78話 轟音と地響き
巨人族の皆にもてなされ、賑やかでどこか気まづい宴が長時間続いた。
浴びる様に酒を呑みまくっていた巨人族達は次々とその場に倒れ、巨人族サイズの器に注がれたえげつない量の酒を永遠に飲まされ続けたユーリとセリーヌ、ボンズとコロクックも当然の様に酔い潰れていた。
そして酒を飲めないリリィは、巨人族の中の一部の層から絶大な人気を獲得し、『"本物"魔女っ子鑑賞会』のモデルとして参加していた。
様々なポージングを要求され、初めこそ照れていたリリィだったが、煽てられ褒められていつの間にか上機嫌に。
ノリノリな様子で次々とポーズを決め、まるでコ〇ケでよく見るコスプレイヤーの囲みの様な人集りが出来ていた。
どうやらとても楽しかったようで、今は満足気な表情でスヤスヤと寝ている。
そして夜明けが近付いて来た頃。
とうとうこの場で起きているのは俺とスカーレットだけになっていた。
こんな好機を俺が逃すはずもなく、すぐさまスカーレットに声を掛けた。
「スカーレットよ。……膝枕をしてもらっても良いか?」
「えぇ勿論です。いくらでも何にでもお使い下さいませ」
そう言うとスカーレットは地面に座って膝を明け渡し、俺はそこに寝転がる。
色白で綺麗な肌は残念ながら服のせいで拝めなかったが、彼女の柔らかい感触が俺の頬へとしっかり伝わっていた。
「はぁ……最高だ……」
「どうなされたのですか? 突然膝枕など……?」
(最っ高に可愛いですけどね……!? 悶えすぎて膝の震えを止めるのに必死だわ……!)
「いやな。ここ数日、色々な事があっただろう? 少し疲れてしまってな」
――嘘である。
俺は全くもって疲れてなどいない。
ただただスカーレットの柔肌に顔を埋めたいという煩悩に身を任せているだけだ。
俺がこの世界に転生したのは全て、この幸せな時間を堪能する為だと言っても過言ではないだろう。
「そうなのですか。それはそれは、ご苦労様でございました。それにしてもエル様をここまで悩ませる岩には困ったものですね……」
スカーレットは俺の頭を優しく撫でながらゴラムへの怒りを吐露する。
心做しか、俺の頭を撫でる手に力が入っているような気がする。
「そ、そうだな。ゴラムの奴、今頃どんな修行をしているのやら。巨人族達は全く気にしていないようだが、それについてはどう思う?」
「そうですね。巨人族は確かに強いです。それは圧倒的な強さでしょう。ですが、ゴラ――あの岩は曲がりなりにも五芒星の一角。弱いはずがありません。ましてや、巨人族がいくら強いと言えど、一方的にやられる様な力の差はないと考えます」
――わざわざ言い直さなくても……。
ゴラムでいいじゃない。
そんなに嫌いなのか?
「なら、次にゴラムがここへ来た時はかなりパワーアップしているという事か?」
「そうですね。恐らく前回とは比にならない程の力をつけて現れるでしょう。認めたくはないですが、あの岩は単純な力だけで言えば魔族随一ですから」
――力だけで言えば魔族随一……。
ゴラムの事が嫌いなスカーレットがそう言うって事は、それは本当の事なんだろう。
「そうか……。あと問題はパワーアップしたゴラムがいつやって来るかという事と、それに巨人族達は対応出来るのかという事だな」
「はい。巨人族の力が本気の岩に果たして適うかどうか……。再び現れるのがいつ頃かに関しては恐らくもう時期かと」
――もし、本気のゴラムに巨人族達がやられるような事があれば、これはいよいよ俺も本気で相手をしないとやばそうだ。
それにゴラムが現れる時期に関してはスカーレットが言う事は間違っていないと思う。
何故ならいつの間にか、山の方から聞こえていた物凄い音が止んでいるからだ。
恐らく修行はもう済んだのだろう。
そして俺は頬からスカーレットの太ももに根を張りながらゴラムがいるであろう山の方へと目を向ける。
すると俺はとある異変に気が付いた。
「おい、スカーレット……。あの山……あんなに小さかったか……?」
俺の言葉を受け、スカーレットもその山の方へ目をやる。
「確かに……。もう少し大きかったような気がしますね。――――よく見ると、周りの山々も小さくなっている気がしますね……」
「……本当だな。これがゴラムの修行の余波という事か。とんでもないな……」
俺達はその様にただただ唖然としていた。
そして続けて、そんな俺達を更に驚愕させる事が起きる。
ゴゴゴゴゴゴ……
とてつもない地響きと共に、目の前にあった山々が少し動く。
「な、何ですか、今のは……?」
「山が動いたな……」
俺達が目を丸くして動いた山を凝視していると、それは更に大きく動き始める。
グラグラグラグラ……ゴゴゴゴゴゴ……!
「いやいや、ちょっと待ってください……。それはあまりにもではないですか?」
「あぁ、まったくもってその通りだ。ふざけている……」
俺達が呆気にとられながら見たもの――――それは崩れた山々がまるでブロックの様に積み上げられた、巨人族をも優に超える巨大なゴーレムだった。
――ふざけんな……!
あんなデカいゴーレム、巨人族が束になってかかっても瞬殺されるぞ……!
それどころか、腕をひと振りしただけで街一つが消し飛ぶかも……。
そしてその巨大なゴーレムは地ならしの如く辺りの山々を踏み潰し、轟音を伴いながらゆっくりとこちらへと近付いて来る。
「な、なんだなんだぁ!?」
「うるさいわね……って何よあれ!?」
「うーん……セリーヌうるさい……。ん……何あれ……!?」
巨大なゴーレムが動く度に起こる轟音と地響きにより、ユーリ達も目を覚ました。
セリーヌはユーリに悪態をつきながら音のする方へ目をやると、驚きのあまり怒鳴り声を上げる。
リリィも目を擦りながら身体を起こすと、巨大なゴーレムに唖然とした表情を浮かべた。
「ひぃいいいいい……!! あれが一度、皆さんが倒したという魔人ですか!?」
「そんな訳ないだろ!! あれ程大きなゴーレムなんて見た事ないぞ……」
ボンズが案の定、怯えた表情で悲鳴を上げるとコロクックは驚愕しながら彼の言葉を否定する。
「あんなのどうやって戦うんだよ〜……?」
「戦う!? 馬鹿なこと言わないで!? あんなのとまともに戦えるわけないじゃない!」
「でも巨人族の人達、みんな戦う準備してるよ……?」
リリィの言う通り、気が付けば巨人族達も目を覚ましており、いつもののんびりとした雰囲気とは打って代わり、珍しく慌てた様子で戦闘の準備を始めていた。
「はぁ……? まったく、どこまで呑気なのかしら。あんなのと戦って勝つなんて天地がひっくり返っても有り得ないわ! 逃げの一択よ……!!」
「それは出来ない……!! 俺達は勇者パーティーだ! 人々に危害を加える魔族を放置して、俺達が逃げる訳にはいかない!」
ユーリはセリーヌの言葉を真っ向から否定する。
それは彼の性格と正義感によるものだろうが、さすがに今回は相手が悪すぎる。
「ユーリさんは勇敢ですね。でも勇敢と無謀は違います……! あんなのに挑むなんて、いくらなんでも無謀すぎます……!!」
「あぁ、ボンちゃんの言う通りだ。あんなのと戦えば命がいくつあっても足りないぞ」
ユーリの言葉にボンズとコロクックも反論意見を述べる。
「だけど……! このままだったら、巨人族の人達は……!! それにアイツがそのまま他の街を襲ったらどうするんだ……!?」
ユーリの言っている事もよくわかる。
だが、今回ばかりは分が悪すぎる。
いくら修行をして来たとはいえ、今のユーリ達が太刀打ち出来る相手ではないのは火を見るより明らかだ。
そして恐らく巨人族達はあの巨大なゴーレムを迎え撃つつもりだろうが、それは彼らにとっても例外ではない。
あんな怪物とやり合えばいくら巨人族といえど、無傷では済まない。
最悪の場合、死人が出るだろう。
そして俺はスカーレットの耳元に寄り、声をかける。
「スカーレット、よく聞け。俺は今から一人であのゴーレムと戦う」
「い、いけません……! エル様……!!」
「黙れ……俺に指図するな……!」
「は、はい……」
少しきつい言い方になってしまい、申し訳なさを感じつつも、俺は皆を守る為の作戦をスカーレットに告げる――――
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