わかっているのなら、さっさとやれ」
俺はゴラムの背後に立ち、腕を組んで彼の動向を監視した。
するとゴラムは突然、甲高い声で高笑いを始めた。
「ガーハッハッハッ! 俺様から手を離すとは愚かな奴め! テメェを壊すのは恐らく無理だが、逃げ出した他の奴らなら話は別だァ!! 皆殺しにしてやるぜェ……!!!」
そう言うとゴラムは地面に手をつき、何やら魔法を行使した。
俺は慌ててゴラムの身体を再度掴み地面から離したが、時既に遅かった。
ゴラムの手から放たれた魔法は大きな地鳴りを伴い、硬い地面を割りながら物凄い速度で皆が逃げた方へと向かって行く。
「貴様……!! 今、一体何をした!?」
「うっ、ぐぐぐ……! と、とにかくこの手を離せよ……! そんなに力一杯握られたら……話せるもんも話せねぇだろうが……!」
ゴラムの話を聞く為、俺は奴を逃がさない程度に少しだけ手を緩めた。
「ケッ……。最初からそうしてればよかったんだよクソが……!」
「戯言は良い。さっさと何をしたか話せ」
「おぉ? どうやらさっきまでの余裕は無くなったようだな? いい気味だ……ガハハッ!」
「二度は言わん。さっと話せ。さもなくば、貴様を今すぐこの場で握り潰す……!」
俺は語気を強め、ゴラムを握る手にグググッと力を込め始める。
ゴラムの顔は歪んでいくが、もうそんな事に動じたりはしない。
するとゴラムは漸く観念したのか、俺の問いに答え始める。
「ぐっ……わかった、わかったよ……! ――――俺様がさっき使ったのは地属性魔法の【アースクエイク】……! それにゴーレムマスターのスキル【地表操作】を掛け合わしてある。つまり、今奴らの元へ向かったのは俺様の分身……巨大ゴーレムだ!」
「何だと……!?」
「テメェがいくら急いでも、奴らの元へはもう間に合わない……。残念だったな……!! テメェが俺様を離したせいで、奴らはもうすぐ死ぬ……! ガーハッハッハッ!」
「貴様ァ……!!!」
ゴラムの言う通り、地鳴りと地割れを伴った魔法はもう山の麓付近まで到達していた。
つまり皆の元へ届いているという事。
――クソ……! このままだとみんなが危ない!
コイツが中々何をしたのか話さなかったせいで対応が遅れてしまった……。
瞬間移動であっちまで行くか?
いやでも、それだとコイツも一緒に連れていかなきゃならないし、何より俺の正体を追求されたら面倒だ。
まさかここへ来て、今まで俺が姿を隠して来た事が仇になるとはな……。
クソ……ならどうする……?
念話……は多分遠すぎて使えないし、他に遠くの人と通信する手段といえば――――――あ……!
アイリスの眷属通信……!
あれは確か、眷属とアイリスが血の糸を繋ぐ事で通信が出来るというものだったよな?
手段はともかくとして、構造は恐らくアイリスの血液が眷属の中にある事で互いの血が共鳴し、繋がれるという事なのだろう。
だとしたら、まだ望みはあるかもしれない……!
スカーレットに渡した俺の分身体。
アレは俺の言霊の能力で発現させた物――――つまり、あの分身体の中には俺の《《何か》》が入っているはず。
もしかしたら本当にただの人形かもしれないけど、もうそこに賭けるしかない……!!
そして俺はそんな一縷の望みに賭け、分身体に糸を繋ぐイメージを膨らませ、ゆっくりと口を開く。
「スカーレット……! 聞こえるか!? 聞こえるなら返事をしてくれ……!」
――頼む……届いてくれ……!!
「ガハハッ! 何をしてももう遅い! 俺様のフルパワーゴーレムに恐れをなして逃げ出した奴らなんて、今頃俺様の新たなゴーレムに蹂躙されてるに決まってんだろ!」
スカーレットへの呼び掛けを聞いていたゴラムは、甲高い声で俺を嘲笑う。
「黙ってろヒョロガリ……。貴様の始末は後だ……」
「ぐげぇ……!!」
俺は抑えられない怒りを滲ませ、ゴラムを強く握り締め、睨む。
刹那――――
奇跡的に俺の声が届いたのか、頭の中にスカーレットの声が響いた。
『エル様……!? ご無事ですか……!? 私にはちゃんと、エル様の可愛いお声が聞こえております……!!』
何とか首の皮が一枚繋がった瞬間だった。
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